エバートがナブラチロワとの長いライバル関係の浮き沈みを回顧
マルチナ・ナブラチロワ(アメリカ)についてのクリス・エバート(アメリカ)の見解は、新進気鋭の脅威からダブルスパートナー、グランドスラム決勝で記録的14回の対戦を繰り広げた宿命のライバル、そして近年の親しい友人関係まで、山あり谷ありで変化していった。
「私の姉が2月に亡くなったのだけれど、マルチナは1日中そこにいてくれた。彼女はお葬式に来て、埋葬にも立ち会ってくれた。そのあと家での食事の席にも彼女はそこにいて、22時まで滞在してくれた。テニスプレーヤーで来てくれたのは、彼女とパム・シュライバー(アメリカ)のふたりだけだったわ」とエバートはAP通信への電話インタビューの中で打ち明けた。
「マルチナは今、間違いなく私のもっとも親しい友人のひとりよ。ふたりの間にはもう競争はない。私たちの関係には、どんな緊張感もない。それは解放感のある感覚ね」とエバートは説明した。「今の私は彼女と彼女の人柄が大好きで、それは彼女も同じなんじゃないかしら」。
彼女たちのようなライバル関係は、テニスの歴史を定義するのに役立つ。それはまた、ウインブルドンに関しても同じだ。今年のウインブルドンは新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックのために中止されたが、本来であれば今頃プレーされているところだった。
もっとも人々を魅了した対決――マルチナ対クリシー、ロジャー対ラファ、ロジャー&ラファ対ノバク、ピート対アンドレ、セレナ対ビーナス、ジョン対ジミー、ジョン&ジミー対ビヨン(姓はあえて言う必要もないだろう)――このすべてが、少なくとも1度はウインブルドン決勝で対決した。
それは偶然の出来事ではない。1870年代に初めて開催されたウインブルドンは最古のグランドスラム大会であり、特別な役割を維持している。
「“ウインブルドン”というその言葉の響き自体が魔法のようね。歴史的なものよ。ほかとは一線を画し、威厳があるわ」と同大会のシングルスで3度チャンピオンに輝いたエバートは語った。「もし勝ちたいグランドスラム大会をひとつ選ぶなら、ほとんどの選手がウインブルドンと言うでしょうね」。
そして各グランドスラム大会が思い出深い瞬間や試合を生み出すとはいえ、オールイングランド・クラブで起こるものにはいつまでも記憶に残る何かがある。
ナブラチロワとエバートが争った5度の決勝、あるいはシュテフィ・グラフ(ドイツ)とナブラチロワがプレーした3年連続の決勝。陽光が消え入りつつある中で第5セット9-7で終わったラファエル・ナダル(スペイン)とロジャー・フェデラー(スイス)の2008年決勝、ビヨン・ボルグ(スウェーデン)とジョン・マッケンロー(アメリカ)が激闘を演じた1980年決勝における18-16のタイブレークなどなど、数え始めたらきりがない。
「本当に多くの緊迫した試合があった」とフェデラーはナダルとの対決の歴史について話した。「そしてそれらは、永遠に僕らを結びつける」。
エバートとナブラチロワ同様、彼らはテニスを離れても繋がっていた。魅惑的なライバル関係のコート上でのカギのひとつは、プレースタイルと個性に違いがあることだろう。
一時代を支配したベストサーブを誇る“ピストル・ピート”と呼ばれたピート・サンプラス(アメリカ)と史上最高のリターン名手と言っても過言ではないアンドレ・アガシ(アメリカ)の関係が、そのいい例だ。そしてサンプラスの内向的な性格と、アガシの洗練された“Image is Everything(イメージがすべてだ)”のキャラクターもくっきりと対照をなしている。
マッケンローのサーブ&ボレーに対するボルグのベースラインでの精密機械のような防御、彼らに対してジミー・コナーズ(アメリカ)はフラットに打つバックハンドリターンで対抗した。大言壮語のコナーズとマッケンローは衝突を引き起こし、ボルグの静かな外見とは対照的だった。
「コート上ではより激しさがあって、各々の選手が自分のファン層というものを持っているの」とエバートはコメントした。
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