新たな陽性者出現で合計72人のプレーヤーに厳格な隔離措置 [オーストラリアン・オープン]

写真は2020年12月にメルボルンの空港で行われた記者会見で質問に答えるビクトリア州のCOVID-19検疫委員のエマ・カサー氏(Getty Images)

今年最初のグランドスラム大会に出場する選手たちを運ぶチャーター便の搭乗者にまたも新型コロナウイルス(COVID-19)感染者が出たため、さらに25人のテニスプレーヤーが大会前の厳格な検疫を強いられることになった。これにより練習をすることもできずにホテルで隔離を行わなければいけない選手の数は、合計72人となった。

 オーストラリアン・オープン主催者によると、新たに出た陽性者はプレーヤーやそのスタッフなどではない人物だった。しかし土曜日にカタールのドーハからメルボルンにやってきた25人の選手を含む58人の乗客は皆、2週間はホテルの部屋を出ることができなくなった。

 これに先立ち主催者は2機のチャーター便から4人の陽性者が出たあと、47人のプレーヤーがより厳格な検疫を行わなければならないと発表していた。

 あるプレーヤーたちはのちに陽性と診断された者が搭乗していた飛行機に乗っていたからという理由だけで濃厚接触者とみなされ、1日5時間の練習を許される他のグループよりも厳しい条件を課されるということに怒りを見せている。しかしオーストラリアの保健当局は、すべてのプレーヤーはこのリスクに関する警告を事前に受けていたと反論した。

 検疫の規則に違反すれば重い罰金を科されたり、警官がドアに配備されたより厳格な検疫施設に移送されるたりする可能性がある。

 3人の陽性者が出たことは土曜日に発表されていたが、ビクトリア州のCOVID-19検疫委員のエマ・カサー氏は日曜日の会見でオーストラリアン・オープンのため渡航してきた人の中にもうひとり陽性者が出たと報告した。これまでのところ、発見された陽性者の中に選手は含まれていない。

 ロサンゼルスからのフライトで発見された3人の陽性者はフライト乗務員とコーチのほか、テレビ放送チームの一員がのちに加わった。もうひとりの陽性者は、アブダビからの便に乗っていたコーチだった。この4人の皆が搭乗前の検査では陰性と診断されており、全員が現地の医療用ホテルに移送された。

 2019年USオープン優勝者であるビアンカ・アンドレスク(カナダ)のコーチを務めるシルバン・ブルノー氏はソーシャルメディアへの投稿を通し、自分がアブダビからのフライトで到着して陽性と診断されたことを明かした。

 2012年と13年にメルボルンで2連覇を達成したビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)と2014年USオープン準優勝者の錦織圭(日清食品)は、ロサンゼルスからの便に乗っていたと伝えられている。上記のフライトに乗っていたすべてのプレーヤーたちは、練習をしに外出することも許されない厳しいロックダウンを課されることになった。

 州刑務所の責任者でもあるカサー氏は検疫の手順を「テスト」し、州警察との話し合いと警告を引き起こしたケースはあったが、検疫の場から逃走しようという試みはなかったと述べた。

「そのような振る舞いに対する許容度はゼロです」とカサー氏は語った。「これは人々の安全を確保するために設計されたものなのです。我々はそのことについて、謝罪しはしません」。

 ソラナ・シルステア(ルーマニア)、ベリンダ・ベンチッチ(スイス)、ユリア・プティンセバ(カザフスタン)を含む検疫中の選手の中には、ソーシャルメディアへの投稿を通してオーストラリアに渡る前に聞いたものとメルボルンで課される規則の間に違いがあるようだと不平を漏らした。

「もし彼らが事前にこのルールを伝えていたら、私はオーストラリアでプレーしなかったかもしれない。私は家に留まっていたかもしれないわ。フライトは20%しか埋めず、私のチームや仲間が陽性になった場合のみ濃厚接触とみなされると彼らは言っていたのよ」とシルステアはツイートした。しかし政府の当局は、この訴えを却下した。

「同じ飛行機の中に16~24時間もいて機内全体を空気が循環しているのであれば、それは濃厚接触です」とカサー氏はコメントした。「これは非常に明確にされていることで、何も変わっていません」。

 テニス・オーストラリア(豪州テニス協会)はロサンゼルスからの便には24人、アブダビの便には23人のプレーヤーが乗っていたことを認めた。それらは大会のため、約1200人の選手とコーチやチームの面々および大会オフィシャルたちを7つの都市からオーストラリアに運ぶ17機のチャーター便のひとつだった。

 大会ディレクターのクレイグ・タイリー氏は主催者とプレーヤーは陽性のケースが出た場合について、規制が課される「かなりのリスクがある」ことを前もって警告されていたと発言した。

「その点に関しては、最初から非常にはっきりさせていました」とタイリー氏はオーストラリアの民間テレビ『ナイン・ネットワーク』に話した。「我々は練習できない者たちのため、来たる14日間に渡って環境を整えなければなりません。厳しい状況です。ロックダウンを課されたプレーヤーたちにとってできる限り公正であるようにするため、できることは何でもしなければなりません」。

 ヘザー・ワトソン(イギリス)はツイッター上で、彼女自身とアブダビから到着した他のプレーヤーたちは「ホテルの部屋から出ることを許されていない」と知らせた。彼女はまた、そのフライトに乗っていた彼女と他の者たちに検疫についての情報を伝えた『お知らせ』を投稿した。

 ホテルの自室を出ることができないということは、彼らのできる唯一のワークアウトはすべてのプレーヤーの部屋に設置されたエクササイズマシンによるものだけということになる。

 メルボルンでの練習は保健当局がすべての検査結果を受け取るのと待っている間に開始が少し遅れたものの、他の選手たちは厳格な条件と監視のもとにトレーニングを行うことを許されている。

 元世界ナンバーワンでオーストラリアン・オープン準優勝歴5回のアンディ・マレー(イギリス)とマディソン・キーズ(アメリカ)は、フライト前に義務付けられている検査で陽性の判定を受けた。

 タイリー氏はすでに通常より3週間遅れとなっているオーストラリアン・オープンの開始をこれ以上遅らせる予定はないと明言したが、主催者は厳しい検疫を課されたプレーヤーたちにとって少しでもやりやすくするために2月1日から予定されている前哨戦のスケジュールを見直そうとしていた。メルボルン・パークの観客数はかなり制限されているが、すでに大会のチケットは売り出されている。

 特別な場合の例外措置はあるがオーストラリアの国境は基本的に閉じられており、旅行者を受け入れていない。オーストラリアの各州も各々の境界線と検疫ルールを擁しており、それらは突然変更になる可能性がある。

 首都をメルボルンに置くビクトリア州は、オーストラリアにおけるCOVID-19関連の死者909人のうち810人を占めている。そのほとんどは甚大な被害が出た3ヵ月前の第2波の間に発生し、町は夜間外出禁止令とロックダウンの措置を取っていた。

 ノバク・ジョコビッチ(セルビア)、ラファエル・ナダル(スペイン)、大坂なおみ(日清食品)、セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)らは、1月29日に南オーストラリア州アデレードで行われる1回限りのエキシビションマッチに出場するグループの中にいる。彼らはアデレードに直行し、現地のホテルで検疫のプロセスを開始した。ここまでのところ、アデレードの検疫からはひとりも感染例は出ていない。(APライター◎ジョン・パイ/構成◎テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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