小浦武志_試合でキレてしまうあなたへ〜メンタル・タフネスの一例

試合中にいい調子が続かない、あるいは集中が切れてしまうと悩んでいる方。小浦コーチいわく「試合中は誰でもストレスがかかるもの。これを我慢しようとするからおかしくなる」と、その悩みを否定しない。さてどんな考え方があるというのだろう…。小浦武志ナショナルチームGM(当時)の『戦略&戦術のすすめ〜試合でキレてしまうあなたへ〜メンタル・タフネスの一例』【テニスマガジン2007年1月号掲載記事】

Q 打ち込んではミス、我慢してもミス。一生懸命やろうとしているのに、最後まで集中できないんです…

A すべて一生懸命にやるのは無理。でも一所懸命にならできるでしょう!

POINT01

テニスの試合は危険区域
エマージェンシーの連続なのだ!

イラスト◎もりおゆう

 はっきり言います。テニスの試合において辛抱するのは無理です。テニスの試合は例えれば、常にダイオキシン発生の危険区域と考えてください。それでもその中に身をおいてプレーしなければならないのがテニスです。

 ところが、そういう危険区域に選手がいるにもかかわらず、コーチが誰かれ構わず「辛抱せい!」と言うと選手はおかしなことになります。テニスの試合はエマージェンシー(危険状態)の連続です。何が起こるかわかりません。その中で平気な顔をしてプレーし続けろということにはそもそも無理があります。選手はエマージェンシーの中で戦っているのです。そのエマージェンシーをどう処理するかということがメンタル・タフネスを鍛えるということです。

 私はまず選手に、「テニスの試合はストレスがかかるもの」ということを理解させることが大切だと思います。そして「ストレス発散の方法を学ぶべき」だと思います。

 皆さん、総理大臣の生活をしてみたいと思ったことはありますか? どんな生活をしているのでしょう。総理は決して毎日平々凡々と暮らしているわけではありません。確かにお金持ちかもしれませんが、高級車を乗り回し、夜毎遊びほうけてはいるわけではないと思います。国民の大きな期待を背負う中に身を置き、しかし毎日、国民の前に現れるときは不安な様子やストレスを感じている様子などはまったく見せずに、穏やかに変わらぬ態度で現れます。

 でも実際には、大きなプレッシャー、大きなストレスを感じて生活しているはずです。けれども総理は、それを国民に知られぬように、密かにゴミ箱へストレスを捨てていると思います。捨てなければ、いつもああやって新鮮な気持ちと状態を作ることはできないでしょう。テニス選手も同じです。試合中にどうやってそのストレスを捨てていくのか、これを考えなければなりません。

 辛抱することによって、ストレスを捨てられなくなり、かえって溜めることにつながってしまうことがあります。ゴミをどんどんポケットに詰めていって、例えばゲームカウント4-4になったときなどに一気にダイオキシンを発生させて(悪臭を放ち始め)、ひどいとそれでジ・エンドです。

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