バーティが聖地ウインブルドンで2度目のグランドスラム制覇「昨夜はあまり眠れなかった」

写真は優勝を決めたあとにスタンドのチームスタッフたちと喜びを分かち合うアシュリー・バーティ(オーストラリア/左から2人目)(Getty Images)


 2年ぶりの開催となる今年3つ目のグランドスラム大会「ウインブルドン」(イギリス・ロンドン/本戦6月28日~7月11日/グラスコート)の女子シングルス決勝で、第1シードのアシュリー・バーティ(オーストラリア)が第8シードのカロリーナ・プリスコバ(チェコ)を6-3 6-7(4) 6-3で倒して栄冠に輝いた。

 決勝の出だしはバーティにとって、すべてがスムーズだった。グランドスラム大会決勝で、ある選手が14ポイントを連続で取るというのは信じがたいほどの滑り出しだった。

 しかしもちろん一方的なままである訳はなく、実際にそうではなかった。

 それでもバーティはその完璧なスタートを力強いフィニッシュに結び付けて仕事を完了し、プリスコバのカムバックを抑え込むことに成功してグランドスラム大会で2つ目のタイトルを獲得した。

「大胆にもそれを夢見て、この素晴らしい大会で優勝したかったという事実を言葉にするのに長い時間がかかったわ。昨夜はあまり眠れなかった。私は様々な『もし、こうなったら…』を考え続けていたの。でもコートに出ていったときには、ある意味で落ち着いた気分になったと思う」と世界ランク1位のバーティは語った。

 彼女はこのトロフィーを、2019年フレンチ・オープンで勝ち獲った優勝杯に加えた。

 この勝利でバーティは、ウインブルドンで優勝した1980年のイボンヌ・グーラゴング(オーストラリア)以来となるオーストラリア人女子プレーヤーとなった。バーティが初めてグーラゴングに会ったのはまだ非常に若いときだったというが、彼女は常にグーラゴングをインスピレーションの源であり師であると見なしていた。

「イボンヌは私の人生でとても特別な人なの」と50年前にグーラゴングがウインブルドン初優勝を遂げたときに着ていたテニスドレスにオマージュを捧げるウェアを身に着けていたバーティは話した。グーラゴングはオーストラリア先住民アボリジニ初の女子トップアスリートだった人物で、バーティ自身もアボリジニの血を引いている。

「彼女は若い先住民たちが夢を信じ、夢を追うための道を敷いてくれたアイコン的な人物だったわ。彼女は私のためにも、まさにそれをやってくれたのよ」

 10年前にウィンブルドンでジュニアの部を制した25歳のバーティは、そのあと2014年からバーンアウト(燃え尽き症候群)のため2年近くテニスから離れていた。当時の彼女は母国でプロのクリケット選手としてプレーしていたが、最終的にテニスに戻ってきた。そしてそれは、いい判断だった。

 決勝でのバーティはビッグサーブを武器とする29歳のプリスコバに対し、各セットの出だしにベストのプレーを披露した。2016年USオープンでも準優勝に終わっていたプリスコバは、グランドスラム大会決勝で2連敗となった。

 ウイリアム王子とキャサリン妃や俳優のトム・クルーズらを含む面々が観客席から見守る中、試合は観客で満杯のセンターコートで行われた。雨の恐れがあったため、この日の早い時間帯にバーティとプリスコバは屋根を閉じた1番コートで一緒にウォームアップを行った。

 ふたりは決勝前のコイントスの間に微笑んでおしゃべりをしていたが、ひとたび試合が始まるとバーティは直ちにスイッチを入れた。

 試合開始の瞬間から、バーティが何か心地悪さを感じていたり迷ったりしているような兆しは見られなかった。彼女のストロークは自信に満ちており、物腰についても同様だった。試合開始早々の疾走でバーティが3-0とリードしたあと、プリスコバはついに数ポイントを取ることができた。しかし11分のうちに4-0となる中、バーティは多彩なスキルを披露した。

 第2セットに入ってプリスコバはようやくいつものストロークのリズムを見出し、それがバーティを揺るがせてもおかしくなかった。しかしバーティは、何事も自分を過剰に落ち込ませることはないのだと明言している。それには彼女が先月のフレンチ・オープンで棄権を強いられ、ウインブルドンの準備を妨げたケガも含まれていた。

 実際にバーティのチームは土曜日の勝利まで彼女の腰の状態は彼女が思っているよりも悪く、完全に回復するには2ヵ月が必要とされるはずだったことを本人に伝えていなかった。それでも彼女らしい不屈の闘志で、バーティは試合が進むにつれてより安定した自分に戻っていくことができたのだ。サービスゲームをキープすれば勝利というチャンスをふたたび手に入れたとき、バーティは――ブレークポイントを握られてしまったときでさえ――尻込みしなかった。

 最後に放ったプリスコバのバックハンドがミスとなったとき、バーティはベースラインで屈み込み、それから手で顔を覆った。彼女は優勝が決まった直後にスタンドをよじ登り、コーチのクレイグ・ティザー氏や他のチームメンバーらを抱擁して喜びを分かち合った。

「第3セットの出だしに気持ちをリセットできたのは、すべてのポイントに集中して取り組み続けるために本当に重要だった。それが私が本当に気持ちを集中させていたことだったの。スコアがどうであろうと、ただ目の前のポイントでベストを尽くそうとしていただけだったわ」とバーティはコメントした。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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