大坂がセレナへの思いを語る「彼女がこれを『引退』と呼んでいないことは知っている」
今年最後のグランドスラム大会「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月29日~9月11日/ハードコート)を前に記者会見が行われ、日本の大坂なおみ(フリー)がこの大会を限りに引退することを示唆している40歳のセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)の偉大さについて語った。大坂は自他ともに認めるセレナの大ファンだ。
「彼女がそれを発表する前に、トロントで彼女がプレーした最初の試合を観たの。何故だか私は泣き始めた…。『それ』が感じられたから」と大坂は明かした。
「それから、翌日に彼女がそのことを発表した。私は『何てこと! 悲しみで心が荒廃するとはこういう感覚なのね』と思った。彼女のプレーを観続けられるだけでも、本当に栄誉なことだわ」
翌週のシンシナティでも、大坂は観客席からセレナとエマ・ラドゥカヌ(イギリス)の1回戦を見守っていた。大坂は記者会見の場で、「セレナがいなかったら、自分はテニスを発見したり世界的スポーツスターとしての道を描いていくことは決してなかったでしょう」と話した。
「彼女が取り除いてくれたバリア、障害物がたくさんあったと思う。彼女のおかげで、私たちは容易に進んでいくことができるのよ」
ふたりはキャリアを通して4度直接対決しており、そのうちのひとつは大坂がグランドスラム初タイトルを目指し、セレナが産休後に24回目のグランドスラム制覇を狙っていた2018年USオープン決勝だった。セレナが審判と口論したことで思わぬ苦い展開となった試合だったが、決勝に至る前に大坂は「どうしてもセレナと当たりたい」という期待と興奮を隠そうとしていなかった。そして最後の対戦は、2021年オーストラリアン・オープン準決勝で実現した。
「彼女と会うと、本当に緊張する。誰かをアイドルとして崇めていて、突然その人物と実際に話をするというのは凄く奇妙なことよ。ナーバスになり、凄くストレスを感じるの。でも彼女は本当に優しい。ときどき私にアドバイスをしてくれるのよ」と大坂はセレナへの思いを打ち明けた。
「彼女がこれを『引退』と呼んでいないことは知っている。彼女はそれを『進化(段階的変革)』と呼んだ。これは本当に素敵な言い方だと思うわ。『引退』という言葉は何かの終わりを意味するけど、彼女が進化と言ったから、それは旅の継続を意味するのよ」
セレナにとって最後になると思われる大会を通して彼女の歩みに注目しながらも、大坂は自分自身に関して第19シードのダニエル・コリンズ(アメリカ)に初戦を前に不安を感じていることを認めた。
「数日前なら、りラックスしていると嘘をついたかもしれない。でも今日練習したとき、ある種の心のざわつきを感じた。それはここまであまりいい成績を挙げていなかったから、本当によくやりたいと願っているからなのだと思う」と大坂はコメントした。
「わからない。難しいわ。もちろん誰だってグランドスラム大会の1回戦で負けたくはない。私はここではいつもかなりうまくやってきたと感じている。その事実は少しプレッシャーを取り除いてくれはするけど、決して完全に消えはしないの」
2022年は主にケガのため、大坂にとって難しいものとなっている。4月にマイアミで決勝に進出して調子の上昇を見せていた大坂だが、アキレス腱の問題でクレーコートシーズンを通して苦しみ、グラスコートシーズンは丸々スキップした。サンノゼで夏の北米ハードコートシーズンを始めた彼女は2回戦でコリ・ガウフ(アメリカ)に敗れ、弾みをつけることができなかった。
「今年はフィジカル面でいつもと違っている。『ケガ』とさえ呼びたくないけど、私はこれまでのキャリアでなかったほど多くの軽い身体の問題を抱えることになった。フィジオのナナ(茂木奈津子氏)に『もしかしたら私は年取ってきたのかしら、成長痛かしら』などと言っていたの。凄くフラストレーションを感じたけど、同時に『以前のようにプレーできるようになりたい』という気持ちになったから興味深いことでもあったわ」
大坂はコリンズとの1回戦を前に、「彼女はパワフルな選手であり、対戦するときにはいつもその部分で先手を取て凌駕しなければならないと感じている。何故ならこちらのショットが甘くなると、彼女は間髪入れずに攻撃してくるから」と気を引き締めた。ふたりは過去3戦し、大坂が1セットも落とさず3連勝している。
「厳しい試合だけど、知っている選手と対戦するという面ではある意味ほっとしている。まったく情報のない知らない選手とプレーする可能性もあった訳だから。それはそれで、とても難しいことなの」
写真◎Getty Images
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