「お帰り、ウインブルドン」雨とともに戻った大会でジョコビッチが勝利

写真はノバク・ジョコビッチ(セルビア)(Getty Images)


 今年3つ目のグランドスラム大会「ウインブルドン」(イギリス・ロンドン/本戦6月28日~7月11日/グラスコート)が開幕し、初日は男女のシングルス1回戦が行われた。

 新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックにより中止となった2020年を経て戻ってきたウインブルドンは雨によるスケジュールの乱れからノバク・ジョコビッチ(セルビア)の勝利まで、すべてが非常に慣れ親しんだ雰囲気を醸し出していた。

 グラウンドコートでの試合の遅れ――試合は4時間半ほど遅れて始まり、多くの試合が開始しないまま延期となった――同様、ジョコビッチは男子の最多記録に並ぶ20回目のグランドスラム制覇への挑戦でスローなスタートを切った。

 ディフェンディング・チャンピオンのジョコビッチはワイルドカード(主催者推薦枠)で出場した世界ランク253位で19歳のジャック・ドレイパー(イギリス)に対して第1セットを落としたが、最終的にはセンターコートの閉じられた屋根の下でベストテニスを見せた。彼は25本ものサービスエースの助けも借りて、4-6 6-1 6-2 6-2で勝利をおさめた。

「皆の姿を目にし、恐らく世界でもっとも特別でもっとも神聖なコートに戻ってくることができて素晴らしい気分だ」と世界1位のジョコビッチは語った。今年のオーストラリアン・オープンとフレンチ・オープンで優勝した彼は、『年間グランドスラム(同じ年に四大大会全制覇)』への道半ばにいる。

「他の多くの選手たち同様、僕は昨年のウインブルドンがキャンセルされたことを非常に悲しく思っていた。皆にとって非常に厳しい時期だったが、テニスが戻ってきたことを本当にうれしく思う。皆さんが楽しんでくれたこと、そして来たる2週間を通して楽しんでくれることを願っているよ」

 コロナウイルスは変わらず、大会に暗い影を落としている。

 グラウンドコートの観客数は、現在のところ収容人数の50%に制限されている。2週間後の週末、決勝が行われるころにはそれは100%に上がる予定だ。観客は会場内で試合を見ていないときはマスクを着用しなければならず、ワクチンを2度接種したかここ6ヵ月の間に感染したかを示す証拠を提示しなければならない。すべてのプレーヤーとそのスタッフは、大会側が用意したロンドンのホテルに滞在する必要がある。彼らはそこで定期的に検査を受け、感染者との接触がないかもチェックされる。

 女子シングルスで唯一シードを得た地元選手のジョハナ・コンタ(イギリス)は自分のチームメンバーが陽性と判定されたことで10日間の隔離を命じられたため、日曜日の夜に棄権を余儀なくされた。

 ジョコビッチとドレイパーがセンターコートで大会の口火を切る――これは男子優勝者にために用意されている特権だ――前にはワクチンの開発と医療に携わる人々を含めたロイヤルボックスの特別ゲストを歓迎する場内放送がなされ、彼らはこの日最初のスタンディングオベーションで迎えられた。

 もうひとつのスタンディングオベーションは、ドレイパーが第1セットを取ったときに起こった。それは間違いなく彼の国にとって、またジョコビッチや彼自身にとってもちょっとした驚きだったことだろう。ドレイパーがその瞬間と対戦相手やセッティング、出だしからかかっているものに緊張していたとしても何の不思議もなかったし、それはむしろ理解できることだった。結局のところ、これは彼にとって初めてのグランドスラム本戦の舞台だったのだ。

 第1セットにベースラインの後ろの滑りやすい芝に足を取られたジョコビッチは、2度背中から転倒した。これは彼にとって、2019年ウインブルドン決勝以来のグラスコートでの公式戦だった。

「正直なところ、コートでこれほど頻繁に転んだことがあったか覚えていないよ。かなり滑りやすかった。屋根が閉じていたせいか、ここ数日かなり雨が降っていたせいかは分からないけど」とジョコビッチは笑いながら言った。

 ドレイパーはジョコビッチのダブルフォールトやフォアハンドのミス、当たり損ねのボレーにも助けられてブレークに成功して2-1とリードを奪い、そのあとはサービスゲームをすべてキープしてそのセットを取った。時速201kmのサービスでセットを締めくくるとドレイパーはラケットを振ってから右拳を突き出し、観客は歓声を上げた。

 しかしその2時間後、すべては終わっていた。残りのセットの早い段階でブレークを果たしたジョコビッチは、自分のプレーを大幅に改善した。第1セットはウィナーとアンフォーストエラーの数が6対9だったが、試合の残りでは41対15と逆転させた。

「彼は間違いなく拍手に値する。彼は若い選手なんだ。ウインブルドンのセンタコートに足を踏み入れるのは、彼にとって初めてのことだったんだ。彼は非常によくやったと思うよ。彼はコートで非常に成熟した振る舞いを見せていた」とジョコビッチはドレイパーに賛辞を送った。(APライター◎CHRIS LEHOURITES/構成◎テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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