リバキナがウインブルドンでキャリア最大のタイトルを獲得「私は自分自身に、グランドスラム大会で優勝できるということを証明した」
今年3つ目のグランドスラム大会「ウインブルドン」(イギリス・ロンドン/本戦6月27日~7月10日/グラスコート)の女子シングルス決勝で、第17シードのエレナ・リバキナ(カザフスタン)が第3シードのオンス・ジャバー(チュニジア)を3-6 6-2 6-2で倒してグランドスラム初優勝を飾った。
ロシア生まれのリバキナはカザフスタンが与えてくれる財政的な援助を理由に18歳だった2018年に国籍をカザフスタンに変更し、グランドスラム大会で栄冠に輝いた初のカザフスタン人選手となった。
第1セットを落してから目覚ましい姿勢の転換で自分のリズムを掴み、難しい戦いを切り抜けての逆転勝ちでキャリア最大の成功をおさめたにもかかわらず、勝利の瞬間にリバキナに見せた反応は比較的控えめだった。握った拳と、小さな微笑――。
試合後の記者会見で優勝後の反応が思いのほか冷静だったことを指摘されたリバキナは、「私はいつも、とても落ち着いているの。何が起きるべきなのかわからないわ。スピーチをしているとき、最後に『今泣きそう』と思っていたけど何とか抑えたし。もしかしたら部屋でひとりになったとき、ノンストップで泣くのかもしれない」と答えた。
「もしかすると、心の奥底で『私にはきっとできる』と信じていたからなのかもしれない。でも同時に、あまりに多くの感情が溢れて自分を落ち着かせるようしていたの。もしかしたらいつか皆さんは私から大きな反応を見るかもしれないけど、残念ながら今日じゃなかったわね」
2回戦でビアンカ・アンドレスク(カナダ)、準決勝で第16シードのシモナ・ハレプ(ルーマニア)とグランドスラム優勝経験者たちを破って決勝に駆け上がった23歳のリバキナだが、これは彼女にとってキャリア3つ目のタイトルに過ぎず、ツアー2勝目を挙げた2020年ホバートのあとは決勝で4連敗を喫していた。リバキナにとってグランドスラム大会におけるこれ以前の最高成績は、昨年のフレンチ・オープンでのベスト8だった。
決勝はリバキナがややナーバスになっている様子を見せる中、ジャバーが着々と自分のテニスを遂行する形で始まった。フォアハンドからもスライスを放ってハードヒッターであるリバキナのペースを崩しにかかったジャバーは第3ゲームで早くもブレークに成功し、長短や緩急を織り交ぜたショットで揺さぶりをかけた。ミスが早かったリバキナは3-5からのサービスゲームをふたたび落とし、第1セットを失った。
しかし第2セットに入るとより果敢な姿勢で攻撃の手を強め、同時にミスを減らしてきたリバキナが出だしのブレークを皮切りに試合の主導権を握った。ジャバーのやり方にも慣れてきた様子でドロップショットに追いつき、そのあとのボレーで逆襲し始めたリバキナは次第に目覚ましいショットでエースを奪うようになり、お互いが早いタイミングでショットを放ち合う中でラリーのリズムは顕著に上がっていった。
試合がリバキナのペースとなり、やや無理して打っているためジャバーにミスが出始めた。リバキナは第5ゲームでまたもジャバ―のサービスゲームを破るとそのままのペースでセットオールに追いつき、最後までそのハイテンポのリズムで突っ走った。
「オンスはいいプレーをしていた。彼女のテニスに適応するのに時間が必要だったわ。でもそのあと、私は『何がどうなろうと最後まで戦うわ』と思ったのよ」とリバキナは試合を振り返った。
「本当に厳しかったから、私はとにかくすべてのポイントに集中しようとしたの。凄く暑かったわ。肉体的に緊張していたから、もうできないと考えていたんだと思う。でも結局、私はすべてのドロップショットを追いかけていたわね。私がオンスが繰り出すすべてのトリッキーなショットを追って、こんなに走ったのはこれが初めてだったんじゃないかしら」
表彰式になってもまだすべてを実感できていないような様子を見せていたリバキナは、「私は物凄くナーバスだった。昨日はいい練習ができたけど、夜になったらもう過剰な緊張感に囚われ始め、朝になっても変わらなかった。私は自分に『これはひとつの試合であり、私は既に経験を積んでいる』と言い聞かせた。私にとって最悪のことは、リードしていたのに巻き返されて負けるということ。不幸なことに私はそんな試合をたくさん経験してきたから、その経験が今日は私を少し助けてくれたのかもしれない」と試合中の葛藤を明かした。
「私は『また次もあるかもしれない』と自分に言い聞かせようとしていたわ。私がグランドスラム決勝に至るのはこれが最初で最後ではないと…。『私は既にチームと凄くいい仕事した』とか、こういった言葉で自分を落ち着かせようとしていたの」
この勝利で何を証明したかと聞かれたリバキナは、「恐らく私は、必ずしも若い頃から素晴らしいチームに囲まれている必要はないということを証明したのよ。私は17歳か18歳まで、そのようなチームに恵まれていなかったから。だからもっとも重要なのは、財政的状況がどんなだろうと誰であろうと、多くの素晴らしい成果を挙げる可能性を誰もが持っているのだということだと思う」と答えた。
「そして私は自分自身に対し、実際にグランドスラム大会で優勝できるのだということを証明したの。私は今、より自分を信じている。もしかしたら、もっとグランドスラム大会でタイトルを獲得できるかもしれない。いずれにせよ間違いなく、それが目標よ。私はそのために努力を積むわ」
写真◎Getty Images
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