2009年男子シングルス4回戦、ナダルのフレンチ・オープン31連勝に終止符【AP Was Thereシリーズ⑤】

 ナダルがバックハンドをサイドに外して次の1本をネットにかけたとき、ソダーリングは2度目のサービスブレークをやってのけて第1セットを取った。それがカギだったとソダーリングなら言うだろう。

「もし1セット取れたら、2セット目も3セット目を取れない理由はないと感じていた」とソダーリングは明かした。彼は実際に6-5とリードし、第2セット奪取まであと2ポイントと迫っている。しかしナダルはそのゲームをキープし、それからソダーリングの6本のアンフォーストエラーにも助けられてタイブレークを危なげなく制した。

 それはソダーリングが心を折られてもおかしくない瞬間だったが、反対に彼は不屈の精神を見せたのである。

「『いいか、僕はナダルに6-7で1セットを落としただけなんだ。でも今日の僕はずっと上だ。僕はただ、彼についていけばいいだけなんだ』ということに気付くにはかなりの冷静さで真剣に考える必要があったろうが、ロビンはまさしくそれをやったのだと思う」とビランデルは解説した。

 高くバウンドするナダルのフォアハンドは、ソダーリングを煩わせていなかった。ソダーリングの深いグラウンドストロークと最高時速225kmというパワフルなサービスは、ベースラインよりかなり後ろにポジションをとっていたナダルを苦しめた。ソダーリングがラブゲームでのサービスキープで第3セットを締めくくったとき、ナダルはそのキャリアで初めてフレンチ・オープンで2セットを失った。

 第4セットのタイブレークが始まったとき、フィリップ・シャトリエ・コートの観客たちは「ロービン!」というコーラスでアンダードッグである挑戦者の名を歌い、他の者たちは「ラーファ!」の声でそれに応えた。のちにナダルは、ソダーリングへの特別なサポートを「悲しいこと」と呼んでいる。

 ソダーリングは6-1とリードを広げたがナダルがフォアハンドのウィナーを決め、彼がフレンチ・オープンで直面した最初のマッチポイントを打ち消した。ふたつ目のマッチポイントでは、ナダルのボレーがサイドラインを割った。それが彼のロラン・ギャロスにおける唯一の敗戦での最後のポイントだった。

フレンチ・オープンで初の敗戦を喫し、コートをあとにするラファエル・ナダル(スペイン)(Getty Images)

「コートに足を踏み入れたとき、我々は勝つことも負けることもあり得るということを知っているんだ」とナダルは声を振り絞った。「長い目で見れば、誰も敗戦のことなど覚えていない。人々は勝利を記憶する。だから僕は、前に進んでいかなければならない」。

 彼は水曜日に23歳になる。彼が誕生日をロラン・ギャロスで祝うことに慣れていたということも、特筆に値するだろう。

 しかし今年はそうならない。試合が終わった75分後、ナダルはいくつかのジムバッグと他の持ち物を入れた白いビニール袋を持ってロッカールームをあとにしていた。彼はさよならのキスをするために大会のプレーヤーサポートデスクに立ち寄り、それから送迎のデスクを通り過ぎて「チャオ、ありがとう」と声をかけた。

 それからナダルは黒いセダンに乗り込み、車は会場の緑の門を通り抜けた。それは彼が予想していたよりも1週間早い退場であり、そして過去数年より1週間早い幕切れだった。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

※トップ写真は2009年フレンチ・オープン4回戦でラファエル・ナダル(スペイン)を倒した瞬間のロビン・ソダーリング(スウェーデン)(Getty Images)

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