ダニエル太郎インタビュー「クレーが一番テニスに健康的なサーフェスですよ」

粘り強いストロークはまさに日本人プレーヤー向きだが、テニスや人生に対する姿勢、考え方は独特のスタイルを貫く。素直で正直で“イケメン”な24歳を直撃した。【2017年10月号掲載】

インタビュー◎武田 薫 写真◎Getty Images

PROFILE
ダニエル太郎
だにえる・たろう◎1993年1月27日生まれ。190㎝76㎏。米国・ニューヨーク出身。アメリカ人の父、日本人の母を持ち、7歳でテニスを始める。13歳まで日本で育ち、父親の転勤に伴いスペインへ移住。09年2月にプロ転向。14年のチェコ戦でデ杯日本代表デビュー。同年の全米オープンでグランドスラム初出場を果たす。練習拠点はスペインのバレンシア。日本語、英語、スペイン語を操る。世界ランキング単97位、複958位(2017年8月14日現在)

「クレーが一番テニスに健康的なサーフェスですよ」

――今年の欧州シーズンを、自分ではどう評価していますか。

 「3月に南米のクレーコートを回り、アルゼンチンのチャレンジャーに勝つことができました。そのへんからいい流れができて、ツアーとチャレンジャーを混ぜながらプレーしたんですが、ヨーロッパに移ってから2大会でツアー予選を勝ち、エストリルでは本戦で2勝できた。フレンチ・オープンでは予選を3つ勝って本戦でもジャージー・ヤノビッチに勝てたのはうれしかったですね。去年も1勝しましたが、今年は予選から4つ続けて勝って自信になりました。その時点ではウインブルドンの本戦ストレートインが微妙だったので、リスボンのクレーのチャレンジャーに行きました。本戦が決まっていれば、芝の前哨戦に出るつもりでしたが、予選のためにそこまではしたくない。ウインブルドンは2回戦もすごくいいテニスができて、第1セットを取ったけど、5セットマッチの難しいところで、このプレーをあと2セットするのか『ながあ(長い)』と思っちゃった(笑)。最後は体力的な影響があったかもしれないですね。体力的にはパリから、ちょっと苦労しました」

――ツアー生活を結構、エンジョイしているように見えますが。

 「日本人はみんな、すごく真剣に仕事をしないといけないという考え方がありますよね。僕は昔、日本にいたときもそう思っていましたけど、自分の人生にはやることがあって、人生は相当長いから、好きでやっていかないと苦しくなるなあって。今、自分がテニスをできること、ケガもなく、ウインブルドンで戦うなんていうこともなかなかできないことですから、そう思えば楽しいですね。まあ、両親がそういう感じですから。お母さんは日本人だけど、海外に長いこと住んでいてあんま日本人らしくなくって、お父さんもカリフォルニア・メンタリティーっていうか(笑)。僕は、お母さんの日本人のいい所、白人のお父さんのいい所をもらえたかなって思いたいですね」

――練習は楽しんでやれるほうですか。

 「日本にいたときは、テニススクールに通っていて、学校もしっかりやるように言われていたので、3時か4時くらいに学校が終わると、8時くらいまでテニスでしょう、すごく忙しかったことしか憶えていないんですね。ヨーロッパに来てからも、ほぼテニスのために来ているっていう感じで、他のスポーツとかも全然知らない。テニスがすごく若いときから自然に精神的に入っているので、好きとか嫌いとかではないですね。じゃあ、テニスがなかったら人生、何するのかっていう感じになっちゃう。練習したいときも、したくないときもありますよ」

――バレンシアの生活は?

 「1週間練習できるとしたら、朝2時間練習して、ちょっと休んでトレーニング1時間半くらいやって、昼ご飯を食べて、また1時間半練習して、一日5~6時間くらいテニスですね、そのあとは休みです。音楽は好きです。ギターを弾きたいけど弾けない。楽器は何も弾けないです(涙)。親がアムステルダムに住んでいるので、この2年くらいはひとりの生活。きついこともあります。ご飯がきついな。別に日本食とかにこだわりはないんですけど、洗濯とか掃除とかは大丈夫でも、僕は料理がうまくできない。そこだけはきついです。少しはワインも飲みますよ。彼女が日本にいるので、それがちょっとつらいかな」

――24歳になりましたが、マイペースのテニスライフですね。

 「ロッカールームにいると、30歳を越えたプレーヤーがすごく多いんですよ。その人たちも30越えてからいいプレーができ始めるようになったとか話をしてくれる。僕は身体がまだ100%成長していないと思うし、まだ伸びしろがあると思っている。こっちに来て、ダビド・フェレールさんには、錦織さんと同じくらい影響を受けていますね。僕のコーチがフェレールさんのコーチだったので、2014年から一年くらいいつもいっしょにいて、練習させてもらったり、食事をしたり、ものすごくいい経験をさせてもらいました。別に直接何かを学んだとか言うことではなく、そういう環境にいるだけで、ちょっとずつ自分の中に自信がついていく感じがありましたね。錦織君は、ものすごくよい友達関係というか、友達先輩なんです。もちろん、彼の練習や試合を見ているとやっぱすごいなあと思いますけど、彼はテニスの外でたくさんの関係があって、テニスだけでなく、一般のことをいろいろと話してくれます。すごく話がしやすいし、いいアドバイスももらっています」

――この後の帰国はデ杯、楽天オープンになりますか?

 「そうですね。日本には埼玉におばあちゃんがいるくらいだから、それと彼女と。デ杯の代表になるのはもちろんうれしいですが、今のフォーマットはかなりきつい。5セットの大会に1週間全部を取られたら、その後の週も、前の週も大会に出ることはできませんから、個人戦への負担が多すぎますね。5セットだとすごいエネルギーを取られるから……。例えば、オリンピックは4年に1回なので、国のために見返りも何もなくてもいいですけど、デ杯はITFとか協会とかにもっと考えてほしいと思います。1年に4週というのは優勝しないとないにしても、2回は必ずある。特に僕らのようにグランドスラムの本戦に入れるか入れないかというところで頑張っている選手にとっては、難しいオプションですから、これからは少し深く考えていきたいです。今年、2月に錦織君がなぜデ杯に出られなかったか、そのへんは、いくら選手が説明しても100%理解はしてもらえない。もちろん経済的なところもあるし」

――クレーコート中心のツアー生活になっていますね。

 「僕はクレーコートが一番テニスに健康的なサーフェスだと思っていますから。クレーに強くなって勝てるようになれば、たぶんどこでも勝てるようになる。ちょっと芝は違いますけど、クレーで勝てればハードでも勝てる。ハードだけやっていてもクレーでは勝てないと思います。来年はオーストラリアの本戦に入れるように残りのシーズンを頑張りたいですね」

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