土居美咲「50の質問」『テニスがしたい!』という気持ちを大切にしてほしい|Player File 1
「やっぱりもう一度、グランドスラムで戦って勝ちたい」
――2018年は一時、328位までランキングを落としてしまいました。何が起きていたのでしょうか。
土居 説明するのは難しいのですが、試合に負けてうまくいかないという悪循環に陥り、そこから抜け出せなくなってしまいました。
――メンタル面の問題だったのか、技術的な狂いがあったのか……。
土居 メンタル面が大きかったと思います。それまでは試合でうまくいかなくでも『次、次』と切り替えられていました。練習ではうまくいっているけど試合で表現できないだけなら、負けても次はうまくできるように頑張ろう、と前を向けるんです。でも、2018年は練習でもうまくいかないことが多くて、ポジティブに考えられなくなってしまった。「練習でできていないのに、試合でできるわけない」と考えてしまい、当時は難しかったですね……。
――そこからどう抜け出したのでしょうか?
土居 勝ち負けにこだわり過ぎなくなったことが一番です。それまでは練習から試合に行くのに怖さがありました。負けるためにコートに行くようなもの、と考えてしまったり……。そこから少しずつ、勝ち負けよりも純粋にテニスを楽しもうと思うようにして。ある試合で大きく変わったわけではなく、徐々にですが、目の前のポイントを追うのではなく、一球一球に楽しさを見つけながら試合ができるようになって、調子が戻ってきました。
――そうして迎えた2019年はどんなシーズンでしたか。
土居 グランドスラムにも久々に出られるようになって。テニスをしている以上、「やっぱりこの場所だよな」と思いましたし、大きな舞台で戦える喜びをかみしめながらプレーしていました。
――花キューピット・オープンではツアー準優勝もありました。
土居 ツアーを回っていると日本のファンの前でプレーする機会は少ないので、東レPPOを含めてお客さんもたくさん来てくれましたし、応援してもらえるのはすごく励みになりました。
――決勝は日比野菜緒選手との日本人対決になりました。
土居 あのときは私が空回りしちゃった部分もあって……。
――直後のダブルス決勝にはその日比野選手とのペアで出場しました。
土居 前日の時点で「シングルスが終わったら30分後くらいにはダブルスの試合が入る」とは言われていて。シングルスの表彰式が終わって落ち込んでいる中でも、『早く着替えて、もう試合!』という感じだったので。ダブルスでは味方ということで切り替えが大変でしたけど、もう無理やり(笑)。自分の中では強引に切り替えました。
――ダブルスでは見事に優勝しました。
土居 「さすがにダブルスも準優勝はつらすぎる!」と思って。正直、試合内容はあまり覚えていないんです。覚えているのは急いでダブルスの試合に入ったこと、とにかく頑張ったということだけ(笑)。でも、一個でもうれしい思いができてよかったです。
――2020年シーズンはどんなスタートでしたか。
土居 良いスタートではなかったです。オーストラリアン・オープンの1回戦もスーパータイブレークで負けて……。その時点では東京オリンピックが7月に予定されていたので、最初のスタートが勝負だと意気込んでいただけにショックでした。インディアンウェルズでのWTA125Kシリーズで準優勝して、『さあ、これから頑張ろう!』というところだったのですが……。
――直後のインディアンウェルズが新型コロナウイルスの影響で中止になりました。
土居 準優勝したWTA125Kシリーズはインディアンウェルズと同じ会場だったんです。そのときからボールボーイはタオルを渡しませんとか、手袋をしますという対策が、まさにその決勝から試験的に始まっていました。決勝の翌日からインディアンウェルズの予選がスタートする予定だったので、当然、明日も試合があるだろうと思って準備していたら、夜に突然、延期が発表されました。
――やはり驚きはありましたか。
土居 決勝の日は、インディアンウェルズの予選のサインインの日で。普段だったら16時過ぎにはドローもできて、次の日のオーダーも出てという流れなんです。でも、その日はなかなか発表されず、ほかの日本選手たちと「全然発表がないね」「ドローも決まってないよね」と話していて。私はその日も普通にお客さんが入った状態で試合をしていたので、まさか大会自体が中止になるなんて予想もしていなくて。トップ選手も続々と会場に来ていましたし。
――そこから帰国するまではどう過ごしていましたか。
土居 当初はマイアミはやるということだったので、そのままアメリカに残っていました。マイアミまでの間にメキシコでWTA125Kシリーズがあってエントリーもしていたのですが、行ってからアメリカに入国拒否をされたらマイアミに戻ってこられない。そうこうしているうちにマイアミもなくなりそうだと情報が流れて……ほんの数時間で情報が二転三転していく。本当にいろいろなことがあった数日間でしたね……。
――帰国してからは自粛期間もありましたが、どう過ごしていましたか。
土居 家で体幹などのバランス系トレーニングをしたり、人の少ない場所で動きの入ったトレーニングをしたり。最初の頃はラケットも握っていなかったのですが、少ししてから素振りをやるようになりました。トレーニングだけだとつまらな過ぎて(笑)。素振りってあまりしたことがなかったのですが、コートでテニスができていないときは素振りって大事だなと思います。
――どのように素振りをしていたのですか。
土居 フットワークをつけて、頭の中でポイントを想定しながら「クロスに打って、次はストレート」とイメージしながら素振りをしていました。
――現在の具体的な目標は?
土居 やっぱりもう一度、グランドスラムで戦って勝ちたい。しばらく(16年ウインブルドン以来)勝てていないですし、グランドスラムで活躍することがテニス選手としての目標なので。
――延期された東京オリンピックもあります。
土居 テニスはグランドスラムが重視されていますし、私もグランドスラムへの思いが大きいです。でも、アスリートとして、しかもホームの東京で開催されるオリンピックには強い思いがありますし、可能であれば出場して活躍できたらなと思います。
――ジュニアや学生の大会も中止になっています。ジュニアへのメッセージをいただけますか。
土居 それぞれ大会に懸けていたジュニアや学生の皆さんにとっては残念なことだと思います。でも今の「テニスがしたい!」「スポーツがしたい!」という気持ちを大切にしてください。もっと言えば「みんなに会いたい!」「学校に行きたい!」とこれほど強く思うことはなかったかもしれません。その思いを大切に、いろいろなことが再開したときのためにパワーをためておいてください!
――あらためて土居選手にとってテニスの魅力は何ですか。
土居 自粛期間にテニスができずラケットも握らなかった中で、素振りをしたときにテンションが上がったんです(笑)。ラケットを握ったことで少し安心感が生まれ、「テニスが好きだったんだな」と再確認ができました。
――最後にファンへのメッセージを。
土居 今は大変な時期ですが、だからこそひとつになって乗り越えていけたらと思うので、いっしょに頑張りましょう。日常が戻ってきたときに、またみんなといっしょにテニスを楽しめたらなと思います!
取材・構成◎杉浦多夢
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