「最悪の時期こそ一番成長できる!」決勝進出のバーティ[ウインブルドン]

決勝進出を決めて思わず口に手を当てたアシュリー・バーティ(オーストラリア)(Getty Images)


 2年ぶりの開催となる今年3つ目のグランドスラム大会「ウインブルドン」(イギリス・ロンドン/本戦6月28日~7月11日/グラスコート)の女子シングルス準決勝で、第1シードのアシュリー・バーティ(オーストラリア)が2018年覇者で第25シードのアンジェリック・ケルバー(ドイツ)を6-3 7-6(3)で下した。

 まずはチームへの感謝の言葉を述べた。

「自分のチームは多くのメンバーで構成されており、全員が今大会に来ている訳じゃない。家族はオーストラリアにいる。トレーナー、フィジオらと一緒にこの勝ち上がりを分かち合えているのはうれしい。私のキャリアのために多くの時間とエネルギーを割いてくれている。私を勇気付けて、私たちの夢を叶えるためにどうしたらいいのかを考えてくれている。この特別な時間を一緒に分かち合えてうれしい」
 
 決勝進出はこの上ない喜びだ。

「少し興奮もあったけど、安堵の気持ちが大きかった。今までに経験したことのない感情だった。ウインブルドンの決勝でプレーできるのは信じられないほどうれしい。この準決勝は自分が最高のプレーを見せられた。アンジー(ケルバー)は素晴らしい対戦相手で、私の最高のプレーを引き出してくれた。彼女のようなチャンピオンにチャレンジでき、試合を通してハイレベルなプレーができたことは素晴らしいこと。最後のポイントを取った瞬間の喜びは信じられないほど大きかった」

  楽しめるかどうかが一番大事なこと。

「その瞬間、瞬間を受け入れて楽しんでプレーしている。このようなビッグマッチは重要で大きなものが懸かっているけど、“でも、これはただのテニスの試合なんだ”と気持ちをリラックスさせるのは比較的簡単だった。ここにくるためにチームとともに多くの努力をしてきたけど、でも同時にこの瞬間を楽しむことが重要。試合の最初から楽しむことができて、それが重要だった。この素晴らしい舞台でアンジーに挑戦できる最高の試合を楽しむことができた。結果は二の次。コートを去るときに“楽しかった”と感じられるかどうか、それだけを考えていた。今日披露できたテニスのレベルは、楽しくプレーできた喜びをさらに大きくしてくれた」


オーストラリア対決となった1971年のウインブルドン決勝のイボンヌ・グーラゴング(手前)対マーガレット・コートはグーラゴングが6-4 6-1で勝利

  イボンヌ・グーラゴング(オーストラリア)が1971年のウインブルドン優勝時に着用したウェアにインスパイアされて作られた、50周年記念ウェアを着用している。

 「イボンヌとは大会前に話した。久し振りだった。彼女にとって特別な年で、彼女にインスパイアされたウェアを着るのは大きな誇り。そして、新たな歴史を作って、彼女に賛辞を贈るチャンスがあることがうれしい。このスカートとシャツは今日も着ており、大会中ずっと着ている」


今大会バーティが着用するスカートの裾のヒラヒラがグーラゴングのスカートからインスパイアされた部分

 ウインブルドンの決勝は何歳から夢見ていたのか。

「ウインブルドンを目指し始めた年齢は分からない。テニスに真剣に取り組み始めて、テニスの世界がどんなものかを理解し始めると、夢を見るもの。子供の頃に夢見ることの可能性は無限大。歳を重ねて経験を積むと、いろんなものがついてくる。夢だけでなく、現実に近づいてくる可能性もある。大事なのは子供のときの気持ちを思い出してコートでプレーすること。自由に、自分がしたいようにプレーする」

 ウインブルドン決勝にいけると思ったのはいつ頃だったか。

 「確信を持ったことは一度もない。コンスタントにいいポジションにつけていないといけない。ウインブルドンでは本当に多くのことを学ぶことができた。10年前、ジュニアで初めて出場した。2018年(3回戦)、2019年(4回戦)の敗退は厳しいものだったけど、多くを学ぶことができた。大きな成長というものは最悪の時期からくる。だからこそ、この大会は本当に重要。ここのいい経験、悪い経験から学んできた。とにかく前に進み続けて、自分らしくすればいい。すべての結果は自分の学びの機会になる」

 ケガを乗り越えての決勝進出だった。

「フレンチ・オープン2回戦で棄権してからウインブルドンの1回戦まで23日か24日間だったと思う。時間はあまりなかった。痛みなくプレーでき、自分の体を信頼できるように集中してきた。すべてはチームが素晴らしい仕事をしてくれたおかげで、いま彼らに恩返しをするチャンスができてうれしい。ケガの影響で何か制限があった訳ではないけど、いつもとは違う準備をしてきた。それを受け入れて、この状況でベストの準備ができたと信じてきた。1ヵ月前に、“ウインブルドン決勝にいけるよ”と言われても、それに近い成績さえも残せるとは絶対に信じられなかった。この1ヵ月の取り組みは本当に素晴らしかったと思う」

 ケルバーは自分よりひとつ多くグランドスラムを獲っているが、その差は大きいのか?

 「グランドスラムの準決勝になれば、どんな試合でもいいレベルのプレーができないといけない。ここまで勝ち上がってきた相手なのだから、経験の有無にかかわらず、誰であろうと難しい試合になる。自分は過去2度グランドスラムの準決勝を戦った経験を生かすことができた。アンジーは素晴らしい競技者で、偉大なチャンピオン。自分の最高のプレーをする必要があると分かっていた。彼女はここで優勝経験もある。本当に自分の最高の力を引き出してくれた」

 2011年、ちょうど10年前にジュニアで優勝したことで学んだ。

「10年前とはまったく異なる人生のステージにきている。この10年とても難しい時期もあった。でも、ここまでやってきたこと、決断してきたことに後悔はない。過去のことを何も変えたいと思わないし、すべてのことから学ぶことができた。ここのコートに立つときは、いつでもジュニアのときの記憶が蘇る。素晴らしい思い出が沸き返ってくる。ウインブルドンをプレーする機会はいつでも、感謝の気持ちを思い出し、大きなチャンスで、エキサイティングなこと。今でもオールイングランド・クラブの門をくぐるとき、15歳のときに初めてくぐったときと同じ気持ちになる。この興奮、喜びがウインブルドンを特別な大会にしていると思う」


2011年、15歳でウインブルドン・ジュニアを制したバーティ

 ウインブルドンで勝ち上がるには、サーフェスへの対応力がカギになる。

「成長と経験、そしてすべてのことが少しずつかな。間違いなく、運も欠かせない。そして体がフィットして健康でないといけない。このコートで一番必要なのは対応力。コートの状態は大会序盤と終わりではまったく別のものになっている。サーフェスの変化に自分のプレーを合わせていくのはすごく重要な部分。サーフェスが速くなるし、難しくなる。勝ち進んでいくたびにコートがどう変化するのかを理解することが重要だと思う。そしてすべてをシンプルに捉えること。コートに出ていって、そのチャンスを楽しめればいい」

  第2セットで2-5だったときどんなマインドセットだったのか? 多くの記者、観客はこのセットが終わったら、ドリンクを一杯頼んで最終セットの前に一息つこうとしていた。

「第2セットの序盤でアンジーのサービスゲームでチャンスがいくつかあった。でも彼女は格段にいいプレーを見せた。あるゲームで15-40としたのに、そのあと3、4ポイント凄くいいラリーをされて、取りきれなかった。もう脱帽して次に切り替えるしかなかった。私は単純に、すべてのポイントを全力で取りにいくことが重要だと思う。正直、今日の試合中のスコアは自分にとって何の意味もなかった。第1セット3-0アップでも、第2セット3-5でも4-5でも同じ。どのポイントも同じ気持ちだった。すべてのポイントを全力でプレーしようとするプロセスが重要なの。同時に自分はミスもするし、相手が防ぎようのない素晴らしいいプレーをすることもある。それらすべてを受け入れ、自分がやりたいパターンになるべく戻す努力を続けること。今日の私は、それが一番必要なタイミングでできていたと思う」(テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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