【全日本2019プレーバック女子決勝】本玉真唯が気迫の全日本制覇

本玉は第5シードから接戦を次々とものにして初の栄冠

開幕が間近に迫った2020年の全日本テニス選手権。ここでは2019年の全日本シングルスの男女決勝を振り返っていこう。続いて女子決勝をプレーバックする。(テニスマガジン2020年1月号掲載)

本玉真唯は4試合にフルセット勝利


 最後の試合もフルセットマッチだった。初戦の2回戦から決勝までの5試合で4試合目。簡単に勝つことはできないが、最後は必ず勝利を手に入れた。優勝が決まった瞬間、本玉真唯は両手を高々と両手を上げ、日本一の喜びを爆発させた。

「うれしいんですけど、あまり実感がなくて…終わったあとは泣いちゃったんですけどね」

 20歳の本玉、29歳の秋田史帆の決勝は、本玉の6ポイント連取で始まった。決勝の独特の雰囲気、そして全日本の重みを知るベテランに、やや硬さが見られる立ち上がり。本玉が2-0とリードして勢いに乗るかと思われたが、本玉もまた考えすぎてしまった。

 「そのペースのままで行ってしまって。無理をし過ぎて、そこでミスが出てしまいました」

 追いつき、追い越した秋田が第1セットを6-4で先取する。秋田の声がコロシアムに響き、それは全日本のタイトルを渇望する叫びでもあっただろう。2年ぶり2度目の決勝。あと1セットに迫り、今度こそという想いが、しかし秋田のプレーを少しずつ狂わせていった。

 本玉は落ち着いていた。緊張もあって打ち過ぎた第1セットの反省を生かし、第2セットからは「同じコースに何度も打つようにした」と心掛けた。「すると相手のミスも増えて、流れも出てきた」と振り返る。

 勝負の行方は最終セットにもつれ、本玉の2-0で迎えた第3ゲームがターニングポイントとなった。9度のデュースの末、ゲームを奪ったのは本玉。「あそこを落としていたらカムバックされていたと思う」と本玉が言う。このゲームは本玉の武器でもある脚力が光った。秋田のコースを突く厳しいボールに必死に食らいつき、我慢のテニスを貫いた。無理をせず、相手に無理をさせ、ミスを引き出すことに成功した。

 3-0とした本玉が、その勢いのまま決着をつけ、20歳にして初優勝を飾った。秋田と握手を交わしたあと、涙を浮かべながら神尾米、比嘉ジャイミー、両コーチのもとに駆け寄り、喜びを分かち合った。25年前のチャンピオンでもある神尾コーチが言う。

 「今年はリードしながら落としているゲームが多くて、あとひとつのところで(勝利を)逃していたんですが…今大会は頑張りましたね。最後までよく足を動かし、食らいついていった」

 3人兄妹の末っ子。兄2人は慶應義塾大のテニス部に進んだが、高校卒業後は小さい頃からの夢でもあるプロ転向を果たした。全国小学生、全国中学生、世界スーパージュニアとタイトルを獲得し、全豪ジュニアでは8強進出。しかしプロの世界は「ジュニア時代なら決まっていたボールが倍のスピードで返ってくる」と、その厳しさを味わってきた。プロに転向して約1年半、初めてのタイトルが全日本となった。

 目標はグランドスラムだ。最新世界ランクは378位。ショットの質を高め、戦術に磨きをかけ、足を使ったテニスで勝負するつもりだ。


最後は力尽きたが気迫あふれるプレーで存在感を見せつけた秋田

29歳の秋田史帆は悔しい2度目の準優勝


 ポイントは取れてもゲームが取れなかった。最後まで闘志を前面に出して戦った秋田だが、先にミスが出てしまった。
 「今週で一番よくないテニスでした。20パーセントもできていない。準優勝の悔しさよりも、自分のテニスがやりきれなかった悔しさのほうが強いですね」

 9月から荏原SSCに拠点を移し、練習環境が整った。それが何よりもうれしい。2年前の決勝のときよりも力がついている実感がある。最新世界ランクは730位だが、伸びしろがあると信じ、これからも上を目指して戦っていく覚悟だ。

 「来年はもう無理ですけど、2021年の全豪に間に合うようにランクを上げていきたい」

 思う存分、大好きなテニスを続ければいい。努力家の秋田にはそれがよく似合っている。

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取材◎牧野 正 写真◎菅原 淳

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