ボブ・ブレットのコーチングブック(3)コーチ講習会&修造チャレンジ指導キーワード

修造チャレンジ・トップジュニアキャンプを指導するため来日した世界のトップコーチ、ボブ・ブレットによるコーチ講習会が開催された。「世界的なプレーヤーを育てたい気持ちがある人」を対象に公募した結果、100人以上の希望者の中から約30名が参加。その模様を複数回に分けてお届けする。ボブ・ブレットのコーチングブック(3)はコーチ講習会と修造チャレンジ・トップジュニアキャンプでボブ・ブレットが指導した内容を、修造チャレンジスタッフである櫻井準人コーチがキーワードとともにまとめたものを紹介する。(テニスマガジン2002年3月号掲載)

指導◎ボブ・ ブレット 7日間の指導内容まとめ◎櫻井準人
主催◎修造チャレンジ 共催◎日本テニス協会
取材・文◎テニスマガジン編集部 写真◎井出秀人、川口邦洋、菅原 淳、小山真司


ボブ・ブレット7days 指導スケジュール

コーチ講習会スケジュール(2001年11月19日)

09時00分 集合
09時30分 会議室にてレクチャー
12時00分 昼食
13時00分 オンコート講習&トレーニング講習
18時15分 夕食
19時00分 ミーティング(質疑応答、ディスカッション)
21時00分 終了

修造チャレンジ・トップジュニアキャンプ(2001年11月20〜26日)

   ◇   ◇   ◇   

●コーチングの骨組み「Keep it simple」
1ビジョン
ビジョンを持つ。受け持つジュニア選手の持っている能力をいかに100%出させるかを考え、「この選手をどういう選手にしたいのか」という問いかけにコーチ自身が考えられること。
2プラン
段階を経て、指導できるように細かなところまでプランを立てる。
3メソッド
ひとつひとつを順序立てられる方法を知っていること。ポイントを押さえる。

以上ができたらコーチは実行するだけ。選手が上達するには、長い過程が必要だが、コーチがしっかりしたビジョン、プラン、メソッドを理解していれば必ず実現する。

●選手に必要な要素
1技術面
2身体能力面
3精神面
・以上の3つを土台にして作戦は生まれる。
・作戦を立てる際は、相手の強みを知る(分析力と直観)。
1サービスとレシーブ
2ベースライン
3ミドルコート
4ネット

◎技術面
「なぜ技術を変えるのか」
・理由は、将来を考えるから。
・将来に起こり得る問題は、段階を経て変える必要がある。
・高いレベルには、何が必要かを考えると自然と答えは出てくる。
・技術があり、武器があれば、目標を達成する可能性が高くなる。
・大きなチェンジは、試合が当分ない時期に行うことが好ましい。

◎身体能力面
1 筋力を維持する。
2爆発的パワーをつくる。
3柔軟性を養う。
・ウエイトトレーニングにおいては、2つの痛みがある。
今まで使っていなかった筋肉を使ったために出た痛みにおいては、そのまま続けること。
ケガの痛みだと思ったときはやめること。

◎精神面
自立(自分の行動に責任を持つ)。
自信
・自分自身でいること(強いキャラクター)。
・思ったことを話す(自分の本音)。
・何をしたいのか(目標、夢の設定)。
・どのくらい強くそれを望むのか。
・それができると自分自身が強く信じる。
・そのために必要なことを準備する。
・他人と違った自分を認める。
・目標達成のために、正しい方法、考え方を持つ。
・目標達成に応じての方法、考え方であり、自分に都合のよい方法、考え方ではない。
・目標達成のためにチャレンジする。それにはリスクを負う。
・ハイリスクにはハイリターンの可能性がある。
・常に自分で考え、自分がリーダーになり主導権を持つように心がける。
・目標達成のために立ちふさがる困難を乗り越える、問題を解決する。

●選手の能力を見抜く
・選手の現時点での強みを理解する。
・選手のキャラクターを生かす。ほかの人と同じにする必要はない。
・理解が早いか、性格は、どういう試合をするかなどを参考にする。

●よいコーチング
・選手のできる最善のプレーを導く協力をする。
・選手と信頼と尊敬の関係を築く。

●よいコーチの資質
・コミュニケーション能力がある。
・常にチャレンジと上達することを望む。
・分析と直観のバランスがとれている。
・選手の手本になれる。
・革新的な考えを思いつき、それにともなう計算された危険を理解している。
・忍耐力がある。
・以上を土台として、選手をどこに導いていくのかというビジョンを持っている。
・ビジョンには、いくつかの明確な正しい方向性にあるゴールを設定している。そのボールに達成する可能性と、それにはどんな危険があるか理解している。

●選手育成の方法
1武器をつくる
サービス、フォアハンド、ボレー
2ゲームの中に組み入れる
3武器を組み合わせる
・自分でゲームを組み立てる(ポイントを取りにいく)という思考を持つ。
・ひとつの武器だけでジュニアは通じるが、上のレベルを目指すには組み合わせが大切。

●2対1のドリルでの選手の考え方(シングルスコートだけで練習する)
・常に相手は2人のため、真ん中に打たない。サイドラインを狙う気持ちを持つ。
・すべての考えられるショットを組み合わせる。
・すべてのショットには意味がある。
・困難な状況に打ち勝つ精神力を鍛える。

●2対1でのポイントの考え方
・どうやってポイントを取るかプランを持つ。
・以下のことは最低限できること。
ボールをコートに入れる
チャンスがくるまで待つ。
常に攻めに出られるポジションに戻る。
・コーチの情報に従えばよいわけではない。
・相手にいかにプレッシャーをかけるか。
・ときには、相手に攻めさせることもあり得る。
・テニスは攻守のバランスゲーム。攻める際はチャンスを逃さない。
・自分の判断とコーチの判断は、ときとして異なる。

●試合や、ポイント練習で心がけること
・自分自身の能力を試す機会と考える。
・自分の武器を使い、自分の弱点を隠す。
・常にどうしたらその目の前のポイントが取れるか、探し求める。
・相手の好きなパターンを読み、そのパターンをさせない。
・ゲームの勝敗のみにとらわれない。自分がそのゲームでポイントを取るために、最善の方法で、最善の努力をしたと言えるなら、自分に誇りを持ちなさい。
・ゲームは今日勝ったから明日も勝つというものではない。今日負けたから明日も負けるというものでもない。
・毎日やり続ける。攻撃の方法を学ぶ機会である。
・相手にプレッシャーをかけること。
・負けている試合中に作戦を変えることも必要。

●強い選手は以下のような能力を持つ
チャンスがやってくるようなショットを自分から打てる。
何時、何をしたらよいか知っている(判断力にすぐれ、それを実行できる)。
自分を信じている。

●攻撃的なテニスをするには
ベースラインから必要以上に下がったポジションにいない。
サイドラインを狙う。
チャレンジにともなうリスクを恐れない。

●チャンピオンになる
・チャンピオンというのは生きる姿勢であり、自分の能力を100%出すことである。決してランキングなどで表現するものではない。
・チャンピオンは、ひとりでも決断を下す。自信を持っている。
・自分自身の考えを持ちなさい。それは他人と違うかもしれない。
・チャンピオンは考えが鋭く、決断を正しいときに正しく下せる。

●テニスでトッププレーヤーになる
・ワールドクラスの才能がある。
・テニスを愛する。
・苦しいとき、自分自身をプッシュできる。プレッシャーに立ち向かう。
・自分を信じる。
・困難に打ち勝つ。努力する。

●チームで学ぶ有利性
・情報を共有できる。
・正しい考え方を共有できる。
・同じ目標を持っていれば、ライバルではあるが協力もできる。
・チームで助け合えば、大きな難題も突破できる。
・コーチと1対1よりもチームのほうがコーチと選手の関係が保ちやすい。
・ひとりより多くの数からのほうが成功者が生まれる可能性が高い。

●ジュニアの両親との関係
・必要以上の会話を持たない。
・質問などの要点をまとめて、5〜10分以内で終わらせる習慣を持つ。
・親としての役目を、コーチとしての役目は違う。

●子供にテニスをしたいという動機を与える
・コーチの責任である。
・若いジュニアほど、彼ら自信では強い動機は持てない。
・うまくいかないときに、ジュニアやほかのせいにするな。自分非難せよ。

●経験をさせる
・もし、将来プロになりたいのなら、小さい頃に海外での経験を積ませる。
・「Taste(どんな味か)」を与える。
・14歳以下の大会で勝つようなら、16、18歳以下の大会に出してみる。上の段階でテストしてみる。チャレンジさせてみること。

●日本のコーチの問題点(課題)
選手の発達過程において限界を設定して、否定的になりやすい。
情報を集めるが、整理して、理解して保存できない。いらない情報は捨てる。
熱心さは強いがビジョンを持っていない。
ものごとを複雑に考えすぎる。だから、本質が見えない。
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ボブ・ブレット◎1953年11月13日、オーストラリア生まれ(享年67歳)。プロテニスプレーヤーとしてサーキットを転戦したのち、故ハリー・ホップマンに見出され、プロコーチとなる。ツアーコーチとしての活躍はトッププレーヤーの集団ロシニョールチーム・コーチに始まり、ボリス・ベッカー(ナンバーワンになるまで)、ゴラン・イバニセビッチ、アンドレイ・メドベデフ、ニコラス・キーファー、マリオ・アンチッチ、マリン・チリッチら多数におよぶ。また松岡修造の恩師でもあり、松岡がプロへ進むきっかけもつくった。松岡と築いた師弟を超えた友情から、日本テニスとのかかわりは深く、デ杯日本代表チーム・スーパーバイザーを務めたこともある。また、修造チャレンジ・トップジュニアキャンプの指導は20年以上継続し、日本男子の底上げに尽力。今の日本テニスへとつなげた。

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