「ようやくコートの感触を掴めた」4回戦突破のフェデラー [ウインブルドン]

ファンに手を振ってコートを去るロジャー・フェデラー(スイス)(Getty Images)


 2年ぶりの開催となる今年3つ目のグランドスラム大会「ウインブルドン」(イギリス・ロンドン/本戦6月28日~7月11日/グラスコート)の男子シングルス4回戦で、第6シードのロジャー・フェデラー(スイス)が第23シードのロレンツォ・ソネゴ(イタリア)を7-5 6-4 6-2で下してベスト8に進出した。

 「ここまで戻ってくるための努力が実を結んだのはうれしい。5セットマッチをこのレベルで戦えている。ただし、5セットマッチを連日戦うのと、1日置きに戦うのでは全然違う話だ。大会も毎週出続けるのと1週間空けてから次の大会に行くのとでは違う。若いときは何の疑問もなくこなせるけど、僕のように39歳になると疑問だらけになる。自分がそのスケジュールで実際にできるのかどうか、証明しなければならないんだ。ウインブルドンが始まるころまでに、朝起きて気分がよく、5セットマッチを戦えると感じられる日がくるのを待っていた」

  ここまでのフィジカル状態もいいようだ。

「凄くやりがいがあるし、とても気分がいい。これから先は、あとどのくらいのエネルギーが自分の中に残っているか見てみよう。今日もストレート勝ちできたことは物凄く重要なことだ。次の試合を楽しみにしている」

 この日も屋根が閉じたことで、屋内と屋外で大きなコンディションの差があると理解した。

「インドアと外での条件の違いがよく分かり、興味深かった。サーフェスが滑りやすくなり、湿度が上がっていた。外では風もあって爽やかだったから、あまり汗をかいていることさえ感じていなかった。それでも外のサーフェスは速い。インドアになると、サーフェスはだいぶ遅くなることが分かったよ。それが1回戦でアドリアン・マナリノ(フランス)に苦戦した理由のひとつだと思う。サーフェスの状態以上に、彼がベースライン上で主導権を握ったのが苦戦した大きな要因だったのは確かだけど」

 インドアでボールに威力が出にくい。

「今日の試合では、屋根が閉じたあとにソネゴがいいサービスを打っても自分はしっかりリターンすることができた。これほどインドアと外ではコートの状態が大きく変わると分かり、驚いたよ。インドアのほうがサービスエースが出やすいと思う人が多いかもしれないけど、僕はそうは思わない。ショットにさらにパワーを込めて打たないと、威力が出ないんだ。この大会の序盤に屋根が閉じられた中でなかなかサービスエースを打てなかったけど、その理由が今日よく分かった」

 今年のウインブルドンのコンディションにだいぶ慣れてきた。 

「そして今は他のショットでも対応力が上がってきた。ボールを早いタイミングで捕えられるようになった。このコートのスピード、ボール、そしてサーフェスなどのコンディションに慣れてきた。ハーフボレーやライジングの早いタイミングでより多く打てるようになった。このような細かいことが最後に結果を分けるものなんだ」

 明日の試合からは、センターコートで満員の観客が入ることが予想される。

「明日から満員になると言うけど、僕はすでに満員のような感じがしていた。ウインブルドンのファンは本当に素晴らしい雰囲気を作り上げて、選手を後押ししてくれるんだ。パリでのナイトセッションでは観客が5人しかいなかったから、満員はさぞや凄いことになるだろうね。違いは大きい。ロレンツォがコートを去ったときの歓声を聞いたか? あの歓声のためにプレーしているんだ」

 無観客では本来の力を発揮できない。

「もしウインブルドンの決勝で無観客の中で優勝したら、どんな意味があるのか考えてみた。去年は無観客、或いは少しだけのお客さんの前でプレーする選手たちを見てきた。もし自分なら70%、或いは100%の力を奪われてしまうだろう。無観客でもウインブルドン王者になりたいが、絶対に観客が入ったときと同じように感じることはない。それほど、僕は観客が戻ってきたことを喜んでいる。このまま続いてほしいよ。この大会、EUROやこの先に行われる大きな大会が、多くの人々にとって大きな負担にならないことを祈っているよ」

 ジョハナ・コンタ(イギリス)が大会直前に濃厚接触者として棄権を強いられたこともあり、油断はしていない。

「今の状況を楽しみたい。テニスは外で行われ、スペースも広いから自分が安全だと感じられる。でも、まだツアーをたくさん回ったわけじゃないから、人との接触には細心の注意を払っているよ。ジョハナのケースもあるからね。今もバブルの中にいると強く感じられるけど、できるだけ早く前に進めればいいと思う」

 スイス観光協会の仕事をしており、スイスの山々で育った経験を子供たちにもしてほしいと願っている。

「子供の頃はよく親とハイキングをした思い出がある、父はスイス東部のライン渓谷の出身だ。人々にとってハイキングは日常的なもの。母は南アフリカ出身でアウトドア派だ。僕らにとってハイキング、バーベキュー、休暇や週末に山に行くのは生活の一部なんだ。バーゼルも素敵な街だけど、父や祖父母が育った場所ほど美しい場所ではない。だから、僕はそこまで山の中で育っていないんだ」

 現在は山の中に移り住み、その生活を満喫している。

「今は子供たちにも自分と同じ経験をしてもらおうとしている。2016年はあちこちを連れ回ったよ。当時の僕より年齢が上だから、長い旅ができた。楽しんでいるよ。自然は大きなエネルギーをくれる場所。現在は山の中に住んでいるから、大きく変わったね。雪の中での運転に慣れなければならなかった。バーゼルではそこまで積雪量がなかった。夏と冬でまた全然違うのがいい。どちらが好きか、はっきり答えられないくらいどちらも魅力にあふれている。そして家族もそれを楽しんでいる。山の中に住むことにして本当によかったと思う」

 フェデラーは準々決勝では、第2シードのダニール・メドベージェフ(ロシア)と第14シードのホベルト・ホルカシュ(ポーランド)の勝者と対戦する。この4回戦はメドベージェフが6-2 6-7(2) 6-3 3-4でリードしているところで中断している。(テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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