完璧なスタートを力強いフィニッシュで締めくくったバーティがウインブルドン初優勝
2年ぶりの開催となる今年3つ目のグランドスラム大会「ウインブルドン」(イギリス・ロンドン/本戦6月28日~7月11日/グラスコート)の女子シングルス決勝で、第1シードのアシュリー・バーティ(オーストラリア)が第8シードのカロリーナ・プリスコバ(チェコ)を6-3 6-7(4) 6-3で倒してグランドスラム大会で2つ目のタイトルを獲得した。
決勝の出だしはバーティにとって、すべてがスムーズだった。グランドスラム大会決勝で、ある選手が14ポイントを連続で取るというのは信じがたいほどの滑り出しだった。
しかしもちろん一方的なままである訳はなく、実際にそうではなかった。それでもバーティはその完璧なスタートを力強いフィニッシュに結び付けて仕事を完了し、プリスコバのカムバックを抑え込むことに成功した。
この試合でのバーティはビッグサーブを武器とする29歳のプリスコバに対し、各セットの出だしにベストのプレーを披露した。2016年USオープンでも準優勝に終わっていたプリスコバは、グランドスラム大会決勝で2連敗となった。
「酷いスタートだったわ。でもだからこそ私は、奮起して試合の中に戻っていく方法を見つけ出したことを誇りに思っているの」と元世界ランク1位のプリスコバは語った。
第1セットを落としたプリスコバは第2セットでも先にブレークされ、バーティが6-5からサービング・フォー・ザ・チャンピオンシップを迎えた。しかしバーティは2本連続でフォアハンドをアウトしてブレークバックを許してしまい、タイブレークをダブルフォールトで手放した。
「彼女は食い下がり、試合の中に何とかして戻ってくるための方法を見つけ出したのよ」とバーティは振り返った。
2012年以来のフルセットマッチとなったウインブルドン女子決勝の最終セットでバーティは3-0とリードし、そのあとも決して気を緩めなかった。ウインブルドン決勝でその舞台が初めてだった者同士が対決したのは、1977年以来のことだった。
試合開始の瞬間から、バーティが何か心地悪さを感じていたり迷ったりしているような兆しは見られなかった。彼女のストロークは自信に満ちており、物腰についても同様だった。試合開始早々の疾走でバーティが3-0とリードしたあと、プリスコバはついに数ポイントを取ることができた。しかし11分のうちに4-0となる中、バーティは多彩なスキルを披露した。
土曜日までに女子の大会最多となる54本のエースを奪っていたプリスコバのスピード溢れるサービスを難なくリターンしたバーティは、身長186cmと自分よりも20cm長身のプリスコバをロブで抜き去った。彼女はまたスピンをかけたフォアハンドでウィナーを叩き込み、バックハンドのスライスで相手のミスを誘った。彼女は試合を通し、7対6とプリスコバよりっも多くのサービスエースを決めた。
「彼女はあまりミスをしなかった。すべてのボールを非常に深く打ってきたわ。あのときの私にとって、自分のテニスをするのは非常に難しかった」とプリスコバは相手のプレーぶりを評価した。
カギとなる統計は、恐らく次のものだ。バーティは31回あった9本以上ラリーのうち、22ポイントを取っていたのだ。
ボールがプリスコバの横を通り過ぎて満杯のスタンドがざわめく中、プリスコバはそれを空虚な眼差しで見つめていた。彼女はできるならここにいたくないとでもいうような様子でラケットのストリングをいじくり回し、実際に「そこにいたい気分ではなかった」と試合後に明かした。
かつて大坂なおみ(日清食品)のコーチを務め、セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)のヒッティングパートナーだったプリスコバの現コーチであるサーシャ・バイン氏は腕を組んでその様子を見守っていた。
第2セットに入ってプリスコバはようやくいつものストロークのリズムを見出し、それがバーティを揺るがせてもおかしくなかった。しかしバーティは、何事も自分を過剰に落ち込ませることはないのだと明言している。それには彼女が先月のフレンチ・オープンで棄権を強いられ、ウインブルドンの準備を妨げたケガも含まれていた。
実際にバーティのチームは土曜日の勝利まで彼女の腰の状態は彼女が思っているよりも悪く、完全に回復するには2ヵ月が必要とされるはずだったことを本人に伝えていなかった。それでも彼女らしい不屈の闘志で、バーティは試合が進むにつれてより安定した自分に戻っていくことができたのだ。サービスゲームをキープすれば勝利というチャンスをふたたび手に入れたとき、バーティは――ブレークポイントを握られてしまったときでさえ――尻込みしなかった。
最後に放ったプリスコバのバックハンドがミスとなったとき、バーティはベースラインで屈み込み、それから手で顔を覆った。彼女は優勝が決まった直後にスタンドをよじ登り、コーチのクレイグ・ティザー氏や他のチームメンバーらを抱擁して喜びを分かち合った。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)
写真◎Getty Images
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