田口涼太郎(近畿大3年)が白石光(早稲田大3年)の連覇を阻止し、「人生初」のシングルス全国タイトルを獲得 [2021インカレ室内]

写真は田口涼太郎(近畿大学3年)(撮影◎毛受亮介 / RYOSUKE MENJU)


 全日本学生テニス連盟が主催する「2021年度全日本学生室内テニス選手権大会(第58回)」(大阪府吹田市・江坂テニスセンター/本戦12月1~5日/室内ハードコート)の大会最終日は男女単複の決勝が行われ、各種目の優勝者が決定した。

 男子シングルスは第4シードの田口涼太郎(近畿大学3年)が第1シードの白石光(早稲田大学3年)を5-7 6-1 6-4で破り、全国初タイトルを獲得した。男子ダブルスでは第2シードの藤原智也/下村亮太朗(慶應義塾大学2年/1年)が第1シードの丹下将太(早稲田大学3年)/白石に3-6 6-1 [10-8]で逆転勝ちをおさめ、藤原はダブルスで大会連覇と同時に今季インカレとの2冠も達成した。

     ◇     ◇     ◇

 シングルスで過去一番の実績は、2017年インターハイの準優勝だった。あれから4年、田口はテニス人生初のビッグタイトルをかけた決勝の舞台にふたたび進み出た。

 相手は連覇を狙うトップシードの白石。しかし田口にとっては白石がインカレ・チャンピオンであることよりも何よりも、「早稲田のエース」であることに重大な意味があった。「打倒早稲田」の思いがずっと大きな原動力だったからだ。その理由が、「早稲田大の試験に落ちたから」であることを田口は隠さない。無敵の大学王者に対して芽生えた挑戦心、赤々と燃えるライバル意識をここまで歩んできた道と切り離すことはできない。

 第1セットは白石が先にブレークすればすぐに田口がブレークバック、次に田口が一歩リードすればまた白石が追いつくといった展開から、終盤まで続いた接戦をものにしたのは白石だった。1セット目を取ってようやく互角と計算していた田口はこの失セットで相当苦しい心境に追い込まれたが、ここで引かなかったのが“自信”というもののなせるワザだろう。夏のインカレでベスト4、秋には日本テニス協会(JTA)公認大会で連続優勝するなどして「勝負どころで強い気持ちになれる」と話す。

「セカンドからは気持ちを切り替えて、相手もどこかで落ちる場面があるはずだと思って我慢、我慢という感じでプレーしました」

 我慢といっても、守って繋いでというプレーで白石相手にチャンスがこないことはわかっていた。それは白石の言葉にも表れている。

「攻撃力が高く、展開が早い。セットを取られてもそれが変わらなかったのが涼太郎の凄いところ。本当に迷いのないプレーで、強かったですね」

 第2セットは1-1から田口が5ゲーム連取でほぼ一方的に奪い、最終セットも第3ゲームで2度のデュースからブレークに成功。白石もすぐ次の第4ゲーム、そして第8ゲームでブレークチャンスを握ったが、田口は怯まなかった。勝負強くファーストサーブを叩き込み、ことごとくピンチを脱した。

 攻撃的なフォアハンドを基軸にした攻撃が光る田口だが、もともとフォアは苦手だったという。フォアの安定性と攻撃性を高める練習に取り組んできたことも、今の成績に繋がっている。

 3時間24分。実に長い試合だったが、長さよりもハイレベルな駆け引きやテクニックが印象的だった。

 田口はこれで白石に対してはインカレから2連勝。そもそもテニスは大学で最後にするつもりだったというが、最近の手応えからは新たな選択肢も生まれつつある。ただ、たやすくプロとは口にしないのもまた田口。今後については「大学生活があと1年あるので、来年のインカレはもちろん、全日本も狙いたいし、コロナの状況を見ながら海外にもチャレンジしたい」と語った。(ライター◎山口奈緒美/構成◎テニスマガジン)

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撮影◎毛受亮介 / RYOSUKE MENJU

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