屋外での練習セッションがスタート、完全隔離の選手たちも前向きに過ごす [オーストラリアン・オープン]

2016年オーストラリアン・オープン優勝者のアンジェリック・ケルバー(ドイツ)は月曜日、検疫の中で誕生日を迎えた。彼女は過去に大会後半をプレーしながら、あるいは試合の準備をしながら誕生日を過ごしていた。
新型コロナウイルス(COVID-19)に関する渡航規制のためにシーズン最初のグランドスラム大会が2月8日まで始まらない今年、彼女はオーストラリアン・オープン主催者がソーシャルメディアに投稿した誕生日を祝うメッセージで我慢しなければならなかった。
ケルバーは約1200人の選手とコーチやチームの面々および大会オフィシャルやメディア関係者たちをメルボルンに運ぶ大会の特別チャーター便に乗っていた者から計5人の陽性者が出たため、14日間の厳格な検疫期間を強いられることになった72人のプレーヤーたちに含まれている。
つまりこれらのプレーヤーたちは14日の間は自分たちのホテルから離れることを許されず、その間は練習することもできない。そこまで厳しくない検疫を行う選手たちのグループは、1日5時間までは練習することを許されている。
一部の選手たちによる屋外の練習セッションは、月曜日からメルボルンで始まった。南オーストラリア州の州都アデレードに到着したノバク・ジョコビッチ(セルビア)、ラファエル・ナダル(スペイン)、大坂なおみ(日清食品)、セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)を含む少人数のグループもまた、バイオセキュリティのプロトコルに従いながら屋外で練習することを許可されている。
ベリンダ・ベンチッチ(スイス)やユリア・プティンセバ(カザフスタン)のような選手たちは当初、ソーシャルメディアへの投稿を通して検疫についてしっかり情報を知らされていなかったと文句を言っていたが、壁や窓に向けてボールを打ったり他のユニークな練習の仕方を編み出したりと室内で何とか練習する方法を見つけ出した。
何人かのプレーヤーはのちに陽性と判定された人と同じ便に乗っていたという理由から濃厚接触者とみなされたことに怒りを見せていたが、ビクトリア州政府とテニス・オーストラリア(豪州テニス協会)および保健当局はすべてのプレーヤーはそういったリスクについて事前に警告を受けていたと反論した。
「規則について数人の選手たちが話題にあげていました。しかし規則は他の誰にも適用されるように、彼らにも適用されます。彼らは皆、そのことについてここに来る前に説明を受けています。彼らはその条件を受け入れてやって来たのです」とビクトリア州首相のダニエル・アンドルーズ氏は月曜日に語った。「特別措置というのはありません。ウイルスはあなたを特別に扱うことはしませんから、我々もそうなのです」。
オーストラリアン・オープンで男子の最多記録となる8度の優勝を誇るジョコビッチがプレーヤーの検疫条件を変えるためのアイデアのリストを提出したという裏付けのとれていない報道に対し、アンドルーズ氏は「要求のリストを提案する自由はありますが、答えはノーです」と答えた。
特別な場合の例外措置はあるがオーストラリアの国境は基本的に閉じられており、旅行者を受け入れていない。オーストラリアの各州も各々の境界線と検疫ルールを擁しており、それらは突然変更になる可能性がある。
国内でのCOVID-19関連の死者909人のうち810人がメルボルンを首都とするビクトリア州から出ており、そのほとんどは甚大な被害が出た3ヵ月前の第2波の間に起きた。そのため地元では、COVID-19が未だ大流行している世界の他地域から人々を受け入れてグランドスラム大会を開催するのが正しいことなのかという議論も起きていた。
それが念頭にあるだけに、オーストラリアの保健当局と政府は危険を冒すような真似はしない。ここまでのところロサンゼルスからメルボルンへのフライトに乗っていた3人が到着してから陽性と判定され、アブダビからの便に搭乗していた2019年USオープン優勝者であるビアンカ・アンドレスク(カナダ)のコーチを務めるシルバン・ブルノー氏とドーハからメルボルン入りしたもうひとりの人物と一緒に医療用ホテルに移送された。
その3便に乗っていた計72人のプレーヤーは、より厳格な検疫を課されることになった。ここまでのところ、メルボルンやアデレードに到着したプレーヤーの中から陽性者はひとりも出ていない。
検疫の規則に違反すれば重い罰金を科されたり、警官がドアに配備されたより厳格な検疫施設に移送されるたりする可能性がある。
ビクトリア州のCOVID-19検疫委員のエマ・カサー氏は、規則を破ろうとする人々に対しては「許容度はゼロです」と断言した。「これは人々の安全を確保するために設計されたものなのです。我々はそのことについて、謝罪しはしません」。
ホテルの自室を出ることができないということは、彼らのできる唯一のワークアウトはすべてのプレーヤーの部屋に設置されたエクササイズマシンによるものだけということになる。
大会ディレクターのクレイグ・タイリー氏はすでに通常より3週間遅れとなっているオーストラリアン・オープンの開始をこれ以上遅らせないと決意しており、「主催者は練習できない者たちのために14日間に渡って環境をうまく管理する必要があります」とコメントした。
「厳しい状況です。ロックダウンを課されたプレーヤーたちにとってできる限り公正であるようにするため、できることは何でもしなければなりません」とタイリー氏は週末に放送されたテレビ番組のインタビューで話した。(APライター◎ジョン・パイ/構成◎テニスマガジン)
写真◎Getty Images
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