より良いダブルスをプレーする方法を教えよう!❶ブライアン兄弟がコーチを語る
David Macpherson
デビッド・マクファーソン◎1967年7月3日生まれ、オーストラリア・タスマニア出身。アメリカ・フロリダ在住。プロ転向は1985年。2004年現役引退。ATPダブルス最高11位(1992年11月)。インディアンウェルズ優勝を含め、キャリア通算16勝
インタビュー◎ポール・ファイン 翻訳◎木村かや子 写真◎小山真司、Getty Images、本人私物 イラスト◎サキ大地
世界トップダブルスのボブ&マイク・ブライアン兄弟にとって、 最愛のコーチであり、 第二の父と慕うのがデビッド・マクファーソン
「彼はダブルスの天才だ」
「僕らと彼は“決して満足することはない”という哲学を分かち合っている」
現役時代は ダブルス世界11位だった
あなたが大のダブルス好きで、四六時中、偉大なボブ&マイク・ブライアンを追っているのでない限り、おそらく「デビッド・マクファーソン」の名前を聞いたことはないだろう。この快活なオーストラリア人は、より高い評価と認識を得てしかるべきだ。というのも2005年以来、彼は有名なブライン兄弟を、彼らの16のグランドスラムのダブルスタイトルのうち15と、五輪金メダル、39のマスターズの栄冠、そして総じて10シーズンの年末ダブルス・ランキング1位の座に導いた。
2014年、マクファーソンはスイスのロジャー・フェデラーとスタン・ワウリンカのコーチを務めて彼らをデビスカップ・タイトルへと導き、その年のワールドチーム・テニスの最優秀コーチに選ばれた。
もっとも敬意を受けるプロコーチのひとりになる前に、現在52歳のマクファーソンは、スティーブ・デブリーとともにATPダブルスチーム・ランキングでキャリア最高の11位にまで至っている。彼はまた16のATP大会でダブルス・タイトルを勝ち獲り、その中には1992年マスターズ・シリーズのインディアンウェルズもあった。
マッカは兄弟、双子の僕らを
完璧に理解している
親しみを込めて『マッカ』とあだ名されるマクファーソンは、ブライアン兄弟との並外れた成功に、大きな化学作用をもたらしている。「我々は、いい友達同士なんだ」と、彼は言う。「私はコーチの仕事が好きだ。そして彼らはプレーすることが大好きなんだ」。
その感情は、相互的なものだ。コーチングの期間がわずか数ヵ月、ときに数週間しかもたないことが多々あるスポーツの世界で、ブライアン兄弟はマクファーソンとの近しい関係を、もう15年も謳歌している。
「マッカは僕らを完璧に理解しているんだよ」と、マイク・ブライアンは言った。
「彼は、僕らがいかに強く勝ちたいと願っているかを知っており、毎日毎日、僕らの激烈さとプロフェッショナリズムに匹敵するものを見せてくれている。彼は驚くほど自分の仕事に献身しており、常に対戦相手、ライバルたちよりも巧く仕事をやってのける。多くの勝利とタイトルにも関わらず、僕らが間違いなく目標をより高いところに据え、己を上へ上へと駆り立て続けるよう、彼がしっかりと取り計らっているという点を、僕らは非常に気に入っているんだ。僕らは“決して満足することはない”という哲学を、分かち合っているんだよ」
マイクはまた、「マッカは僕らにとって、第二の父のような存在なんだ」とも言った。彼らの両親で元世界クラスのテニスプレーヤーだった、ウエインとキャシーが、彼らにテニスを始めさせた。
「彼は、僕ら兄弟の人間的関係、双子の間のデリケートな動力学をわかっている。彼は、僕らの間に介入するのにふさわしい時、というのを理解しており、だからと言って、決して片方の意見をサポートするようなことはしない。僕らが試合のためにコートに出ていくとき、彼は常に、間違いなく僕らが同じものを目指し、僕らのエネルギーがポジティブな形で正しい方向に向かっているよう、確認しているんだ」とマイクは言う。
「それに、厳しい成績の嵐を切り抜けることに関し、彼ほど回復力のある者に会ったことがない。彼のゆるぎない楽天性が、僕らのチームの士気を高く保ち、僕らが立ち直り、奮起して、より強くなって戻っていくことを可能にしてくれているんだ」
賢明で抜け目のない
コーチング、ダブルスの天才
テニス史上もっとも偉大なダブルス・チームは、マクファーソンの賢明で抜け目のないコーチングの知性を、その素晴らしい人格、心理学的な知識同様に高く評価している。
「マッカは、ツアーで僕らと対戦したことがある。だから僕らをコーチするにあたり、対戦相手の観点を持ち込むことができるんだ」とボブ・ブライアンは言った。
「彼は、僕らの強さを知っているが、より重要なことに、僕らのテニスの中で彼が弱みとみなし、向上が必要と考えている分野を、僕らに伝えることができるんだ。マッカは、僕らほど肉体的にパワフルではないが、驚くほどポーチ(ラリーに飛び込んでいってボレーで決める)がうまい。彼は型にはまらないフォーメーション、巧妙なボレー、そして詳細にわたって考えられた綿密なゲームプランを使い、ツアーで成功を収めた」とボブは思い返した。
「彼は僕らに、これらすべての知識をもたらしてくれた。そして僕らは、僕らの目標を達成する助けとするために、それを使ったんだよ。マッカほど前向きで、ハードワーカーで忠実な人はほかにいない。彼はダブルスの天才だ。彼は僕らの最大級の敬意を勝ち取っており、これからも人生を通しての友達であり続ける」
このあと続くインタビューの中でマクファーソンは、「ダブルスの基本」と「優れた技術」「細かな要点」を中心に、彼の膨大な専門知識を日本のテニスマガジンの読者に分け与えてくれた。(「❷ダブルス最大の変化」に続く)
2019年3月のマイアミで優勝したブライアン兄弟の現チーム。左端がマクファーソン
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