USオープンが8月30日に開幕、ジョコビッチと大坂なおみが大きな注目を集める

写真はUSオープン会場で練習中のノバク・ジョコビッチ(セルビア)(Getty Images)


 今年最後のグランドスラム大会「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月30日~9月13日/ハードコート)は男女シングルスの組み合わせが決まり、月曜日に開幕を迎える。

 ノバク・ジョコビッチ(セルビア)は今大会で、自分が男子テニス史上でふたつの偉業――半世紀ぶりの『年間グランドスラム(同じ年に四大大会全制覇)』と21回目のグランドスラム制覇――を追っていることをしっかり自覚している。つまり彼がコートに立つとき、より多くの目が彼に向けられるということだ。

「僕はそれによって大きな刺激を受け、モティベーションを掻き立てられている。それは疑いないことだ。しかし同時に、多くの期待が周囲に逆巻く中で精神的にどうやって物事のバランスを取るべきかも分かっている。ラファやロジャーがいない中で僕がここに出場している訳で、それは感じているよ」とジョコビッチはグランドスラム大会獲得タイトル数「20」で男子の最多記録を分かち合っている今回不参加のライバル2人にも触れながら話した。

「多くの人々が僕の試合を観て、僕が活躍してグランドスラム達成のため戦うことを期待しているのだと分かっている」

 大坂なおみ(日清食品)もまたメンタルヘルスの問題でフレンチ・オープン1回戦勝利後に棄権したとき以来となるグランドスラム大会復帰という背景のため、自分が注目の的になることを知っている。彼女が女子のタイトルを防衛しようとラケットを持っているとき、そして彼女がマイクの前にいるときにも人々の視線が集まることになるだろう。

「間違いなく、少し違った感じになるでしょうね。それをどう表現したらいいのかわからないけど、ちょっと違う感じの人々の視線を乗り越えなければなりませんでした。同時に私は自分に、そういうものだと言い聞かせ始めました。私が成し遂げたことは事実なので、私に対する人々の認識を変えることはできないのです」と大坂はコメントした。

「そのことは私を少しりナーバスにさせるかもしれません。でも私はいつも1回戦で緊張します。それはそのせいだと思うようにすればいいのかも。その状況になったときにわかると思います」

 昨年の大会は新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックにより無観客で行われたが、月曜日から始まる今年のUSオープン本戦は観客をフル動員して開催することが許可されている。そしてそれがロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)、セレナとビーナスのウイリアムズ姉妹(アメリカ)が不在の中で行われる1997年以来のグランドスラム大会でなかったとしても、どこに注目が集まるかについて疑念はほとんどなかった。

 他の選手、メディア、ファンたちから大きな注目を集めるのは、男子第1シードで34歳のジョコビッチと女子第3シードで23歳の大坂だ。

「僕は自分がいつの日か、(ジョコビッチのようなレベルの)安定性や一貫性を持ち、あのようなレベルでグランドスラム大会を支配できるようになることを本当に願っている」とフレンチ・オープン決勝で2セットアップからジョコビッチに逆転負けを喫した第3シードのステファノス・チチパス(ギリシャ)は語った。

「それは時間をかけて作り上げるものだ。彼は何年にも渡って自分の最高の強さを維持し、ふさわしいときや適切な瞬間にそれを発揮する方法を学んできたのだと思う」

 2008年オーストラリアン・オープンでグランドスラム初優勝を飾ったジョコビッチは、今年2月に9度目の栄冠に輝いた。彼は6月にロラン・ギャロスで2つ目のタイトルを獲得し、7月にはウインブルドンで6つ目の優勝杯を手に入れた。彼がニューヨークで9月12日の決勝で勝った暁には、最多記録で並ぶフェデラーとナダルを追い抜くだけでなく『年間グランドスラム』を達成することになるのだ。

 テニス史上で同じ1年に4つのグランドスラム大会すべてを制した男子プレーヤーは、1938年に達成したドン・バッジ(アメリカ)と1962年と69年に成し遂げたロッド・レーバー(オーストラリア)の2人しかいない。男子では1969年のレーバー以来52年の間、2021年にジョコビッチがやってのけるまでシーズン最初のグランドスラム3大会を制した選手はいなかった。

「彼はとにかく素晴らしい選手だ。彼を表現する言葉は他にないよ」と今年のオーストラリアン・オープン決勝でジョコビッチに敗れた第2シードのダニール・メドベージェフ(ロシア)は敬意を表した。

 昨年のニューヨークへの旅は、ジョコビッチにとって幸せな形では終わらなかった。彼は4回戦の第1セットでサービスゲームを落としたあとにカッとなって無造作にボールを後方に打ち、それを線審の喉元に当ててしまったために失格処分を受けたのである。

 それ以来ジョコビッチが敗れた唯一のグランドスラム大会での試合は、パンデミックにより10月に日程を移して行われたナダルに対する2020年フレンチ・オープン決勝のみとなっている。

 特にハードコートのグランドスラム大会で実績を積み上げている大坂は、これまでに4つのタイトル(2018年&20年全米、2019年&21年全豪)を手にしている。記憶に新しい昨年のUSオープンでは、彼女は試合のたびに不当な暴力の犠牲者となった黒人被害者の名前が書かれたマスクを着用してコートに現れて話題を呼んだ。

 5月にフレンチ・オープンが始まる少し前、彼女は記者との会話が自分の中に疑念を生み出すと言ってもうメディアに対応しないと誓った。それから彼女は1回戦勝利後の記者会見をスキップしたことで1万5000ドルの罰金を科され、活動停止処分を受けることもあり得ると警告された。その翌日に大坂は過去にうつ状態に陥っていたことを明かした上で大会を棄権し、ウインブルドンも欠場したのだった。

 金曜日に受けたジョークや笑顔であふれた13分の記者会見の場で大坂は、「私はそれがどれほど大きな騒ぎになるかということを理解していませんでした」と振り返った。

 大会初日に初戦をプレーする予定の大坂は、アーサー・アッシュ・スタジアムのナイトセッションで世界ランク87位のマリー・ブーズコバ(チェコ)と対戦する。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

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