「ワクチン接種に反対しないが、体内に取り入れるにはまだ情報が足りない」ジョコビッチがワクチンに対する考えを明らかに
オーストラリアン・オープンへの出場が叶わず、セルビアへ強制送還されたノバク・ジョコビッチ(セルビア)が沈黙を破った。セルビアの首都ベオグラードにある『ノバク・テニスセンター』でBBCのインタビューに応じ、新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチンに対する自分の考えを明かした。
これまでコロナウイルスに対するワクチンを一度でも接種したことはある?
「ない」
それはどうして?
「ワクチンを接種するかどうかを判断できる自由を尊重している。これまでこの話題は一度もしてこなかったし、ワクチン接種の有無は明らかにしてこなかった。自分のプライベートのことなので明かさない権利がある。でも間違った情報が飛び交っているので、公表すべきだと思った。一度もワクチンに反対したことはない。世界中で多くの人がこのウイルスをうまくコントロールできるように努力している。近いうちにコロナ禍が終わることを願っている。そこへの道筋としてワクチン接種が最大の施策だろう。その考えを100%尊重している。それと同時に、自分の体内に何を取り入れるかという判断も常に自由であるべきだと思っている。僕にとって、自分のために何が正しいのか、何が間違っているのかしっかり判断することは途轍もなく重要だ。エリートのプロアスリートである自分としては、サプリメント、食事、水、スポーツドリンクなどあらゆるものが体に入ってどのように作用するかを慎重にチェックするのはとても重要なこと。この20年間しっかりそれを判断して、ここまでやってきた。いろんな情報を吟味した結果、ワクチンを体に入れないことを決断した。コロナウイルスのワクチンが自分の体や自分のプレーにどんな影響を与えるのか、情報が足りない。接種していない状態で得られる利点が、接種後にも得られるとは思えない。だから、現時点ではワクチンを接種することが自分にとって正しいことだと思わない」
WHO(世界保健機関)はワクチンがウイルスに対して効果があると発表している。つまり、君はワクチンがウイルスに対して効果的かどうかを疑っているのではなく、自分の体にどのような影響があるのか、十分な情報がないから接種しないということ?
「まったくその通りだ。コロナ禍を終わらせるために、皆が最良の方法を見つけ出そうとしている。僕はグローバルなスポーツをプレーしている。毎週のように違う場所で大会が開催される。自分の判断がどういう結果になるのか理解している。僕が出した結論のひとつがオーストラリアへは行かないことだった。行かないつもりだったんだ。今、ワクチンを接種していないと、ほとんどの大会に出られないことも理解している」
その代償を払うことになる。
「ああ、その代償を払うことになる」
君はこのコロナウイルス特定のワクチンに対する疑念があるのか、それともワクチン全般に対して自分の健康を害しかねないために反対の気持ちがあるのか?
「ワクチン全般に対して何も反対する気持ちはない。子供の頃にワクチンを接種したこともある。ただ、今はコロナウイルスに対するワクチンは情報、知見が足りないんだ。トッププロのアスリートとしては、自分の体に何が入るのか注意深くなっている。そして今はこのワクチンを体に入れたくないと判断している」
個人の自由や権利を凄く強く支持する姿勢のようだが、その考え方はどこからきている?
「自分生い立ちに関係するのかもしれない。90年代に育ち、4~5歳でテニスをプレーし始めた。僕らは2度の戦争を経験し、禁輸制裁もあった。パンと牛乳を受け取るために列に並ぶような日々は家族にとって苦しいものだった。そんな中で自分は一番お金のかかるスポーツでもあるテニスを選んだ。僕が夢を叶えるために、両親は多くを犠牲にしてきた。そして遠征に出るには、物凄く早く成長して、自立して自分のことはすべて自分でやらなければならなかった。父、家族、コーチも帯同するわけにはいかなかったからね。多くの大会には自分一人だけで出場した」
それで自立していった。
「ああ、そうだ。凄く若いときから自立していた。自分の性格、人間性の形成が凄く若いときからできる助けになり、自我も目覚めた」
個人の自由な判断と社会の利益は反発し合うことが多い。君個人にはプラスなことが、社会全体にとっては不利益になり得ることを認める? もしかしたら、一人がワクチンを接種しないと決断したことが、多くの人にとってはマイナスになるかもしれない。
「すべての人には自分の意見、考えを持つ権利があることを僕は尊重している。自分の体に何を入れるのか、選ぶことができる権利が誰にでもある。僕が決断したことを人々が尊重してくれることを願っている」
君のビザを2度目に取り消したオーストラリアの移民大臣、アレックス・ホーク氏が君がワクチン反対派の勢いを後押ししかねないと言った。テニスのスーパースターがすべての年代の人々、特に若者たちに多大な影響を与えると恐れていた。だが、この意見には何の証拠もない。どう思う?
「その知見にはまったく反対だ。そのような理由でオーストラリアから強制送還されたことは悲しく、残念だ。これ以上何と言ったらいいのか」
でも、君は多くの人に影響を与える存在だ。若い世代にとって……。
「僕は人々に影響を与えている。だが、人々が街に出てワクチン反対の抗議を行うように煽ったりはしたことがない」
世界中でワクチン接種に反対運動を行う人々が、“ノバク・ジョコビッチも我々も味方だ”と主張していることに対してどう思う?
「どんなことを主張する、どんな行動を取るかについて、自分にとって一番いいと思う方法を判断するのは、誰もが自由に選ぶ権利がある。そしてその運動に賛成しているとは、一度も発言したことがない。オーストラリアで起きた問題の最中に、僕のワクチン接種に対する考えやスタンスを聞かれたことは一度もなかった。だから、自分がどう感じているか、自分の考え方を表現することが法的にも法外的にもできなかった。だから、自分が賛成していないことをベースに、世界中でこの誤解、間違った結論に至ってしまったのが不幸でならない」
写真◎Getty Images
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