世界一を育てたコーチに学ぶ「トニー・ナダル」(1)ラファを指導した経験談とそこで学んだこと

ちょっとこぼれ話(1)
トニーはラファの叔父で、つまり比較的言いたいことをストレートに言える特殊な立場ということもあり、他のコーチが皆、トニーのように決然と振る舞えるかは微妙なところ。トニーなら正しいことは正しいと、他の選手の指導でも決然といくに違いないが、この微妙さを理解しているクラウディオ・ピストレージ氏(GPTCA)が随所で追加説明。
「つまり“荷物持ち”をしたらコンシェルジェ、世話係だということだ。それは、選手が雇用者だという問題からくるのだろう。選手が金を払う者だから、コーチは仕事を失うのが怖くて何でもしてしまう。しかし、それではコーチではない。コーチの地位を向上させる意味でも、これは変えていかなければいけない部分だと思う」と言い添えた。
ちょっとこぼれ話(2)

中央がトニー氏、右がピストレージ氏、左がカステラーニ氏(写真◎田中エリカ)
ストーリーテラーのように淡々と語りつつ、講習者を引き込んでいったトニー。一方、話をまとめたり要約したりすることに慣れたピストレージ氏とカステラーニ氏は、ときどき介入してわかりやすいよう要点をまとめて説明した。
ピストレージ(写真右) 「トニーの言いたいことを要約すれば、選手との仕事では人間的部分が重要であるということ。ラファを子供のときから指導してきたトニーが、何より人間的部分、つまり性格、精神の教育を前に押し出した指導をしてきたということだ。この青写真は、トニーがやってきた仕事、テニスの役割を理解するために重要なことだと思う。よい選手ということ以前に、人間としてのレベルを高く保つように努めることも、我々コーチの重要な任務のひとつであるということだ」
カステラーニ(写真左) 「強調したいのは、このトニーの人間的部分の強調が、彼のコーチングにおいて強い印象を与える要素の最たるものだということ。もし二つ、彼の主な原則を挙げるなら、まずはそれがテクニックであれ何であれ『現実』を率直に見つめるという原則、そして人間としての『普通さ』を保ち続けるという原則だろう。これは他のコーチたちと一線を画した非常に強烈な部分だ」
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