アンドレスクがセレナの悲願を阻み、USオープン本戦初出場でグランドスラム初優勝

 すべてが終わったとき、彼女は片手を頭に当て、ラケットを落とし、それから拳を突き出した。ネット際で笑みを浮かべたセレナからの抱擁を受け取ったあと、アンドレスクはブルーのコートにキスし、仰向けに倒れると、拍手喝さいに身を浸した。

 その2時間前、アンドレスクはロッカールームからコートに向かう廊下に立ち、プレマッチインタビューを受けていた。その中で、「私はただ、(この決勝を)他のどの試合とも同じように臨もうと思うわ」と言った彼女の言葉は、プレーと同じくらい自信に満ちた心を待つ者のそれであるように響いていた。

 彼女はこの試合を、トップ10に対する7勝0敗を含めて33勝4敗という2019年の戦績で始めていた。彼女は3月以来、故障なくプレーし終えた試合では一度も負けていなかった。アンドレスクはその期間、肩の故障で多く時間を棒に振ってしまったが、明らかにもはやその身体の問題には煩わされていないようだった。

USオープン2019|トーナメント表

 ネットの向こう側で対処するセレナに対して、アンドレスクは次々とパワーショットを打ち込んだ。あるショットは直接セレナに向かって飛び、彼女はベースラインで飛び上がってボールを避けた。

 そして文字通り、アンドレスクは怖いもの知らずだった。彼女はいつもセレナがやっているように、「カモン!」、あるいは「レッツゴー」と叫びながら、常に押し気味に、常にアグレッシブに戦い、多くのウィナーを打ち込んだ。

 コイントスの選択を見ただけでも、彼女がいかに大胆不敵か分かる。彼女はレシーブを選択した。これは、彼女が女子テニス界でもっとも強力なサービスの持ち主とみなされる選手と対戦しようとしていたことを考えれば、やや常軌を逸した決断のように思えた。

 しかしながらこの日、この選択は機能した。セレナは総じて8本のダブルフォールトを犯し、うち3本はブレークポイントでのものだった。それはセレナが犯した33本のアンフォーストエラーの一部であり、この数はアンドレスクの17本と比べて2倍近かった。

 この試合でのセレナが彼女のベストではなかったもうひとつの尺度は、彼女が第2セットで奇妙な表情でバックハンドのスイングをチェックしていたときを含め、やや確信が持てないような表情を見せていたことだ。

 16歳のとき、アンドレスクは成功をビジュアル化する手段のひとつとして、自分に偽のUSオープン優勝賞金の小切手を書いたのだという。そして現実世界で賞金が上がるごとに、賞金額をアップデートしていたというのだ。

 そしてその土曜日、彼女はチャンピオンとして本当に385万ドルもの小切手を受け取ったのだった。(C)AP(テニスマガジン)

※写真はビアンカ・アンドレスク(カナダ)
NEW YORK, NEW YORK - SEPTEMBER 07: Bianca Andreescu of Canada kisses the championship trophy during the trophy presentation ceremony after winning the Women's Singles final against Serena Williams of the United States on day thirteen of the 2019 US Open at the USTA Billie Jean King National Tennis Center on September 07, 2019 in the Queens borough of New York City. (Photo by Elsa/Getty Images)

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