「今ならセレナの気持ちがよくわかる」準決勝でズベレフに勝利したジョコビッチ [USオープン]
今年最後のグランドスラム大会「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月30日~9月13日/ハードコート)の男子シングルス準決勝で、第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)が第4シードのアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)を4-6 6-2 6-4 4-6 6-2で振りきった。
「予想通りに今大会一番の激しいバトルだった。ズベレフのプレーは素晴らしかった。彼は今大会、あまりセットを落としていない。オリンピック、シンシナティで優勝して連勝街道に乗っていた。今夜ズベレフに勝つことは、とてつもないチャレンジになるとわかっていた。スタートがまずよかった。拮抗した展開だったと思うが、第1セットを失った。今大会で自分が何度も見せてきたように、第1セットを失ったあとに第2、第3セットではいいプレーができた。第3セットの終わりには長いラリーがいくつかあったから、何とかそのセットをもぎ取ったのは大きな解放、大きなアドバンテージになった。でも第4セットではわずかに集中力を失ってしまい、彼がそれを生かした。ズベレフ相手に1ブレークダウンに陥ると、ブレークバックは本当に難しい。彼のサービスは正確で強烈だからね。重要なポイントで彼は時速200kmを超えるセカンドサービスを何度か打ち込んできた。そんな相手に対する素晴らしい勝利で、勝利を引き寄せた自分のファイトを誇りに思う。もちろん、もっといいプレーができたであろう場面もいくつかあった。それでも一番大事な第5セットで自分の最高のテニスができたことに、とても満足している。明日も、もうひとつバトルを楽しみにしている」
グランドスラム大会のトロフィーを掲げるイメージを持っていると言ったが、今は決勝に向けてどんなイメージを持っているのか。
「まさにそのイメージだ。トロフィーを掲げている姿だ」
ほかにも何かある?
「いいや、それしかない」
これから24時間でどのように準備をするのか。
「物事をシンプルに捉えたい。新たな歴史について皆が僕に話して欲しいのは理解できる。自分がそこまであと一歩に迫っているのもわかる。もちろん気付いているさ。わかっているよ。でも、僕は自分にとって一番いい方法で集中しようとしている。僕には自分のルーティーンがあるんだ。そしてチームがいる。独りになり、次のバトルのために可能な限りすべてのエネルギーを集めるんだ。次の試合だけのためにね。オンコートインタビューでも話したように、この試合が人生最後のものだという気持ちで戦うつもりだ。疑いの余地もなく、これがキャリアでもっとも大事な試合になるからね。もしかしたら、ならないかもしれない。それはやってみないとわからない。間違いなく今年最大の試合にはなる。ズベレフの次はもう一人、現在素晴らしいプレーを見せているダニール・メドベージェフ(ロシア)とのバトルになる。彼はハードコートで多くの試合に勝っている。僕らは今年初めにオーストラリアン・オープンの決勝でも戦っている。何が自分を待ち構えているのかわかっている。彼はグランドスラム決勝を何度か経験してきた。その経験によって間違いなく成長している。初のグランドスラム優勝のためにすべてを出し尽くすだろう。それに対して自分は残ったエネルギーをすべて出しきって勝利を目指す。今はリカバリーにフォーカスしている。体のすべてのシステムを再調整して日曜日に備える。日曜日に必要なエネルギーを消耗させるような気晴らしなどに時間やエネルギーを無駄に使いたくない」
2015年のウインブルドンで優勝したセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)とノバク・ジョコビッチ(セルビア)がチャンピオンズディナーでダンスを披露
セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)はシンシナティからUSオープンに向けてグランドスラム優勝を目指していたとき、それについての質問をすべてシャットアウトしていた。でも君にはそんな様子は見られない。このプレッシャー、プロセスを楽しんでいるんじゃないか?
「2015年にUSオープンで優勝したとき、セレナと喋ったんだ。周囲で起きていることに物凄く感情的になっていた。今となれば、彼女がどんな気持ちだったのかを理解できる。その状況に置かれて初めて、選手がどんなことを経験しているのかが本当に理解できるものだ。彼女がその質問をすべて遮ろうとした理由がよく理解できる。結局、すべてはコートの上で出しきるしかないんだ。そしていつでも勝つことを期待される。彼女のようなレジェンドはいつも皆から、そして自分自身からの期待が付きまとうものだ。それは自分も同じこと。選手はいい気持ちでコートに立つための準備や回復方法は人それぞれだ。君らの質問に答えることに何も問題はない。でも、これまですでに話したこと以外にプラスして言うことは何もないと思う。もちろん、明日の決勝が終わったあとは、もっと詳しい話ができるだろう。今は物事をシンプルに捉え、対戦相手に敬意を払いつつ、いい準備をしたいんだ」
NBAファイナルでは3連勝すると、第4戦の前に2日間しか時間がなく、あまりあれこれ考えている暇がない。君にとってはウインブルドンから2ヵ月があったけど、いろいろ考えないのは無理だったのではないか。
「何年前か覚えていないけど、コービー・ブライアント率いるレーカーズがNBAファイナルズの第4戦に勝利した。それで3勝1敗となった。そこで彼の有名な言葉が出てきた。“まだ終わっていないのに、今なぜハッピーでいられるのか?”とね。彼はおそらく何百万人ものアスリートや人々に尊敬されている人物だ。僕もそのような姿勢でいたい。まだ終わっていないんだ。興奮、モティベーションは疑いようもなく、ここにある。恐らく、かつてないほどね。でもあとひとつあるんだ」
ズベレフは試合で一番大事なポイントのとき、できれば君以外の選手とそのポイントをプレーしたいと言っていた。もっとも大事なポイントでの勝負強さはどのように身につけたのか。
「そのような評判は瞬時に得られるものではない。長い時間がかかるものだ。最大の舞台で相手にマッチポイントを握られたときに、そのピンチを脱する経験を何度も何度も繰り返すことで得られる。恐らく自分がものにしてきたビッグマッチ、ビッグタイトルによって、自分の周囲には不死身の精神のようなオーラが出てきたんだと思う。それは特にグランドスラムの舞台で出てくる。最後のショットまで勝負はどちらに転ぶかわからないことを、僕はキャリアを通じて何度か経験することで学んできた。だから、僕の対戦相手がそのように自分を見ていることはうれしいよ。グランドスラムの大きな舞台で僕と対峙するときに、とてつもないプレッシャーを感じて欲しいと思っている」(テニスマガジン)
写真◎Getty Images
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