ジョコビッチとゲンチッチの出会い〜「17歳の頃には世界のトップ5になれるでしょう」
ノバク・ジョコビッチ(セルビア)は断言する。「僕のテニスの基礎はエレナ・ゲンチッチによってつくり上げられたものだ」----その名コーチが来日し、日本のコーチたちに対しレッスン&ディスカッションを行った。ここではジョコビッチとゲンチッチの出会い、ジョコビッチの子供時代を紹介しよう。【2012年4月号掲載記事】
写真◎井出秀人、Getty Images
ジョコビッチを育て上げた名コーチが来日! エレナ・ゲンチッチが登場
Elena Gencic◎1936年生まれ。セルビア国立大学ベオグラード大学歴史学科卒業後、ふたたび同大学にて哲学を専攻し、計8年間大学で学び卒業。1970年フェドカップにユーゴスラビア代表として出場。フレンチ・オープン、ウインブルドン、USオープンにも出場した。ユーゴスラビアのフェドカップチームコーチの経験がある。モニカ・セレス、ゴーラン・イバニセビッチ、そしてノバク・ジョコビッチのジュニア時代を指導した
テニスが大好きな子供
ゲンチッチがジョコビッチと初めて会ったのは、ジョコビッチがまだ5歳半のときだ った。
ゲンチッチがジョコビッチの自宅近くのテニスコートでサマーキャンプを開いたのだ。テニスが好きだったジョコビッチは、それを見に行った。
「フェンスのところに手をついて、じっと私たちがしている練習を見ていた。すると私がコートを移動するたびに、ジョコビッチも移動してきた」
そのことに気づいたゲンチッチは、午前の練習が終わったとき、ジョコビッチの近くに駆け寄って話しかけた。
「君の名前は何と言うの?」
「ノバク・ジョコビッチです」
大きな声だった。話しかけられるのを待 っているようだった。ゲンチッチはいろいろと聞いてみた。どこにでも見られるような大人と子供の会話だった。
「いくつ?」
「どこから来たの?」
「一人で来たの?」
「テニスは好きなの?」
ジョコビッチは、ひとつひとつの質問にハキハキと答えた。
ゲンチッチは「午後の練習は14時からスタートする予定。もしよかったら、あなたもいらっしゃい」と伝えてランチに入った。
13時半ごろだった。ゲンチッチがふとテニスコートに目をやると、ジョコビッチが自分よりも大きなテニスバッグを抱えて、テニスコートの前で待っていた。ゲンチッチは近寄って「練習は14時からと言ったはずだけど」と伝えた。するとジョコビッチはこう言ったという。
「僕はいつも早く来て準備するんだ。だから、ここで待っているよ」
ゲンチッチは苦笑した。面白い子だと思った。
2人の絆
午後の練習が始まると、とりあえず、ゲンチッチは一番下のレベルのグループにジョコビッチを入れてみた。そのうまさに驚くのに時間はかからなかった。とても5歳半とは思えない。
「この子は違うとすぐにわかった。でもそれは私だけの特別な思いかもしれない。他のコーチを呼び寄せて、どう思うか聞いてみた。みんなも私の意見と同じでした」
そのとき、ゲンチッチが驚いたのはテニスだけではない。
「練習の合間に子供たちを集めてアドバイスするのですが、ほとんどの子供は落ち着かないで周囲をキョロキョロしながら聞くものです。でもジョコビッチは違いました。じっと私の目を見て、私のアドバイスを興味深く聞いていました」
ジョコビッチの両親は自宅でピザの商売をしていた。練習後、ゲンチッチはジョコビ ッチに言った。
「今度の練習にもいらっしゃい。そのときは両親も一緒に」
次の練習に約束通り、ジョコビッチは両親を連れてきた。ゲンチッチは笑顔で迎え、伝えたかったことを告げた。
「この子は、すごく才能があると思います。 17歳の頃には世界のトップ5になれるでし ょう」
今度は両親が驚く番だった。それからジ ョコビッチは、ゲンチッチの下で学んだ。テニスの基礎を教わった。ジョコビッチは12歳でドイツへのテニス留学を決意し、やがて世界のトッププレーヤーへの階段を駆け上がっていった。ゲンチッチの眼は確かだ った。
「僕のテニスの基礎は、エレナ・ゲンチッチによって作られたものだ」と今もジョコビッチは言う。元プロスキー選手であるジョコビッチの父親も「今のノバクがあるのはエレナのおかげであり、ノバクは彼女のことを決して忘れてはいけません」と語る。
昨年、ウインブルドンで優勝したジョコビッチは、そのトロフィーを持参してゲンチ ッチに会いにいった(その様子はユーチュ ーブで見ることができる)。2人の絆は初めて会ったあの日以来、今もしっかりとつなが っている。
※トップ写真は2005年オーストラリアン・オープン、当時ジョコビッチは17歳(Getty Images)
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