ティームがレキップ紙のインタビューで「助ける人は自分で選びたい」と真意を説明

母国オーストリアのクレーコートで3週間も前に練習を再開した世界ランク3位のドミニク・ティーム(オーストリア)が火曜日にフランスの『レキップ』紙のインタビューに答え、このところ世間を騒がせている話題に対する自らの立場を説明した。

 ことの発端は、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を受けたランキング下位の選手を経済的に助けるためにランキングの高い選手が寄付をするというジョコビッチが提案した基金について、ティームが反対意見を述べたという報道だった。これを受けて女子選手のイネス・イブー(アルジェリア)がSNSを通してティームに向けたビデオによる公開レターを送り、騒動が勃発した。

 母国オーストリアのメディアに対して受けたインタビューの中でティームが言ったとされる「ランキングの低い選手たちは生き残るために全力で戦っていない。年間を通し、僕はテニスに何も与えていない多くの選手を目にしている。彼らの多くは、あまりプロフェッショナルではない。なぜ僕が彼らにお金を与えなければいけないのかわからない」という発言を受け、世界620位で21歳のイブーは名指しでティームに宛てたメッセージの中で彼に反論した。

 彼女は貧しい家の出の選手が多くの障害にも関わらず夢を追いかける難しさと、それを乗り越えるための自分の奮闘をせつせつと語った。

 イブーは自分の母国アルジェリア(北アフリカ)のような国出身の女性がハイレベルのアスリートとなることの難しさ、一緒に旅するコーチもおらずひとりですべてを行う孤独感、大会参加に向けてまずはビザを取って安い航空券を探すことから始まることなどを延々と説明した。そして彼女は欧州外の貧しい家庭の出の低いランキングのプレーヤーの生活がいかに大変か、それでも精一杯頑張り続けていることを訴えた。

 当然ながらこのメッセージへの反響は大きく、ティームは世論からも批判を受けることになった。ティームは5月19日のレキップ紙のインタビューの中で、まず誰も自分がオーストリアのメディアに対して受けたインタビュー全体読んではおらず、抜粋された問題の部分にのみ反応していると指摘した。その上で彼は、ランキングの低いプレーヤーの皆が努力していないと言った訳ではないと弁明した。全力を尽くしているし援助を受けるに値する者ももちろんいるだろうと前置きした上で、自分の論点は「誰に寄付するかは自分で決めたい」ということなのだと話した。

「そもそもテニスをプレーして子供時代にずっと練習に打ち込めるだけでも、それはかなり恵まれた状況なんだ。でも世の中には、テニスプレーヤーよりも援助を必要としている人々や団体がある」とティームは主張した。

 あなたの意見に傷ついた者もいるのではと問われると、ティームは「前述の通り、もちろん援助を受けるに値する選手もいるだろう。でも自分は援助する相手を自分で選ぶことを望んでおり、誰かに寄付を強いられたくない」と答えた。

「僕はすでに自国のジュニアを助けるために寄付しているが、公の場でそのことについて一度も話したことはない。何故ならそれは、僕がそれを自分のイメージをよくするためにやっている訳ではないからだ。僕がそういう行為をするのは、彼らは援助に値し、僕自身が彼らを助けたいと思うからだ」

 また、「プロらしくない選手を多く見た」という発言については、「成功したければ100%の努力をつぎ込まなければならない。僕は若い頃に2年半ほどフューチャーズ大会に出ていたが、その際にプロらしく振舞っていない選手たちをこの目で見た。繰り返すが、皆がそうだということじゃない。あくまで一部の選手たちだ。だからこそ、誰を助けるかについて自分で選んだほうがいいと思うんだよ」と説明した。(テニスマガジン)

※写真はオーストラリアン・オープンでのドミニク・ティーム(オーストリア)(Getty Images)

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