エレナ・ゲンチッチの体験から「ジュニアを指導する上で大切なこと」
大切なのはプログラム
ジュニア時代の10、12、14歳と各年代で何を重点的に行なうべきかという質問をよく受けますが、それよりも重要なのは、しっかりとしたプログラムを作り、その内容を吟味することです。週に何日、何時間、どういう練習を行なうのか。それはどんな内容で、何のために取り組むのか。短期的、長期的にわたって明確なプログラムを作り上げることが必要であり、重要なのです。
それはプロの世界でも同じです。トニー・ローチはロジャー・フェデラーのコーチを長く務めていました。トニーはフェデラーに対して素晴らしいプログラムを与え続けていました。フェデラーには現在、そして将来的には何が必要か、そのためにはどうすべきか、そういうことを分析し、明確にしていました。そうしてフェデラーはレベルアップしていったのです。ですから「彼から学ぶことはもうなくなった」と言って、フェデラーがトニーと別れたのは非常に残念なことでした。女王だったアナ・イバノビッチにも同じようなことがありました。
少し話が逸れましたが、この年代まで、これを教えてはいけないという決まりなどありません。まだ小さいからといって基本だけでいい、戦術を教えないという指導法は間違っていると思います。10歳でも基本ができていれば戦術を教えていった方がいいと思います。その方が大人になってからイメージがわくようになるからです。戦術というと難しいように聞こえるかもしれませんが、簡単なことです。相手を左右いっぱいに動かして、空いたところに打つ――それが戦術です。
同じような話で、例えば身長が低いから、将来的に伸びそうにないからといってストロークだけを徹底的に磨くべきでしょうか? 武器にするのは構いませんが、サービスやネットプレーを疎かにしてはいけません。私はすべてのショットをジュニアたちに練習させてきました。ジョコビッチもそうです。例えばボレーなど、試合で使わないことの方が多いかもしれません。でもそれをマスターすることは絶対にマイナスにはなりません。自分の引き出しを増やすことは、とても重要なことです。そこに年齢は関係ないのです。
才能とは何か?
私はよく練習の途中で、ジュニアたちに「あとボールはカゴの中に何球残っているか?」と聞いたものです。集中しているジュニアはしっかりと答えることができます。何も考えていないジュニアは当然わからず、私はよく怒りました。
練習で大切なのは集中力です。例えば、一人10球が必要なドリルのときに8球で球出しが終わったとしたら、「もう2球足りません!」とコーチに言わなければなりません。8球でさっさと交代してしまうようでは集中しているとは言えないのです。それは、やらされている練習です。
この集中力は、才能を見極める上でも大切なことです。よくジュニアたちのどこを見て才能があるとか、素質があるとか、見極めるのかという質問を受けますが、まさにこういう部分を見るのです。しっかりと目と目を合わせてコンタクトできるか。これも重要な要素です。やる気のある人間の目は輝いているものです。
ボール拾いは、そのための第一段階かもしれません。やる気があるジュニアは黙々と拾います。2、3球拾っただけでさぼったり、「お母さん、手伝って」と助けを求めるようなジュニアではトップにはなれないと考えます。テクニックはもちろん、ジョコビッチはこうした点もすべてクリアしていました。だから世界のトップになれると思ったのです。
昨年末にジョコビッチに会いました。これからのジョコビッチですが、ストロークはより前になり、スピンからフラット系のボールが多くなるでしょう。ポイントを短く終わらせるために、それは絶対に必要なことです。サーブ&ボレーも勧めておきましたが、「サービスを打ってすぐに爆弾エリアになど行きたくない」と笑っていました。それくらい怖いのでしょう。でも、私はもっとネットプレーもトライするべきだと言いました。ジュニアの頃のように、短いボールが来たらどんどんネットへ出てボレーで決めるようにしてほしいと伝えました。年始のエキシビション(アブダビ、優勝)でのプレーを見ましたが、いいテニスができていたと思います。今年もきっとやってくれるでしょう。
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