「この種の苦しみを楽しまなければならない」ナダルが苦闘の末に8強入り [マドリッド・オープン]

写真はラファエル・ナダル(スペイン)(Getty Images)


 ATPツアー公式戦の「ムトゥア・マドリッド・オープン」(ATP1000/スペイン・マドリッド/5月1~8日/賞金総額749万9290ユーロ/クレーコート)の男子シングルス3回戦で、第3シードのラファエル・ナダル(スペイン)が予選勝者のダビド・ゴファン(ベルギー)を死闘の末6-3 5-7 7-6(9)で倒してベスト8に進出した。

 第3セットのタイブレークで4-6の窮地から追いついたナダルは更に6-7、8-9と4度マッチポイントに直面したがその都度挽回し、ケガによる戦線離脱を経ても衰えない鋼のメンタルで非常にいい戦いを見せたゴファンの挑戦を退けた。

 ゴファンがフォアハンドで放った渾身のダウン・ザ・ラインが僅かにサイドラインを割った瞬間、ナダルは苦しそうな表情の上に安堵を滲ませて両腕を突き上げた。

 実際、第3セット終盤とタイブレーク2-4からのゴファンの戦いぶりは目覚ましかった。ゴファンがフォアハンドを非常に厳しい角度に打ち込んで振り回し、決め球を打ち込んだあとの浮き球をグラウンドスマッシュで仕留めて最初のマッチポイントを手にしたとき、その勢いを止めるのは百戦錬磨のナダルであっても困難であるかに見えていた。

 しかしナダルはそこから一瞬硬くなったゴファンのミスと自らのサービスによるポイントで追いつき、さらに3度目と4度目のマッチポイントをドロップショットのウイナーで回避した。第2セットで一時5-3とリードしながらストレート勝ちのチャンスを2度決め損ねていたナダルは、この日4度目のマッチポイントをようやくものにして苦闘に終止符を打った。

「本当に厳しい試合だった。僕は非常にハイレベルのプレーをしたと思う。でも同時に僕は間違いなくストレートで勝つチャンスを手にしていた訳だから、完全に満足してはいない」とナダルは試合を振り返った。

「3時間10分をコートで費やしたことは、僕のフィジカルパフォーマンスを向上させる助けとなる。マッチポイントを凌いだ末の、非常に重要な勝利だ。より早く身体のコンディションを上げるためにも、僕には今日のような試合が必要なんだよ」

 敗戦の淵から生還したナダルは、「結局のところ、選手は試合中に苦しむ。いつも何度も言ってきたけど、この種の瞬間を生き抜く術を学ばなければいけないし、またこの種の苦しみを楽しまなければならない。このようなスリルある瞬間のために、僕たちは努力を積んでいるんだからね」とコメントした。

 肋骨の疲労骨折から今大会で復帰したばかりのナダルは久々に長い試合を戦ったあと、「僕は大会前にしっかり準備できなかった。ほぼ2ヵ月練習できなかったあとだけに、明日目覚めたとき身体がどのようになっているか見てみなければならない」と語った。

「明日の試合の準備ができているようでなくてはならない。明日は簡単な試合にならないことを受け入れる準備ができている必要がある。それでも僕は、今日の試合に勝ててうれしいよ。もう1日プレーするチャンスを手にすることができた訳だからね」

 年齢を重ねてからのカムバックについて、「19歳や20歳でケガから復帰するのと、もう直ぐ36歳の選手がカムバックするのとでは大きく違う。ケガをしたとき、もちろんまずは負傷した個所を治癒させなければならないけど、それからもう一度スイッチを入れる必要がある。ふたたびスタートとしたときには身体のいろいろなところが痛むから、それにも対処しなければいけない。練習の仕方やできるトレーニングの量もうまく管理しなきゃいけないしね」とナダルは説明した。

 苦境に置かれたナダルを後押ししたのは、彼にとって第二の故郷でもあるマドリッドの観客たちによる大声援だった。折しもその前日にはナダルが応援しているサッカーチーム『レアル・マドリッド』が終了直前の2ゴールで劣勢を覆し、UEFAチャンピオンズリーグで決勝進出を決めていた。

 試合後にナダルはそのサッカーの試合を引き合いに出し、「昨日は忘れ難い夜だった。レアル・マドリッドの精神は信じられないほど素晴らしかったね。今日の僕にとって、それはある意味でインスピレーションだったんだ」と話した。

 ナダルは準々決勝で、第9シードのキャメロン・ノリー(イギリス)を6-4 6-7(4) 6-3で破って勝ち上がった第7シードのカルロス・アルカラス(スペイン)と対戦する。

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写真◎Getty Images

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