オーストラリアの厳しい検疫が選手にもたらした悪影響 [オーストラリアン・オープン]
オーストラリアン・オープンに先立ち窓が開かないメルボルンのホテルの部屋に2週間閉じ込められていたことは、「本当に堪えた」と2012年と13年の優勝者で第12シードのビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)は1回戦負けを喫したあとに説明した。彼女はこの試合中、ある種の呼吸困難に見舞われていた。
テニス・サングレン(アメリカ)が練習に出かけることも許されない厳格な検疫が終わって練習を再開したとき、彼のラケットを持つ手にはマメができた。体の他の部分も痛み、「歩けなかったため2日の休みを取った」のだと彼は告白した。
AP通信とのビデオインタビューに答えたバセック・ポスピショル(カナダ)は、ロックダウン中にしっかり準備ができていないことに憤慨せずにはいられず、競い合う上で公平性が欠けてしまうことを懸念していたと話した。2014年ウインブルドンでダブルスのタイトルを獲得した実績を持つポスピショルは、「彼らはプレーヤーのニーズやプロアスリートであることがどのようなことかを熟知していないんだ」と言ってテニス・オーストラリア(豪州テニス協会)を批判した。
アザレンカと同じくサングレンとポスピショルは、フライト中に新型コロナウイルス(COVID-19)にさらされた可能性があるとして練習のための外出も許されない14日間の“ハードロックダウン”を課された72名の選手のひとりだった。そしてアザレンカと同じように、サングレンとポスピショルも初戦で敗れた。オーストラリアでのCOVID-19関連の死者の数は、今のところ1000人にも達していない。
「僕はこれまでグランドスラム大会で、恐らく勝てないだろうと知っていながらコートに入ったことは一度もなかった。僕は肉体的に対戦相手と戦うには十分なコンディションではなかった」とサングレンはコメントした。昨年の大会の準々決勝でロジャー・フェデラー(スイス)に対してマッチポイントさえ握ったサングレンはこの日、第21シードのアレックス・デミノー(オーストラリア)に5-7 1-6 1-6で敗れた。
「大会全体がジョークだとは言わないが、何人かのプレーヤーにとっては実行不可能だった」
しかし他の何人かにとっては、ここまでのところ問題は起こっていない。例えば20歳のアン・リー(アメリカ)はハードロックダウンを終えてから5連勝しており、その中には火曜日に第31シードのジャン・シューアイ(中国)を6-2 6-0で倒した試合もあった。ヘザー・ワトソン(イギリス)もまた、「通常ほどいい体調ではないけど、まあ驚きではないわ」と認めたにもかかわらず、初戦をクリアして2回戦に駒を進めた。
23歳のパウラ・バドーサ(スペイン)は自身が検疫期間中に受けた検査で陽性と判定されたために3週間に及ぶ隔離を余儀なくされ、隔離の間は体の問題や不安感などに苛まれたと打ち明けた。
予選勝者のリュドミラ・サムソノワ(ロシア)に7-6(4) 6-7(4) 5-7で敗れたあと、「私の体の反応がとても鈍かった。回復するのが難しかったわ」と世界ランク70位のバドーサは振り返った。
彼女はサービング・フォー・ザ・マッチまでこぎつけたが、結果的に2時間半を要した試合が長引くにつれて力を弱め、最後の4ゲームを連続で落としてしまった。
「強い選手と戦うためには新鮮な空気やもしかしたらもっと大きな部屋とか、よりよいコンディションが必要だったのかもしれないわ」と彼女は悔しさを滲ませた。
“普通の”検疫を課された選手たちは、練習をするために1日5時間の外出をを許されていた。その時間は練習コートでの1時間半、ジムでの1時間半、食事のための1時間、移動のための1時間に分けられる。恐らく理想的ではないかもしれないが、彼らには戦う準備を整えるチャンスは提供されていた。
「僕は問題を提起したんだ。『これは常軌を逸した状況だ。だから例外として特別なルール変更を加えることもできるはずだ。そうだろう?』とね。結局のところ、それがスポーツの本質なんだから」とポスピショルは明かした。「それがスポーツの美しさだ。チャンスの平等というものがね」。
彼は主催者にハードロックダウンを課された選手は追加的治療やマッサージを受けられるようにしたり、大会序盤の男子の試合を3セットマッチにするなどの案を提示したが、それらはすべて却下された。
「もっといい対処ができたかって? 彼らはいい仕事をしたか? ああ。彼らはトライしていたと思うけど、完璧ではなかったよ」とポスピショルはパンデミックの最中にスポーツの国際大会を開催することについて語った。
2016年覇者で第23シードのアンジェリック・ケルバー(ドイツ)も初戦で敗退したが、今になってみてハードロックダウンと呼ばれた厳格な検疫が練習もジムワークもまったくできないことを意味するのだと気付いていれば渡豪するべきか再考していただろう話している。
ジェシカ・ペグラ(アメリカ)に5-7 4-6で敗れたあと、アザレンカはそのような「もしも」について考えを巡らせる気にはなれなかった。
「ここに座って、“私は来るべきだったかしら? 来ないべきだったかしら?”などと考えたりはしないわ。時間の無駄よ。私はここに来た。起きたことは仕方がないわ。私は今日ここにいて、試合に負けた。人生は続いていく。それだけよ」とアザレンカは自身の見解を示した。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)
写真◎Getty Images
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