ジョコビッチが歴史的決勝でフェデラーに勝ち、5度目のタイトル [ウインブルドン]

 とはいえその日曜日、伝説のセンターコートの周りで鳴り響く音から明らかだったのは、観客の大部分が人気者のフェデラーを応援していたということだ。そのカリスマと優雅さで、フェデラーは遥かに多くの寵愛を浴びていた。それはあたかも、彼がスイス人ではなくイギリス人であるかのような有り様だった。

「ふたりとも愛してる!」と叫んだ者もおり、そのプレーの質の高さと攻勢と劣勢が絶え間なく行き来する流れを考慮すれば、それは適切な感情だった。

 とはいえ、「カモン、ロジャー!」の声は、ジョコビッチへの声援よりもはるかに多かった。比べ物にならないほどに。そう、彼らはこの試合最初のポイントでのフェデラーのサービスエースに大歓声を上げ、彼が勝負を第5セットに持ち込んだときにも歓喜の轟音を立てた。

 観客たちはフェデラーがボールを蹴ってボールボーイに渡したり、ジョコビッチのサービスがレットになって彼がラケットを背中の後ろに回して意味のないコンタクトをやって見せたときにさえ、拍手喝さいを送ったのである。

 それから、「あー!」という叫び。愛するフェデラーのバックハンドのミスや、ダブルフォールトに伴う落胆と悲しみのため息である非常に多くの「あー!」があった。

 フェデラーがたった一度しか相手にブレークポイントを与えなかった第4セットまでは、そんな具合だった。全世代を通して最高のリターンの名手と呼べるジョコビッチに対し、それは小さな成果ではない。フェデラーはそのセットでワンブレークを許したにも関わらず、勝負を第5セットに持ち込んだ。

 こうして、すでに見ていて非常に楽しく壮観だった試合はとてつもなくワクワクするするものになったのである。

 だからといって、テニスが完璧だったわけではない。というのも双方が、疲労と、おそらく精神的緊張感の兆候を見せ始めていたからだ。

 第5セットで放ったフェデラーの凡庸なアプローチショットが、ジョコビッチにブレークして4-2とリードするための突破口を与えた。次のゲームでのジョコビッチのダブルフォールトは、フェデラーのブレークバックを助けた。続くエンドチェンジの間には、双方の名前を呼ぶ観客の声のフーガが鳴り響いていた。

 新しいタイブレークが第5セットをそれだけで2時間以上に持ち込んだ中、そこでよりいいプレーをしたのがジョコビッチだった。フェデラーのフォアがラケットのフレームに当たるミスショットとなった瞬間にそれは終わり、ジョコビッチにセンターコートの芝を指でむしり、それを噛むという彼の個人的伝統をふたたび行うことを許したのだった。

「絶え間のないプレッシャーだった」とジョコビッチは振り返った。

「僕は試合の中にとどまるために戦い、自分のテニスを見つけなければならなかった」

(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

※写真はウインブルドン決勝で2度のマッチポイントを覆し、ロジャー・フェデラー(スイス)を破って優勝したノバク・ジョコビッチ(セルビア)
LONDON, ENGLAND - JULY 14: Novak Djokovic of Serbia celebrates winning the Men's Singles final against Roger Federer of Switzerland during Day thirteen of The Championships - Wimbledon 2019 at All England Lawn Tennis and Croquet Club on July 14, 2019 in London, England. (Photo by Matthias Hangst/Getty Images)

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