グーラゴングが少女時代のバーティに見たチャンピオンの潜在能力

写真はウインブルドンで初優勝を飾ったアシュリー・バーティ(オーストラリア)(Getty Images)


 イボンヌ・グーラゴング(オーストラリア)は土曜日の夜、通常の就寝時間をずっと過ぎてからも起きていた。彼女が日曜日の朝にあまりにも早く目を覚ましたとき、彼女は疲れていることを気にかけたりはしていなかった。友人であり弟子でもあるアシュリー・バーティ(オーストラリア)は、今やウインブルドンの新チャンピオンなのだ。

 土曜日に行われたウインブルドン女子シングルス決勝で、第1シードのバーティは第8シードのカロリーナ・プリスコバ(チェコ)を6-3 6-7(4) 6-3で倒した。試合が終わったのは、オーストラリア東海岸では日曜日の午前1時過ぎだった。グーラゴングと夫のロジャー・コーリーはブリスベン北のサンシャイン・コーストにある自宅で大騒ぎしたため、近所の住民を起こしてしまったかもしれない。

 そして電話が鳴り響き始める前に、眠るための時間はあまりなかった。

「アッシュを観ていて、すごく感情的になったわ。私は彼女のことを、そして彼女のコート内外での振る舞いを本当に誇りに思う。彼女は私にとって、妹のような存在なの。だからまるで、今日は家族が勝ったみたいな感じね」とグーラゴングは日曜日に語った。

 今からちょうど50年前の1971年にグーラゴングはウインブルドン初優勝を果たし、1980年に2度目の栄冠に輝いた。バーティの勝利まで、オーストラリアの女子プレーヤーがウインブルドンのシングルスで優勝したのはそれが最後だった。

 バーティの勝利と彼女のキャリアは、お互いにオーストラリア先住民アボリジニに源を持つということからグーラゴングと絡み合ってきた。グーラゴングがウィラジュリ(ニューサウスウェールズ州中部のアボリジニ)の女性で、バーティはンガリゴ(ニューサウスウェールズ州南東部の先住民)の血を引いている。

 ふたりの仲は、バーティが15歳のときから始まっていた。

「イボンヌは私の人生でとても特別な人なの。彼女は若い先住民たちが夢を信じ、夢を追うための道を敷いてくれたアイコン的な人物だったわ。彼女は私のためにも、まさにそれをやってくれたのよ」と50年前にグーラゴングがウインブルドン初優勝を遂げたときに着ていたテニスドレスにオマージュを捧げるウェアを身に着けていたバーティは話した。

 日曜日にインタビューを受けたグーラゴングは、ふたりの敬意と称賛は相互的なものなのだと説明した。

「彼女は初めて会った瞬間から、私を誇らしい気持ちにさせてくれたわ。彼女はまだ13歳だった。そしてある試合で彼女を観たとき、私は彼女がすべてのスキル――スライス、ボレー、スマッシュ、すべてをひとつのゲームに!――を持っていることを知り、夫のほうを見たの。私たちは、『彼女は“持っている!”彼女はチャンピオンになるわ。だから今のうちに観ておきましょう』と思ったのよ」とグーラゴングは当時のことを振り返った。

 同国が産んだテニス界の偉人であるロッド・レーバー(オーストラリア)もまた、ツイッターを通して「アッシュ・バーティ、本当によかったね。素晴らしい戦いで、君の夢は叶ったんだ。ウインブルドン優勝おめでとう。君と君のチームが世界中のファンと一緒にお祝いし、オーストラリアに戻ってくることを願っているよ。ロケットより(ロケットはレーバーのニックネーム)」とメッセージを送った。

 オーストラリアAP通信(AAP)のインタビューを受けたバーティの両親(ロブとジョージー)は、3人の娘の末っ子であるアシュリーがウインブルドンとフレンチ・オープンのシングルスで優勝して世界ランク1位になることなど当初は想像もしていなかったと語った。

「私たちはテニスプレーヤーではありません。ゴルファーだったんです。私たちはただ、彼女が何でもうまくできるタイプの子供のひとりだと思っていました。昔から人々はよく彼女がテニスでいかに優秀かについていろいろ言っていましたが、私たちはただ彼女は楽しんでいる子供だと思っていたんです」とバーティの父であるロブは明かした。

「それから彼女は15歳のときにウインブルドンに行き、ジュニアの部で優勝しました。通常はジュニア最後の年である18歳までジュニアのグランドスラム大会で勝たないものでしょう? それでやっと、もしかしたら彼女はテニスでかなり優秀なのかもしれないと思った訳です」

 興味がある方のために言えば、バーティはゴルフでもかなりの腕前を持っている。新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックでテニスのツアーが中断して何か月も海外渡航ができなくなった昨年、バーティはゴルフに精進してハンディキャップを一桁にした。

 何に取り組んだとしてもバーティは成功するだろうということについて、グーラゴングは確信している。

「彼女がやることすべてを誇りに思うわ。決勝前に私が彼女に送った最後のメッセージのひとつは、“あなたが何に取り組んだとしても夢は実現するのよ”というものだったの」とグーラゴングはコメントした。(APライター◎デニス・パッサ/構成◎テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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