福井烈の本音でトーク_第16回ゲストは平尾誠二さん(ラグビー日本代表監督)

日本のプレーヤーで一番足りないものはゲームの本質の理解力(平尾)

フォーム重視のスポーツ界も量より質へ(福井)

福井 それで、平尾さんは神戸製鋼というチームで、今はゼネラルマネージャーという立場にいますが、神戸製鋼は練習の質と量のバランスがすごくいいと聞いています。そこには、もちろん平尾さんの考えもあるんでしょうが、その辺のやり方を導入するときの周りとの葛藤なんかはありませんでしたか?

平尾 競技によってはね、僕らの言っていることが適さないところもあるんです。テニスはどうかな? 野球もどうかわからない。僕ね、スポーツ指導の基本的な考え方の元々は野球にあったと思うんです。例えば最近でこそ野球もフォーメーションって言葉を使いますけど、その前の段階では、フォーム、要するにいい型を修得することが基本だったと思うんです。ボールを取る姿勢とか、投球フォームとか。それを重視するために反復練習をする。例えばテニスなら、どういう状況のボールもそのフォームでうまく打てるように素振りをするとかね。それは回数をこなさないと身につかないことで、そうすると、それにすごい時間をかけてしまったりするわけです。

福井 これまでのスポーツ界はそういうやり方できましたよね。

平尾 でも僕は、フォームより、フォーメーションっていうところをかなり意識したんです。フォーメーションって要するに、配置ですから。配置は、練習量ってさほどいらないんですよ。練習の現場に出るより前に、グラウンド外でどう配置するかを、時間をかけて考える。でもグラウンドに出たら、配置に時間はかけない。そうすると練習時間っていうのが短くなるんです。 

福井 それでフォームからフォーメーションへ?

平尾 僕なんか完全に思考が変わってました。そういう年代なんです。ところが日本の場合、グラウンド外で時間をかけなくて、グラウンド内でなにしましょうとなるから、また長くなるんですね(笑)。非常に古典的な練習の体系があったと思います。

福井 今は、質そのものがすごくアップしているようですね。

平尾 そうですね。それとね、ゲームをどうとらえるかっていうことやと思うんです。日本のプレーヤーで一番足りないところは、そういう判断力もあるけど、ゲームの本質は何かっていう理解力が極めて低い。でも、これが理解できれば、練習法って自ずと出来上がってくるんです。ところが日本の場合は練習の中身がどうと言うより、俺らの伝統はこれだ!とか。そういったものを優先するときがある。だから全然、能率が上がらない。

福井 そうですね。

平尾平尾 ゲームっていうのは、僕らみたいに時間でやってる競技は、40分+40分=80分終えたときにどう終わっているかなんです。1点でもリードしていれば勝ちなんですよ。ゲームの初めからずーっと勝ち続けなあかんってことはないんです。これがゲームの本質。これが意外に理解できてないヤツが多いんです。そうすると練習時間が2時間を越えたら意味がないっていうのが僕の考えで、もちろん、初めてパスを回すような子は別の話で、それはもちろん時間がいります。でもチームとしてフォーメーションを考えるときは、ゲームをするため練習しているわけで、一番いいパフォーマンスができるような練習をせんといかんわけです。そうすると3時間の練習をしてるとね、3時間の力配分をするんですよ、これが。

福井 ああ~、わかりますね~(笑)。

平尾 ね、配分するから。それが体に染み付くんですよ。そうすると1時間半で出しきる練習をすれば、1時間半で出しきるペース配分を体が覚えるでしょ。それが大事なんです。それを覚えたら、今度は1時間半でおつりを出せばいいわけです。

福井 なるほど。いやあ、それは非常にわかりやすいです。確かにそうですよね。

平尾 これがわかると練習の本質も変わってくると思うんです。僕はそういうふうに思ってるんだけど、日本のスポーツ界って、まだ、量やれば何とかなる的な発想がありますから。

福井 そうそう。どのスポーツに聞いてもそうですね。テニスもまだそういうのあります。

平尾 そこはね、ひとつの日本の文化ですね(笑)。感覚的なものをもう少し認めてやって、育てる作業をしないと…。ただ感覚となると目に見えないでしょ。そうすると日本人は目に見えないものにお金出さない。投資しない(笑)。でも、この感覚を持っているヤツが一番確かやと僕は思ってやってるんです。その評価されにくい部分を、これからね、新しい世代の指導者たちと、どうブレークスルーしようか、っていうところなんですよ。

対談を終えて

 私の中でラグビーは、とてもインテリジェンスを感じるスポーツです。しかし残念ながら私は、ラグビーについてあまり詳しくありません。私がラガーマンであったら、平尾さんのお話でもっともっとそのイマジネーションの妙を楽しめたのではないかと、少しもったいないような気がします。

 先の先を見据え、外国の真似、人の真似はせず、今まで誰もやったことのないラグビーを完成させたいと語る彼のビジョンとみなぎる自信は、現役の頃の華麗なプレーの形容でもあった平尾マジックそのものでした。

 テニス界にも彼のようなカリスマ性のあるマジシャンが、今こそ必要なのですが…。 福井 烈

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