「止めることはないよ」準々決勝でフルカチュに敗れたフェデラー [ウインブルドン]

ホベルト・フルカチュ(ポーランド)に敗れたあと記者会見で話すロジャー・フェデラー(スイス)(Getty Images)


 2年ぶりの開催となる今年3つ目のグランドスラム大会「ウインブルドン」(イギリス・ロンドン/本戦6月28日~7月11日/グラスコート)の男子シングルス準々決勝で第14シードのホベルト・フルカチュ(ポーランド)に3-6 6-7(4) 0-6で敗れた第6シードのロジャー・フェデラー(スイス)が記者会見で試合、今大会、復帰までの過程と今後について語った。

「この数試合、回復するのが難しかった。連戦に慣れていない。観客は素晴らしかったし、改修で綺麗になっているのは、ここでプレーする理由のひとつだ。満員の観客が見られて本当によかった。残念ながら、彼らに自分のストレート負けを見せてしまった。それでもここで何年もの間応援してくれたこと、そして今日の応援に感謝している。みんな本当にテニスを観ることを楽しんでいる。ここの観客は選手の能力を最大限に引き出そうとしてくれる。今日の終わり方は厳しいものがあった」


満員のセンターコートでサービスを打つフェデラー

 ウインブルドンでプレーするのがこれで最後になるのか?

「(即答で)分からない。ふたたびウインブルドンでプレーすることを大きな目標にしてきた。昨年はパンデミックで不可能だったが、今年は実現できた。ウインブルドン後のことはじっくり話し合いたい。いま終わったところだから、今夜は少し話すし、今後数日の間に自分の気持ちがどうなるか。そこから、大会でより勝つチャンスが大きくなるように、よりよいコンディションになるためには何が必要かを突き詰めていく。ここまで勝ち上がれたことにはすごく満足している。自分が乗り越えてきたことを考えると、ウインブルドンで見せた自分のプレーのレベルにも満足している。当然、来年もプレーしたい。でもこの歳になると、今後何が起こるか分からない」

 まだベストの自分とは程遠く、実戦経験が足りないのか?

「試合が足りないかどうかは分からない。試合を重ねても体の状態はよかった。ここまでドーハ、ジュネーブ、パリ、ハレで敗戦を重ねながら、ウインブルドンを戦える状態に仕上げられた過程には満足している。最高のレベルでもっと勝ち進むには、もっといい選手にならなければならない。今日対戦したフルカチュ、ハレで対戦したフェリックス・オジェ アリアシム(カナダ)がそれに気付かせてくれた。フィジカル面で足りないと難しくなる」

 東京オリンピックに出場するかどうかは、これから決める

「数日、ゆっくり考えたい。すべてはウインブルドンが終わったあとに考えようと思っていた。だから、これから考える。今は何も話せない。きちんと皆の前で発表するよ」


バックハンドを放つフェデラー

 引退も考えているのか?

「いや、ただ先を考えないといけないんだ。リハビリを行うとき、目標が必要だ。山を一辺に登ることは不可能だ。一歩ずつ登らなければならない。ウインブルドンが自分にとって、最初の大きな大きなステップだった。その一歩目が終わったところですべてを検証しないといけない。“何が上手くいったのか、上手くいかなかったのか、体の調子は? 膝の状態は? メンタルはどうか?” 見て分かるように、ここまできたことに物凄い努力が必要だった。特にハレでのフェリックス、今日のフルカチュとの試合では思うようにできなかった。難しくなるのは分かっていた。急がずにゆっくりと時間を取って、チームや必要な人と話して、じっくり考えて自分が一番いいと思えるような正しい判断をしたい。いつでもプレーすることがゴールだから、止めることはないよ」

 途中までリードしていた第2セットがポイントになった。

「試合前はチャンスがあると思っていた。サービスをキープして、相手のセカンドサービスで得意なラリーに持ち込めばチャンスがある。自分の流れに持っていければいいと思っていた。でも、第1セットで自分のサービスのリズムが掴めなかった。難しい局面に自分を追い込んでしまい、チャンスがあったときに生かせなかった。第1セットよりいいプレーをして、第2セットを何とかして取らなければいけなかった。第2セットで4-1だったかな。キープされて4-2となり、そのあとにブレークされたのが痛かった。第2セットを奪われると相手の流れになり、難しかった。彼のほうがよいプレーをして、勝つのに値した」


準々決勝を終えて健闘を称え合うフルカチュとフェデラー

 復帰へのプロセスは楽しめた。

「プロセスは信じられないほど遅かった。もっと早く復帰できると信じていた。自分が設定したゴールは昨年のウインブルドンでいい状態に戻すことだった。今年かろうじてそれが実現できただけだ。長く、険しい道程だった。でも過程を楽しめた。遅かったのは確かだけど、常に前に進めていたから。このようなリハビリは経験したことがなかった。リハビリは少しネガティブなものだが、初めての体験で楽しめた」

 若いときのようには動けない。

「リハビリは目標を立ててそれに向かっていくんだ。最初の段階は足を引きずらずに普通に歩けるようになること、走れるようになること。テニスのステップが踏めるようになったら、ふたたびコートに戻ってくることができる。予想以上に時間がかかったが、とにかく着実に前に進めて後退することが一度もなかったのがうれしい。でも、明らかに自分のプレーで足りないものがある。10年、15年、20年前なら自然にできたことが、今はそうはいかない。頭で考えて、こうしようああしようとして体を動かさないといけない。コートでアイディアが浮かんでもできないことがあって、難しいときがある。相手が強いと難しくなる。しかし、準々決勝までこられたことにチームも自分も満足している。当然、負けて残念だし、勝つチャンスもあったと思う。でも大丈夫だ。次に繋がるものだったから」


敗戦後、プレーヤーズブリッジを渡るフェデラー

 この敗戦を乗り越える。

「今はとても落ち込んでいる。でも同時に大会が終わると大きな重荷がひとつ取れるものなんだ。大きなゴールに辿り着いたか否かは関係なく。今すぐ寝られるほど、物凄く疲れている。少し面白い精神状態だ。自分が全精力を傾けていたことが終わったら、精神的に摩耗して直ぐにでも寝られる。この18ヵ月は長かったし、大変だった。でも、この数ヵ月、数週間に起きたことに満足もしている。すぐにエネルギーは戻ってくるはずだ。この状況への対処法は分かっているつもりだ。今は悲しく落ち込むが、数時間後、数日後には大丈夫だ。自分がどう感じたかをチームと話すよ」(テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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