ナダルを阻むのはケガだけか?「僕は前年覇者なのだからリタイアしたくなかった」 [オーストラリアン・オープン]

写真は負傷したゲームを終えたあと一旦ベンチに戻ってトレーナーのチェックを受けるラファエル・ナダル(スペイン/左)(Getty Images)


 今年最初のグランドスラム大会「オーストラリアン・オープン」(オーストラリア・ビクトリア州メルボルン/本戦1月16~29日/ハードコート)の男子シングルス2回戦で、試合中に左脚の付け根を痛めた第1シードのラファエル・ナダル(スペイン)がマッケンジー・マクドナルド(アメリカ)に4-6 4-6 5-7で敗れる番狂わせが起きた。

 波乱は早くも大会3日目に起こった。昨年のウインブルドン準決勝を腹筋のケガで棄権してからの復帰後にUSオープン4回戦からの7試合で6敗していたナダルは、それでも今大会の1回戦での勝利を足掛かりに前向きな姿勢を見せていた。しかし彼は、またも新たなケガに道を阻まれた。

 第2セット3-4からのレシーブゲームのファーストポイントでボールを追った際にナダルは左の鼠径部付近を痛め、そこからはもはや満足に走ることができなかった。彼は負傷する前も試合の主導権を握っていた訳ではなかったが、第2セットでは打開策を見つけ始めて「まだまだこれから」と感じていたと明かした。

「フラストレーションを感じる。受け入れるのが難しいこともある。ケガに関するすべてのことにはうんざりするよ。ここにきて『人生は素晴らしい』と噓をつき、『ポジティブな姿勢を保って戦い続ける』などと言うことはできない。今は無理だ。『明日は明日の風が吹く』だよ」とナダルは試合後の記者会見で辛い心境を率直に吐露した。

「今は厳しい瞬間だし、辛い日だ。それを受け入れて進み続けるしかない…」

 これまで多くのケガに苛まれてきたナダルは、「結局のところ、自分の人生について不平不満を言うことはできない。これはスポーツをする中で起きたケガに関する辛い瞬間だ。またもや起きてしまった。打ちひしがれていないといえば嘘になる」とさすがに堪えている様子を滲ませた。

「さすがに辛いよ。深刻なものでないことを祈っている。練習に関してはポジティブな3週間だったんだ。だからこそ長くコートを離れたくない。回復するための過程をもう一度やるのは本当に大変だからね。回復するだけでなく、いい状態で戻るためには膨大な努力が必要だ」

 ナダルは2回戦に臨む前に左脚の付け根付近に違和感があったことを認めたが、それが深刻な状態になったのは第2セット第7ゲームで起きた問題の場面からだった。マクドナルドのサービスエースでそのゲームが終わったあとに一旦ベンチに戻ったナダルはメディカルタイムアウトを取って治療を受けたあとも試合を続行し、本来の力を出せないながらも最後まで戦い抜いた。

「ここ数日はこんな感じだったけど、今日のような状態になるほど酷い状態ではなかった。何が起きたのかわからない。筋肉なのか、関節なのか…。以前にも股関節を痛めて治療を受けたことはあったけど、ここまで酷くはなかった。今は動けないと感じている」とナダルは説明した。

「でも検査をするまでは何とも言えない。筋肉なのか関節なのか軟骨なのか、今のところはわからないよ」

 それでも最後まで試合を全うしたナダルは、試合の残りを通して「プレーを止めて棄権すべきかずっと考えていた」と打ち明けた。しかしそれをしなかったのは、彼が貫いてきた流儀と矜持だった。

「僕はディフェンディング・チャンピオンなのだから、リタイアしたくなかった。途中棄権でコートを去りたくなかったんだ。結局のところ、これでよかった。僕は負けた。それだけだ。対戦相手を祝福するよ」と昨年の大会を過酷な5セットマッチの決勝で締めくくっていたナダルは語った。

「それと同時に、それがスポーツなんだ。最後までベストを尽くす。可能性がどれほど小さくても関係ない。それがスポーツの哲学であり、スポーツの本質なんだ。僕は自分のキャリアを通してそれを尊重してきた。でももちろん体に何が起きているかわからなかったから、ダメージを増やさないように配慮はしていたよ」

 記者会見の終わりに「苦しい瞬間を克服し続けるためのモティベーションを保つ原動力は何か」と聞かれたナダルは、「シンプルなことだ。僕は自分がやっていることが好きだ。テニスをするのが好きなんだ。永遠に続けられないことも知っている。自分がまだ第一線で戦えていると感じるのが好きだし、人生の半分以上の時間を通して戦い続けてきたもののために戦いたい。それだけだよ」と答えた。

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写真◎Getty Images

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