18歳ラドゥカヌが予選から20セット連取の快進撃でグランドスラムの頂点へ「本当に夢が叶った」 [USオープン]
今年最後のグランドスラム大会「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月30日~9月13日/ハードコート)の女子シングルス決勝で、エマ・ラドゥカヌ(イギリス)がレイラ・フェルナンデス(カナダ)との10代対決を6-4 6-3で制して栄冠に輝いた。
グランドスラム大会に4度目の出場となった18歳のラドゥカヌは、ワイルドカード(主催者推薦枠)を得て初めて本戦の舞台に立った今年のウインブルドンでのベスト16がこれまでの最高成績だった。ラドゥカヌは予選3試合を含め、ニューヨークでプレーした20セットをすべてものにして頂点に駆け上った。
今大会でのフェルナンデスとラドゥカヌはともに、ベテランのような落ち着きとショットメイキング能力を見せた。3年前にウインブルドンのジュニアの部2回戦で対戦していた彼女たちは、単なる新参者という様子ではなかった。お互いが持つ大舞台との相性とそこで輝く才能は、紛れもないものだった。
この日のふたりを分けた重要な違いのひとつとして、サービスがある。フェルナンデスが58%しかファーストサーブを入れられず5本のダブルフォールトを犯したことは、ラドゥカヌが18本のブレークポイントを手にする助けとなった。
「残念ながら、私はカギとなる瞬間にミスを犯し過ぎてしまった。そして彼女はそれを見逃さなかったわ」とフェルナンデスは悔しさを滲ませた。
第2セットでブレークに成功して4-2とリードしたラドゥカヌは次のゲームをキープして5-2としたあと、優勝まであと1ポイントというところまで2度迫った。しかしそこからフェルナンデスからのプレッシャーを受け、グラウンドストロークをネットにかけて双方のチャンスを逃してしまった。
そのあと5-3からキープすれば勝利という自分のサービスゲームを迎えたラドゥカヌは、結果的にポイントを落としてフェルナンデスにブレークチャンスを与えたラリーの中でバックハンド側にきたボールを追って滑ったときに左脚に出血を伴う擦り傷を負った。
そこで主審のマリアナ・ベルジョビッチ氏は止血のためにトレーナーがラドゥカヌに絆創膏を貼れるよう、プレーを一時ストップするよう指示した。その重大な瞬間に4分の遅延を生んだメディカルタイムアウトの間、ラドゥカヌの頭を通り抜けていたのはどのような思いだったのだろうか。
「自分のプレーパターンをどんなふうにするか、何をしようとするかを考えようとしていたの。中断のあとにから再開するのは簡単なことじゃないわ。でも私は間違いなく、必要なときにしっかりと切り抜けられるプレーができたと思う」と彼女は振り返った。
かつてそこにいたことがあるかのようにラドゥカヌは試合再開後に2つのブレークポイントをセーブし、それから自分の3度目のチャンスで時速約173kmのサービスエースを決めて試合を終わらせた。勝利の瞬間、彼女はラケットを落として仰向けに倒れて両手で顔を覆った。
そのあと彼女はスタンドに登り、コーチやチームのスタッフたちと勝利を祝い合った。
「それは誰もがいつも考えているんじゃないかしら。そのために頑張っているようなものよ」と彼女はコメントした。
「本当に夢が叶ったわ。チームのボックス席に上がっていって、皆とハグをして祝うことはずっと頭の中にあったの」
父はフロリダの自宅――フェルナンデス一家はレイラがジュニアで結果を出し始めた12歳のときにフロリダに引っ越した――に留まり不在だったものの、ふたりの妹と母を含めたフェルナンデスの陣営はランキングが高いほうの選手に割り当てられるコートの反対側にあるゲストボックスにいた。そのランキング上位者というステイタスは、大会を通して4人のシード選手をフルセットの末に連続で倒してきたフェルナンデスにとってあまり馴染みのないものだった。
彼女はタイトル防衛を目指していた第3シードの大坂なおみ(日清食品)、2016年チャンピオンで第16シードのアンジェリック・ケルバー(ドイツ)、東京オリンピック銅メダリストで第5シードのエリナ・スビトリーナ(ウクライナ)、第2シードのアーニャ・サバレンカ(ベラルーシ)を大接戦の末に破って決勝の舞台にたどり着いていた。
それは同時に、フェルナンデスが6試合を通して12時間半以上をコートで費やしたことも意味する。対するラドゥカヌは、本戦に入ってからは合計約7時間半しかプレーしていなかった。
1時間51分を要したこの決勝の特に後半では、それが勝負を分ける要因となったかもしれない。緊迫した攻防が続いた第1セット4-4から、ラドゥカヌは最後の11ゲームのうち8ゲームを取った。コースもスピードもいいフォアハンドのウィナーをダウン・ザ・ライン決めてセットを締めくくったときに彼女は自分の陣営のほうを見つめてから腕を振り、観客たちはそれに応えた。
決勝を終えたフェルナンデスの眼からは涙が溢れ、彼女はスタジアムの観客たちに向かって「またここで決勝に戻ってきて、今度はトロフィーを手にしたいと思います。正しいほうのトロフィーを」と語った。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)
写真◎Getty Images
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