もっともタイブレークに強いのは「錦織圭」だ!
2018年12月号巻頭技術特集のテーマは「タイブレーク」。PART1からPART4までの企画のうち、PART4は、もっともタイブレークに強い選手として「錦織圭」を紹介。2018年の錦織は10月の上海マスターズまで、タイブレーク15勝4敗という素晴らしい成績を残した。そのすべてのタイブレークのデータを紹介。そして本人がタイブレークについてどのように考えているかコメントをもらった。(構成◎ポール・ファイン、編集部)【2018年12月号掲載記事】
2018年もっともタイブレークに強いのは誰?
※ATPツアーが発表している過去52週のタイブレーク取得率↓↓↓
世界男子1位 錦織 圭 タイブレーク取得率82.4%
2018年のケイは10月の上海マスターズまでに、タイブレークで15勝4敗という素晴らしい成績を残している。そのうち4つの負けはケビン・アンダーソン(最終セット)、マリン・チリッチ(第2セット)、グリゴール・ディミトロフ(第1セット)、そしてロジャー・フェデラー(最終セット)で、トップ選手が相手。
まったくの余談だが、私(ポール)もアメリカでテニスをプレーしていて、オープン大会でのタイブレーク勝率は48勝32敗で60%。上位選手に対しては2勝2敗の50%。スーパーシニア(年齢が高い者同士)では8勝2敗の80%。
つまり何が言いたいかというと、すべてのタイブレークは同等ではないということだ。タイブレークのスタッツを見るときは、
①重要度が高い大会がある。グランドスラム、オリンピック、デビスカップなど
②トップ選手(上位選手)に対する勝率のほうがより重要である
③試合の後半のほうが重要度が増す
④最終セットでもっとも重要度が高まる
ということを合わせて見るべきなのだ。ケイの15勝4敗、勝率79%(2018年)という数字も、そのまま鵜呑みにしてはいけない。それぞれの試合状況は異なり、大会の重要度も異なる。より重要度の高い大会で、よりレベルの高い相手と対戦したときの勝率が重要だ。そういう視点でケイの全成績を見てほしい。それがタイブレークを観るときの楽しみになり、プレーするときの参考になるはずだ。
本人に聞いた!
楽天ジャパンオープン準決勝でガスケに7-6(2) 6-1で勝利した錦織。タイブレーク10連勝となり、なぜタイブレークに強いのか? と本人に聞いてみた。
Q 錦織選手、タイブレークに強い理由を教えてください。
A 「しっかり集中し直す」「なあなあにしていいポイントはひとつもない」「強気にプレーする」「(つなぐだけではなく仕掛けるの意味)」
う~んと…あんまり言いたくないですね(笑)。
また、しっかり集中し直すというところかな。
なあなあにしていいポイントというのがひとつもないという部分で、かなり集中して、どのポイントも戦えているのと、あとは強気に、タイブレークだからこそ、強気にプレーしているっていうのがあるかなと思います。
今日もちょっと前に出てみたり、つないでいるだけでは、簡単に勝てる相手ではなかったですし、まあそういう相手はなかなかいないですけど。なるべく強い気持ちを持って戦うようにはしています。
※編集部補足:プロは答えをすべて口にはしません……
錦織圭の2018年タイブレーク全成績 ※10月2週目まで
※編集部補足:勝利の法則として、序盤にリードするケースが多いことがよくわかります……
メモ: 第1セット序盤で先にブレークしたケイだが、無名のコプファーが粘りに粘り、すぐにブレークバックして、その後タイブレークへ。ケイはケガから復帰したばかりのテニス。相手のランキングは295位。
メモ: アンダーソンというハイレベルな相手に対し、最終セットのタイブレークを落として敗れたケイ。これはATP250準決勝の第3セットのタイブレーク。すべての大会の、すべてのタイブレークが同じ重要度とは言えないが、しかし、当然ながら最終セットのタイブレークはもっとも大きな意味を持つ。
メモ: 第1セットのタイブレークに勝利したケイだが、試合には敗れた。前週のアンダーソンに続きハイレベルな相手、シャポバロフは強烈なショットメーカーではあるが、ケイに比べてバックハンドはかなり弱く、経験でもケイが圧倒的に優位
メモ: 第1セットの第7、第8ゲームでセットポイントを握られたが、ケイは非常に厳しい内容ながら追いつき、さらにタイブレークをものにした。だが、この次にフアン マルティン・デル ポトロに敗れたように、まだ本調子とは程遠い状態だった。
メモ: 第2セット5-4のマッチポイントを決められずタイブレークへ入ると、チリッチに引き離された。しかし最後は、タイブレークには負けたがケイが勝利。ケイが本来の調子を取り戻した重要な試合に見えた。
メモ: 両者サービスキープでタイブレーク。ロペスはクレーが苦手なスペイン選手で、長いラリー、バックハンドが弱い。
メモ: ワンブレークアップの5-4でサービスを落とし、タイブレークをプレーすることになったケイ。最後の4ポイントをディミトロフが連取して落としてしまう。だがケイは、ストロークの質でディミトロフを上回っており、この試合に勝利した。ディミトロフはハードに比べてクレーが苦手、ここでは特にバックハンドが弱い。
メモ: 無名のジャンビエとの第1セットがタイブレークに。しかしケイは1ポイントも与えなかった。すべてのタイブレークがもちろん重要ではあるが、5セットマッチの、しかも第1セットでそれを落としたとしても、それほど落胆する必要はない
メモ: 無名のバッキンガーに対し、第2セットは、ケイが先にブレークしては戻され、ブレークしては戻されてのタイブレーク。バッキンガーにとって、このタイブレークは落とせば負けで、重要度が高く、プレッシャーが重くのしかかった内容だった。
メモ: 1、2回戦は、5セットマッチにおいて極めて重要な第3セットのタイブレークに勝利したケイ。3回戦は、予想がつかない、いつも危険なキリオスに対し、ケイは、メンタル面でキリオスより圧倒的に強いので当然の結果となった。4回戦のグルビスもキリオスのように予想しづらく危険な相手だが、ケイは第2、第3セットのタイブレークを取った。これは驚きではない。気になるのは、3セットマッチの第2セット、5セットマッチの第3セット、つまり真ん中のセットのタイブレークに勝つことは、試合の勝率にどのように影響するのかということだ。また、タイブレークを2つ落としたときの試合の勝率も気になるところだ。
メモ: 成長著しいシャポバロフとの第1セットは、6-5で錦織にセットポイントがあったが奪えずタイブレークへ。ケイは展開が早く、シャポバロフはついていけずに7-1と突き放された。この内容はケイの調子が戻ってきた証拠に見えた。
メモ: 今年ここまでのところ、ケイが勝った、もっとも重要なタイブレークがこれ。内容も一番素晴らしい。セットを取られて、取り返しての第3セット、第1ゲームでケイがブレーク、第8ゲームでチリッチがブレークバックしてタイブレークへ。ケイが驚くほどの気合を見せて臨み、真骨頂のレシーブ力でチリッチのサービスを崩した。5セットマッチの中の大事な第3セットを取った。
メモ: 両者サービスキープでタイブレークへ。ゴヨブチックのサービスエースでプレーが始まったが、そこで錦織は一旦、間を取り、ヘッドバンドを結び直し、集中し直す。この時点で両者の獲得ポイントは41対41だった。気を引き締め、キャリア最高のプレーを見せているベテランを倒した
メモ: 両者サービスキープでタイブレークへ。ケイは最初に3ポイント連取してリードを奪うと、さらに最後の3ポイント連取で突き放した。
メモ: 両者サービスキープでタイブレークへ。最初にセットポイントを握ったのはクエリーだったが、その後、ケイがセットポイントを奪い返して2回目を取った。
メモ: 第2セット終盤は錦織がフェデラーに迫り、緊張感がぐっと増した状態でタイブレークへ。そこで4-1とリードした錦織だが、そのあと、フェデラーが6ポイント連取
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