家族の絆を手に、初のセンターコートでコルダが20歳として最後の試合に勝利 [ウインブルドン]

写真はセバスチャン・コルダ(アメリカ)(Getty Images)


 2年ぶりの開催となる今年3つ目のグランドスラム大会「ウインブルドン」(イギリス・ロンドン/本戦6月28日~7月11日/グラスコート)の大会5日目は、男女のシングルス3回戦などが行われた。

 セバスチャン・コルダ(アメリカ)は20歳として最後の公式戦でのショット――それはウインブルドン3回戦での勝利を決めるオーバーヘッドのウィナーだった――を打ち込んだあと、両手を上げてから屈んで手を膝に当てた。

 センターコートのゲストボックスでは、1998年オーストラリアン・オープン優勝者である彼の父が驚くほど似た仕草をしていた。まず両手を上げ、それから前屈みになって席の前の手すりにつかまったのだ。

 コルダ一家の子供たちは今、非常によくやっている。彼はチェコに生まれた2人の元テニスプレーヤー息子で、彼にコートで落ち着きを保つことを教えたのは母のレジーナだった。彼の2人の姉は女子ゴルフのトッププロで、最初のメジャータイトルを獲ったばかりのネリーは世界ランキング1位に上り詰めた。そして彼自身も今、彼の国がかなり長いこと待ちわびていた男子テニスのスターになり得る存在であるように見えている。

 グラスコートに適したアグレッシブなスタイルで、コルダは第22シードのダニエル・エバンズ(イギリス)を6-3 3-6 6-3 6-4で退けウインブルドンで4回戦に進出した2003年ベスト4のアンディ・ロディック(アメリカ)以来最年少のアメリカ人男子プレーヤーとなった。

「信じられないほど心地よかったよ。今日は完璧だったね」とコルダは振り返った。

 彼の父であるペトル・コルダ(チェコ)は「まだ終わっていない。すべてが完了するまで祝わないでおこう」と語り、本質的に急がない姿勢を取った。

 ここまでの大会でもっとも暖かったその日、黒い野球帽を被ってときどき白いタオルを肩にかけたペトルは絶えず動き続けていた。どのスポーツのどのレベルであれ、競技をしている子供を持つ親には観客席で身をよじる彼の気持ちが理解できるだろう。

「本当にヒヤヒヤしたし、心臓に悪かったよ。正直に言って、常に歩き回れるゴルフコースのほうがずっと楽だね」と彼は2人の娘のプレーを観ることを引き合いに出して言った。

「でも“セビ(セバスチャン)”との場合、私はじっと座っていなければならない。簡単なことじゃないよ」

 ここでひとつ、彼の息子がどれだけ急速に成長しているかを示す小さな尺度を挙げよう。コルダは2001年以降で、21歳になる前にオールイングランド・クラブとロラン・ギャロスの双方で4回戦に進出した8人目の男子選手なのだ。

 他の7人のうち4人はそのまま成長を続けて世界ナンバーワンとなり、グランドスラム大会で複数のタイトルを獲得した。その4人とはロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)、レイトン・ヒューイット(オーストラリア)だ。他の3人もマリン・チリッチ(クロアチア)が一度グランドスラム大会を制し、トマーシュ・ベルディヒ(チェコ)とステファノス・チチパス(ギリシャ)は決勝の舞台に立った。

 ロディックの2003年USオープン優勝は、未だにアメリカ人男子にとってシングルスでは最新の四大大会タイトルであり続けている。これはビル・チルデン(アメリカ)、アーサー・アッシュ(アメリカ)、ジミー・コナーズ(アメリカ)、ジョン・マッケンロー(アメリカ)、ピート・サンプラス(アメリカ)、アンドレ・アガシ(アメリカ)など数々のチャンピオンを輩出した国の歴史でもっとも長い日照り状態だ。

 ちなみにグランドスラム大会を8度制したアガシは、コルダにとってある種の師匠だ。ふたりは昨年末にラスベガスで2週間一緒に練習し、今でも電話で頻繁に話をしている。

「昨日彼が僕に言ったもっとも重要なことは、“ただ楽しめ”ということだった。『これは君にとって初めてのウインブルドンのセンターコートだ。ただそれを謳歌し、多くの楽しさを味わうんだ』と話してくれたよ」とコルダは明かした。

 ミドルサンデーを挟んだ月曜日、21歳の誕生日を迎えるコルダはフランシス・ティアフォー(アメリカ)を6-3 6-4 6-4で破って勝ち上がった第25シードのカレン・ハチャノフ(ロシア)と対戦する。

 これはコルダにとって初のウインブルドンで、グランドスラム本戦出場自体が3度目に過ぎない。彼は昨年のフレンチ・オープンで予選から4回戦に進出した際に脚光を集め、そこで憧れの選手でもあるナダルに敗れた。彼は愛猫を、ナダルにちなんで“ラファ”と名付けていた。

 試合でプレーする金曜日まで彼は選手としてもファンとしてもウインブルドンのセンターコートに足を踏み入れたことは一度もなく、携帯電話を取り出してビデオを撮りたい誘惑に耐えた。

「テレビではプレーヤーたちが部屋を通り抜けて階段を下りてくる様子を映像で見せているだろう?。僕は『信じられない。これから起きることは僕が一生覚えていることになるに違いない』と思ったよ」と彼は語った。

 3回戦でのコルダはバリエーション豊かないつものサービスと両サイドからの強力なグラウンドストローク、そしてネットに行こうとする意欲を見せた。彼はネットに43回も出て行き、そこで30ポイントを奪った。

 エバンズは一方的な母国の観客たちからの声援に支えられていたが、コーチに向かってぶつぶつ言ったり悪態をついて主審から警告を受けた。

「彼はよくやった。力強いテニスを見せたよ。明らかに彼は、非常に優れたプレーヤーになるだろうね」と現在イギリスのトッププレーヤーであるエバンズは相手を称えた。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

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