96年ぶりの快挙! 錦織圭が3位決定戦でナダルを下し、銅メダル獲得 [2016リオ五輪]

準々決勝/8月12日|ファイナルタイブレークの奇跡

 最後までどちらが勝つかわからなかった。それでもファイナルセットのタイブレークで錦織が3-6まで追い込まれたときは、さすがにガエル・モンフィス(フランス)の勝利は確定したかのように思われた。だが、ここから5ポイントを連取し、8-6で勝利を飾ったのはモンフィスではなく錦織だった。

「もう何も失うものはないと、開き直ることができました。タイブレークの序盤は少し集中力が欠けていたのかもしれない。でも、そこからよりアグレッシブに戦おうと思えた」

 大きかったのは5-6からのモンフィスのダブルフォールトだ。これで6-6になり、流れがガラリと変わった。試合後のモンフィスは「勝つためにすべてを試みたが、自分自身を責めることはできない」と口を開くのがやっと。とてつもなく大きな勝利――2時間53分の死闘を制し、錦織が準決勝へ駒を進めた。

モンフィスとの準々決勝は崖っぷちからの逆転勝利。最後は凄まじい集中力を見せた

準決勝/8月13日|世界2位に完敗

 第4シードを守ってベスト4に入った。しかし、まだメダルが確定したわけではない。それでもこの日、アンディ・マレー(イギリス)に勝つことができれば銀メダル以上が決まる。日本中の期待と注目が集まったが、マレーはあまりに強く、そしてうまかった。

 両セットとともに先にブレークを許し、試合の主導権を握れなかった。ストローク戦は互角だった。角度のついたフォアのクロスが決まる。ただ、マレーのサービスに手を焼き、ブレークポイントを一度もつかめなかった。メダルの重圧に押し潰されたわけではない。ウインブルドン王者の実力、特にサービス力の差をまざまざと見せつけられた。

「今日はミスが多すぎた。マレーの安定したテニスに太刀打ちができなかった」

 ツアーでの準決勝ならこれで終わりだが、五輪は違う。メダルをかけた最後の大一番をナダルと争う。

3位決定戦/8月14日|苦難の末の甘美な瞬間

 ついに歴史が動いた。3位決定戦でラファエル・ナダル(スペイン)をフルセットの末に下し、日本勢96年ぶりとなるメダル獲得。錦織が日本テニスにとって大きな勝利をものにした。

ナダル(右)とは過去1勝9敗。2度目の勝利だった

 序盤から強力なストロークでナダルを圧倒し、着々とポイントを重ねた。第1セットを6-2で奪うと、第2セットも2ブレークアップの5-2とリードを広げ、銅メダルは目前だった。だが、ここからが錦織にとって長く苦しい時間の始まりとなった。メダルの重みがのしかかって4ゲームを立て続けに失い、まさかの逆転を許す。タイブレークは息を吹き返したナダルに奪われ、たちまちセットオールとなった。

「(気持ちが)落ちかけた。でもいつもファイナルで粘って勝てているので、2セット目のことは忘れて、最後は気力を振り絞った」

 ファイナルセットは2-1からの第4ゲームでブレークに成功。追いすがるナダルを振りきり、至福の瞬間を迎えた。

「メダルにかける想いがあった。昨日、マレーに負けましたけど、気持ちをしっかりと切り替えて、今日は銅メダルを目指しました」

 3度目の五輪を振り返り、「心地よく、楽しかった」と笑った。96年ぶりの快挙。やはり、この男は頼りになる。

ナダルとの激闘を終え、日の丸とともに安堵の表情の錦織。北京、ロンドンに続く3度目の五輪は「メダルを狙える位置にいると思う」という言葉を証明してみせた

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