金メダルは射程圏ーー柴原瑛菜×青山修子【東京2020 スペシャルクロストーク】
「同じイメージで戦えているのが、いい集中力につながっている」(青山)
「青山さんからいろいろ学んで、思った以上に早く成長できている」(柴原)
ペアとしての成長
プロ転向から間もない柴原が青山にアタックをかける形で誕生したペアだったが、ベテランの域に差し掛かった青山にとっても柴原から大きな刺激と学びを得ることができているようだ。パワフルなサービスと強力なストロークを備える柴原に、ネット際で巧みな動きを見せて試合をコントロールする青山の補完性は抜群。オフコートでも今では友達のような、家族のような信頼関係を築いている。取材中も、上達が著しいとはいえ時にうまく日本語が出てこないアメリカ育ちの柴原に、「こういうこと?」とフォローを入れる青山。2人の関係性は微笑ましくも頼もしいものだった。
――2019年7月からペアを組み始めましたが、アメリカ生まれの柴原選手はそのタイミングで日本国籍を選択しました。
柴原 いろいろな理由があるんですけど、一番は日本に住んでいるおじいちゃんとおばあちゃんに、日本の国籍、日本人として東京オリンピックでプレーしている姿を見てもらいたくて。ジュニアのときは毎年、夏になるとおじいちゃんとおばあちゃんがアメリカに来て、私の試合を見てくれていたんですけど、だんだんトラベルできない歳になってきたので、また生で試合を見てもらいたくて。
青山 私はその当時はまだ東京オリンピックをそこまで意識していなくて、グランドスラムで勝てるようにということしか考えていなかったけど、瑛菜ちゃんから声を掛けてくれたよね。それでタイミングが合ったから大会に出てみて。
柴原 オリンピックのこと以上に、青山さんはネットで動くすごくいい選手だというのはもちろん知っていたから、私だったらいいセットアップができると思って声を掛けさせてもらいました……本当は絶対に組んでもらえないと思って、自分では聞くこともできなかったんですけど、お母さんに「組んでもらえなくても、聞くだけ聞いてみたら」とプッシュしてもらって。最初は本当に組んでもらえるとは思っていませんでした(笑)。
青山 でも、いきなり準優勝と結果が出たし、一緒にプレーしていても楽しかったし、何より人柄がすごく良かったのでまた組んでみたいなと思って。その大会中に「秋のアジアシリーズも出ませんか」となりました。最初はもちろんお互いのこともわからないから、自分たちができることを一生懸命やるだけなんだけど、余計なことを考えないからそれがいい方向にいったのかな?
柴原 私は青山さんにいいアピールがしたいなと思いながら(笑)。ちゃんといいプレーをして、今後もダブルスを組んで一緒にツアーを回ってもらえるようにと頑張っていました。
――実際にペアとしてツアーを回るようになり、関係性も含めて変化していった部分はありますか。
柴原 それまで青山さんとほとんど話したことがなかったから、最初はちょっと緊張していたんです。歳の差もあるし、アメリカで育ってきたから日本の先輩と後輩のリレーションシップがどんな感じかわからない。それに私の日本語もよくなかったから(笑)、どうやって声を掛けたらいいかわからなくて、ちょっとシャイだったんですけど……。でも、「そんなの関係ないよ」「大丈夫だよ」と言ってくれたので、今ではすごくいい友達としてファミリーのように過ごさせてもらっていて、いつも楽しいです!
青山 瑛菜ちゃんはツアーに入ったばかりで、いろいろ新しいことがたくさんあったと思うので、いい意味で引っ張っていけたらなと思っていて。もちろん瑛菜ちゃんのほうが英語は全然しゃべれるので、なにかあれば全部ひとりでできたと思うんですけど、わからないことがあれば答えられるところは答えてきたつもりなので、少しはベテランとして役に立ったのかなと(笑)。
柴原 プレーの面でも試合の中での考え方とか、ベースが大事だということを青山さんから習ってきたので、思った以上に早く成長できていると思います。経験のある青山さんといると、自分もずっとツアーを回っている選手のような感じがするし、自分のテニスを成長させるということにフォーカスできているので、それは本当に青山さんのおかげだと感謝しています。
青山 私も瑛菜ちゃんに負けないように、自分が後ろのときでもしっかりポイントが取れるようにサービスもストロークもレベルアップしようと集中してきたし、戦術を考えることを含めて、瑛菜ちゃんと組むことで新しい学びもあったりしたので、成長できたかなと思います。何よりすぐになんでも笑ってくれるので、本当にすごく心が温まります(笑)。
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