女子は激闘を制し富士見丘(東京)が全国初制覇!堺リベラル(大阪)は初出場初優勝ならず [2022中学センバツ]
中学1、2年生が対象の団体戦「第10回全国選抜中学校テニス大会」(3月29、30日/香川県高松市・香川県営総合運動公園テニス場/砂入り人工芝コート)は30日、男女準々決勝、準決勝、決勝が行われ、女子は第2回大会から9回連続出場の富士見丘(東京)が初優勝。2014年と2018年の準優勝を越えて、ついに中学の頂点に立った。
ダブルス2本(D1、D2)、シングルス1本の計3試合、各試合1セットマッチで行われる団体戦。
関東地域2位で第5〜8シードをつけた富士見丘は、準々決勝で、昨年の準優勝校で全国中学生大会(全中)優勝校の第1シード山陽女学園(広島)を2勝1敗で破り、同校の春夏連覇を阻んだあと、準決勝で第3〜4シードの城南学園(大阪)を2勝0敗で下して決勝へ進んだ。
一方のドローの下の山からは、昨年の全中ベスト4でセンバツ初出場の第2シード堺リベラル(大阪)が近畿地域1位の実力を見せ、準々決勝で浪速(大阪)、準決勝で関東地域1位で第3〜4シードの東京女子学院(東京)を倒して勝ち上がった。堺リベラルは1回戦から決勝にたどりつくまで1試合も落とさない快進撃だった。
堺リベラルのD1仲宗根サヤ(1年/左)/巽日菜(2年)が先勝(写真◎上野弘明)
決勝は横並びの3面展開。まず堺リベラルのD1、キャプテン巽日菜(2年)と仲宗根サヤ(1年)のペアが勝利を挙げた。1回戦からの5対戦でD1を担ってきた、チームの支柱とも言えるふたりが、富士見丘の竹本真埜(2年)/瀧口美優(2年)を6-3で退けた。
瀧口は試合前にチームで、「お互いのため試合を長引かせようと話していた」と言った。その思いは富士見丘のエース山上夏季(2年)が引き継ぎ、シングルスで伊藤凛夏(1年)を6-3で破ってタイに持ち込んだ。山上も伊藤も、準決勝までに出場したシングルス3試合で無敗。決勝は、長く戦うほど両者に疲労の色が見えてきていたが、最後まで気迫が衰えなかった山上が勝利した。
一時は、3面のスコアがすべて堺リベラルが先行する状況だったが、シングルス、D2で富士見丘がリードした状況で、富士見丘のシングルスが決まり1勝1敗となった。この時点で流れは富士見丘にあった。
富士見丘のエース山上夏季(2年)の勝利で勝負はわからないものに(写真◎上野弘明)
D2は、富士見丘の金津香杏(2年)/小川恵(2年)と堺リベラルの坂井心音(2年)/松岡美海(1年)の対戦。金津/小川が5-4、40-15とし、マッチポイントをつかんだ。だが、坂井/松岡があと1ポイントを取らせない。結局5回あったマッチポイントを金津/小川は取りきれず5-5。一進一退の攻防でタイブレークへ。男女を通じて最後となったこの試合に多くの視線が注がれ、コートは緊張感に包まれた。
堺リベラルの坂井心音(2年/右)/松岡美海(1年)(写真◎上野弘明)
タイブレークで、坂井/松岡がストレートへパスを決めて6-4。ついに堺リベラルがマッチポイントをつかんだ。ボレーをミスして6-5、それでもあと1ポイントで優勝は決まる。だが、ネット前で金津/小川が動いてポイントを取り、2ポイントを連取。7-6と逆転して、富士見丘は6回目のマッチポイント。ふたたび追い込まれた坂井/松岡だったが、ここでも引かずに7-7に追いつく。
そして続く最後の2ポイントは、短いボレーを金津/小川が決め、ラリーで坂井/松岡が根負けして、富士見丘に歓声が挙がった。場内に大きな拍手が沸き起こった。
声援の代わりに大きな拍手(写真◎上野弘明)
「身長が高く、リーチがある小川は前で動ける。しっかりストロークをつなげられる金津とのコンビならポイントが稼げる」と、富士見丘の遠藤央監督はふたりを決勝で組ませた。2回戦から準決勝までオーダーを固定していた富士見丘が、決勝で変更するという大胆な策に出た。遠藤監督は1回戦からもっともよい組み合わせを考えてきたと言い、その采配が的中する結果となった。さすがにここまでの試合になるとは予想していなかったという。「相手(堺リベラル)は決してミスをしない。その相手に、つないで勝つのは不可能。金津がつないで小川が前で決める、小川が後ろのときはストロークで押して、金津が前でかき回す、それが最良だと思った」。その通りの活躍となった。
富士見丘のD2小川恵 (写真◎上野弘明)
1回戦から準決勝までシングルスとD1をプレーして無敗だった富士見丘の瀧口は、決勝のD1で敗れたときは涙が出たと言った。だが、振り返ってみれば前回3位、そのとき準決勝で敗れた山陽女学園に今大会は準々決勝でリベンジしての初優勝。瀧口自身は一年をかけてテニスを大きく変えてきた成果を感じられた大会でもあった。「チームも自分も成長できた大会」と手応えも口にした。
富士見丘は中学、高校と一貫教育の私立校。高校テニス部は過去17回の全国制覇を誇るテニスの名門だ。中学も全中で1986、87、91年に3度優勝経験があるが、センバツはこれが初。春夏で数えると31年ぶりの全国制覇となった。
「第2回大会から出場して9大会目。もちろん、選手が集まって頑張ってくれたから勝てたと思うが、過去のOGたちが積み重ねてきたものがあって実ったものでもあると思う。今年だけでどうこうなるものではない」と遠藤監督は、そのことを忘れないようにしたいと噛み締めていた。
富士見丘優勝の瞬間(写真◎BBM)
堺リベラルのキャプテンで、D1で勝利した巽は決勝を振り返って、「試合が終わったときは悔しかったけど、会場のみんなが拍手してくれたときは感動して涙が出た。だから悔しいだけではないです」と表情を緩めて話した。準決勝で堺リベラルと接戦して敗れた東京女子学院(東京)の柴田土斗監督は、「全試合で競ると臨んで、実際に競ったが、うちは一つになれなかった。私の責任」と話し、チーム戦を戦う力の差を感じたと口にした。
富士見丘の遠藤監督も、堺リベラルについて「気持ちが強い。引き出しが多く、いろいろな場面に対応できる。もともとの人間性を鍛えて、それを外に表現することに長けている」と評した。堺リベラルには、ジュニア時代から数々の優勝を遂げてきた経験を持つ小城千菜美コーチがいる。その経験を選手たちに伝える影響は計り知れない。
「ここ一本というときを取るか取らないか、試合は最後まで何が起きるかわからないということをずっと言ってきて、それが今回につながっていると思う。ただ、口で言うのと実際に経験するのとではやっぱり違って、今まで言われてきたことを実際に経験した選手たちは、確かにそうだ、と思ってくれたと思う。これを全中につなげたい」(小城コーチ)
表彰式は中央が優勝校、左右に準優勝校、3位校が並ぶ(写真◎上野弘明)
創部2年目での大活躍に、否応なしに注目が集まる。堺リベラルのメンバーは「ほとんどが小学校から知る仲間で、良いことも悪いことも、全部本音で語り合える」と巽。その信頼する気持ちが隣コートでプレーする仲間に伝播し、いっしょに戦っているように見える場面が何度となくあった。
コロナ禍によりテニスの大会は無観客開催が続いているが、今大会はコロナ前に行われていたコンソレーションや練習試合を復活させ、場内は活気にあふれていた。中学1、2年生が全国の舞台でできるだけ多くの試合経験を積めるように配慮した大会。取材する中で、多くの先生や選手が感謝の気持ちを口にし、目を輝かせていた。(編集部◎青木和子)
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