ラファの「20」、セレナの「24」――延期されたフレンチ・オープンについて考察

もしフレンチ・オープンが新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックにより9月に延期されることなく従来の予定通り開催されていたのなら、ラファエル・ナダル(スペイン)はロジャー・フェデラー(スイス)の持つ最多記録に並ぶグランドスラム20勝目となるタイトルを目指していたはずだ。

 フェデラーが2月に右膝に受けた関節鏡による手術のために2020年のクレーコートシーズン全体をスキップする予定でいた一方で、ナダルはやる気満々でパリに参上するつもりでいた。彼はロラン・ギャロスで13度目の優勝を成し遂げるため、気持を集中させていたのだ。

「“13”は心を揺さぶるとはいえ、ただの数字に過ぎない。どのグランドスラム大会であれ、13度もプレーすることができるというのはプロにとってかなり目覚ましい成果だよ。キャリアのアップダウンを潜り抜け、13度も優勝するということに至っては…」とジム・クーリエ(アメリカ)は語った。クーリエが過去にグランドスラムで勝ち獲った4つのタイトルの中には、1991年と92年のロラン・ギャロスも含まれている。

「彼はほとんどの期間で“アップ(上向き)”だった。…しかし、彼にも肉体的にベストの状態ではなかった数年があった。これらの体調不全の期間のいくつかで、彼はそれでも歴史的にフィジカル面でもっとも厳しいことで知られる大会で優勝したんだ。彼はずっとそのタイトルを持ち去る男であり、優勝するのにひどく苦労させられるようなことは滅多になかったよ」

 男女のプロテニスツアーはパンデミックにより3月途中から中断しており、少なくとも7月末までこの状態が続くことになっている。大会は本来であれば日曜日に始まり、伝統的にフィリップ・シャトリエ・コートで男子決勝が行われる6月7日に終了するはずだった。

 それはつまり、プレーヤーやファンたちはパリでの15日間の大会が行われていたら何が起きていただろうかということについて、考えたり話したりすることしかできないということだ。

 ここで、もし今週フレンチ・オープンが開催されていたら起こるかもしれなかったストーリーラインのいくつかを見ていこう。

セレナの24度目のグランドスラム・タイトル探求

 セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)はふたたび、史上最多記録を持つマーガレット・コート(オーストラリア)に並ぶ24度目のグランドスラム制覇に挑戦できていたかもしれない。9月に39歳になるセレナは出産を経てのツアー復帰後に4つのグランドスラム大会で決勝に至ったが、そのすべてで敗れていた。彼女はこれまで3度フレンチ・オープンで優勝しているが、2019年は3回戦敗退に終わっていた。彼女の姉でグランドスラムを7度制した実績を持つビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)は6月17に40歳になるため、もし大会が予定通り行われていたら30代最後のグランドスラム大会をパリで迎えていたはずだった。

ジョコビッチのギャップ

 ノバク・ジョコビッチ(セルビア)はここ7つのグランドスラムのうち5大会で優勝し、グランドスラムでの獲得タイトル数が「17」に至ってナダルとフェデラーに迫りつつある。彼はまた2011年同様、パリに無敗で至っていた可能性もあった。ジョコビッチは2020年、ツアーが休止された際に18戦全勝を誇っていたのである。

コリ・ガウフがクレーコートに挑戦

 このフレンチ・オープンは、コリ・ガウフ(アメリカ)の急激な進化の過程での次なる大きなステップとなっていたかもしれない。3月に16歳になったアメリカの新星は、昨年にグラスコートのウインブルドンでやってのけた4回戦への躍動的な疾走に続き、ハードコートのオーストラリアン・オープンでもやはり4回戦に進出していた。

バーティ―のタイトル防衛

 アシュリー・バーティ(オーストラリア)はロラン・ギャロスで、初めてディフェンディング・チャンピオンとしてグランドスラム大会に臨むはずだった。彼女はランキング凍結となった時点で世界ランク1位だった選手でもある。

オーストラリアン・オープン優勝者後、初のグランドスラム大会に臨むケニン

 注目に値する他の女子選手は、オーストラリアン・オープン優勝者のソフィア・ケニン(アメリカ)だろう。彼女はその若いキャリアで初めて、グランドスラム大会優勝経験者として他の四大大会に臨むことになるはずだった。

「彼女は私たち全員とはまったく違った形でプレッシャーを感じるでしょうね」とケニンと頻繁にダブルス組んでいるベサニー・マテック サンズ(アメリカ)はコメントした。「私たちは皆それを見て、『ほら、彼女が次のグランドスラム大会に臨んでプレッシャーを感じるわよ』と言うかもしれない。まあ、私はそんなふうには思わないけど」。

ティームの時代がくるか?

 男子テニス界の永遠であるかに見える大きな話題は、誰が次代のグランドスラム優勝者になるか?ということだ。多くの者が挙げる名は、26歳のドミニク・ティーム(オーストリア)だ。ティームはパリの決勝でナダルに敗れた2018年と19年のフレンチ・オープンを含め、今や3度もグランドスラム大会で準優勝している。

クライシュテルスのカムバック

 このフレンチ・オープンは、かつて四大大会で4度優勝したキム・クライシュテルス(ベルギー)のグランドスラム復帰戦となっていたかもしれないものだった。6月8日に37歳になるクライシュテルスは2月に2度目の復帰を果たし、大会を厳選してプレーすることを予定している。

フィリップ・シャトリエ・コートの開閉式屋根がついに完成

 次にいつ開催されることになろうと、フレンチ・オープンはついにモダンな時代に合流する準備が整った。メインスタジアムであるフィリップ・シャトリエ・コートに、雨のときにコートを覆えるようにするための開閉式屋根を設置したのだ。他のグランドスラム大会はすでにセンターコートに屋根を設置しており、フレンチ・オープンはグランドスラム大会の中で屋根をつけるのがもっとも遅かった。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

※写真は昨年のフレンチ・オープンの男子シングルス表彰式の様子(Getty Images)

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