ロジャー・フェデラーが緊急来日「有名人になることも素敵だけど、素敵であることのほうがもっと大事だ」(2017年10月)
2017年10月4日(水)、ロジャー・フェデラーが11年ぶりに来日した。7日(土)に全世界で発売された『ナイキ コート ズーム ヴェイパー RF × エア ジョーダン 3 アトモス』が、5日(木)にSports Lab by atmos Shinjukuにて世界先行発売されたことに合わせ、都内でトークイベントを行った。そこで語った内容を、テーマに分けてお伝えする。(※原文ママ、以下同)【2017年12月号掲載記事】
取材◎編集部 写真◎BBM、ゲッティイメージズ 協力◎株式会社ナイキジャパン
11年ぶりの日本
11年は長すぎたよ。長すぎて気分が悪いくらいだ(笑)! 日本は楽しいことばかりで、11年も来なかったのは、本当にもったいなかった。実は2006年に東京(ジャパンオープン)で優勝した翌年、連覇を狙うために来る予定だったんだ。でも2007年シーズンがあまりにしんどかったから取りやめたんだ。その後は、ご存じの通り、子供が4人もできたから、家族との時間を大事にしたかった。今回、11年ぶりに戻って来られたことは、本当にうれしい。次回は、11年も経たないうちに戻って来ることを約束するよ。
モティベーションになる東京五輪
日本に来ることになったら、妻は大喜びだと思う。でも、スケジュールが厳しくて……。上海マスターズは僕にとってとても重要な大会なんだ。あのスタジアムのこけら落としにも関わったからね。アジアツアーを周るのは自分にとって厳しいかなと思う。でも、3年後にはオリンピックが東京にやってくるよね? 出場すると約束はできないけど、戻って来るのに大きなモティベーションになることは確かだ。でも、将来は旅行で来られたらと思っている。日本は本当に興味をそそられる国だ。まあ、僕が言わなくても、みんなのほうが日本の素晴らしさをよく知っているだろうけどね。
到着した日はランチに寿司、夕飯にしゃぶしゃぶを食べたんだ。そのあと生まれて初めてカラオケに行ったよ。僕の歌はもう最悪だった! でも、下手なほうが面白いよね? とても楽しい夜だったよ。
大好きな90年代
エアージョーダンが発売されたのは4歳のとき。90年代はまだ親に買ってもらっていたから、エアジョーダンを履いていなかった。スケートボードが流行っていた時代で、スケートボードブランドのシューズもすごく流行っていたよね。それが最近また復活しているのは面白い。90年代の音楽も大好きで、ちょっと変わった音楽だったけど、それを聞くのが好きなんだ。その頃のテニス界では、アンドレ・アガシ、少し前はジョン・マッケンローが活躍したのもすごく記憶に残っている。
小さい頃はスニーカーを集めてはいなかった。でも、テニスやほかのスポーツに多くの時間を費やして、毎日シューズを履きつぶしていたから、数週間で新しいものに交換していたんじゃないかと思う。当時、自分で買うお金は全然持ってなかったよ。
マイケル・ジョーダン
僕は熱狂的なバスケットボールファンでNBAを見るのが大好きだった。今でこそスイスも優秀な選手を輩出しているけど、以前は力のある選手がいなかった。スイス人はもう少し身長が高くないと、NBAで活躍するのは難しいと思う。毎週日曜日にNBAのハイライト番組を見たものさ。シカゴ・ブルズのマイケル・ジョーダン、スコッティ・ピッペンの大ファンだったんだ。その最大のライバルだったオーランド・マジックにはシャキール・オニール、ペニー(アンファニー・ハーダウェイ)がいたね。マイケルのプレーは完璧だった。テニス以外では彼が僕のヒーローだったんだ。
彼はスポーツ選手として僕のヒーローだった。彼に初めて会えたのは2014年だと思う。初代のAJ3ヴェイパーのコラボレーションシューズをつくったときだと思う。それ以前にマイアミで彼と食事をするチャンスをもらえそうだったけど、そのときは彼が直前に予定を変更して会えなくなった。
マイケルとの間にティンカー・ハットフィールドがいて、彼が僕のヴェイパー、それからエアジョーダンシリーズをデザインしてくれた人物だった。エアジョーダンは全部で20種類くらいかな? 彼が僕とマイケルをつなげてくれた人物だと言えるね。コラボレーションの話をマイケルにして、了承を得てくれたんだ。その頃、マイケルはまだそれほどコラボレーション商品を出していなかったんだ。
ナイキ コート ズーム ヴェイパー RF X
エア ジョーダン 3 アトモス
今回のシューズは4者によるすごいコラボレーションなんだ。アトモスは日本で多くの世代に大きな影響を与え続けている。いまは30件以上も店舗を持っているんじゃないかな。僕のシューズに綺麗なジェイド色(ターコイズ)を入れてくれた。マイケルも今回のコラボに同意してくれて、ナイキがすべてを動かしてくれた。マイケルとのシリーズはこれで4足目になる。今年のUSオープンでは、今回のと色違いになるファイヤーレッドとホワイトのシューズを履いたんだ。今回発表したものは、上海で履くよ。履いて負けるわけにはいかないからプレッシャーになるね。でも、プレッシャーは勝つためには必要なものだから、僕はよいものだと捉えている。
人生を楽しむコツ
日本のファンに、人生を楽しむコツを聞かれるとは思わなかった。フォアハンドの打ち方のような簡単な質問かなと予想していた。僕のこれまでの人生において、ポジティブな姿勢が大きな助けになったと思う。それから、日本でもそうだと思うけど、スイスでも謙虚に生きることが美徳とされている。スイスの小さな村で育ち、両親も自分もこれほど大きな成功を手にするなど夢にも思わなかった。いつか、こんな言葉を耳にしたんだ。
It’s nice to be important but it’s more important to be nice.
「有名人になることも素敵だけど、素敵であることのほうがもっと大事だ」
これを忘れないようにしている。ロジャー・フェデラーとしてこちら側にいるのもいいけど、皆さんの側にいることも好きなんだ。どちら側も同じく重要で、どれほど重要な人物になろうと関係ない。大事なのは、自分のベストを尽くし、自分のしていることを楽しみ、情熱をもって取り組めば大きな成功を収められると思う。これは誰にでも言えることさ。
三重野龍氏がデザインしたバナー
あのデザインは素晴らしい。このイベントが終わったあと、このバナーをどうするのかな?と思っていたところだ。処分するなら、もらえないかな? 日本語(カタカナ)で書かれたものはすごく気に入ったよ。ボールとのバランスが素晴らしい。
アートと言えば、僕の生まれ故郷のバーゼルは世界的にも大きなアートのイベントが行われる場所だ。そして僕ら夫妻もアートが好きで、よくギャラリーへ鑑賞に行くよ。ダミアン・ハーストと村上隆さんの作品は持っているよ。
新宿
クレイジーな状況だった。通りは人で一杯になっていて、人の列が見えなくなるまで続いていた。彼らがシューズの発売を喜んでくれてうれしいよ。このイベントはサプライズであまりみんなに知られていないと思っていた。最初の10人に会ったら、彼らは3、4時間も待ってくれていたという。「最後の人はどのくらい待ったのだろうか? みんなシューズを手に入れられるのだろうか?」と心配になったよ。みんなに手に入れてほしいけど、とてつもなくたくさんの人が並んでくれているのが見えたから。
シューズの第一印象
このシューズをひと言で表すと「リンク」かな。このシューズはストリートとテニスとバスケットボールを結びつける、つまりリンクしてくれるからさ。テニスはストリートファッションでもポピュラーな存在だ。80年代から、現在もファッションとしてテニスシューズを履く人はたくさんいるからね。でも、その後テニスシューズはどんどん進化していった。今はアグレッシブで派手なデザインが多いから、ストリートで履くには少し派手すぎるかもしれない。でも、今回のこの色なら、ストリートで履いてもまったく違和感はないだろう。
妻と訪れたい場所
世界は広いからまずは、日本から行こう。まずは東京をじっくり見て周りたい。ここは見るべきものがたくさんあるすごい場所だから。今日は車で移動してきたけど、全然違う風景に驚いている。あと、ぜひ京都に行ってみたい。ローマや中国のように古い歴史のある街で、とても見どころがたくさんあるはずさ。
世界に目を向けるなら、母親が南アフリカ出身なので、アフリカ大陸もぜひ行ってみたい。そして将来は、あまり飛行機には乗らず、車に乗って世界を見てみたいな。飛行機は速くて便利だけど、道を走ったほうが現地の人と知り合えるし、問題も起こるだろうけど、それとバトルして乗り越えていくのがすごくやりがいがあると思う。空港でもいつも問題、バトルはあるけど、それはまた別のもの。それから、過去にツアーで周った都市をじっくり見たい。いつかは仕事で行くのではなく、その街がどんなものなのか知りたいんだ。行きたい場所は山ほどあるよ。
僕のおすすめはもちろんスイスだよ。美しい湖、山、川、森、冬と夏は本当に美しい場所なんだ。スイスで生まれ育ったことは本当に幸運だと思う。
KEIと日本の皆様へ
今回の滞在もあまりに短すぎたけど、素晴らしい時間を過ごせた。TVのインタビューなどで日本の方に会うことがあるけど、彼らはとてもフレンドリーで、日本のファンからのメッセージを伝えてくれる。それを聞くのが本当に楽しみなんだ。また、この素晴らしい国には錦織圭という偉大な選手がいる。彼が早く回復して、以前より強くなってツアーに戻って来てくれることを祈っているよ。
僕の今後の予定は、上海マスターズのあとに、昔ボールボーイを2年間務めたバーゼルの大会に出る予定だ。そのあとはパリのインドア、ロンドンのツアーファイナル。ゆっくりバケーションを楽しんでから、オーストラリアン・オープンのための準備に入る。できるだけ早くまた日本に戻って来たいなと思っている。みなさん、お元気で。アリガトウ!
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