岡山学芸館(岡山)が初優勝、第一薬科大学付属(福岡)との攻防を制す [北信越インターハイ]
第78回全国高等学校対抗テニス大会および第111回全国高等学校テニス選手権(北信越インターハイ テニス競技/8月2~4日 団体戦、8月5~8日 個人戦/浅間温泉庭球公園、やまびこドーム、信州スカイパーク庭球場/砂入り人工芝コート)の3日目は男女団体の準決勝と決勝が行われ、女子は岡山学芸館(岡山代表/8大会連続16回目の出場)が第一薬科大学付属(福岡代表/初出場)を決勝で破り、初の全国制覇を成し遂げた。
岡山学芸館(左)対第一薬科大学付属
大会開催地の松本市はこの日、ぐんぐん気温を上げ、決勝が行われた15時の時間帯に35度を記録、それによって「特別ヒートルール(※)」が初めて適用された。そのとき両校は勝負がかかったダブルスの真っ最中で、同前華伶来③/原田遥②(岡山学芸館)が大坪花③/住吉凛①(第一薬科大付)に7-6(2) 3-3と、第1セットを奪ったあと、第2セットをイーブンにしている状況だった。そこに10分の中断(休憩)が入った。
(※)特別ヒートルール〜会場での気温が35度以上になった場合、またはWBGTが31度になった場合、かつ試合時間の2時間を超えた場合に、偶数ゲーム終了後に、コート外の日陰での10分間の休憩(セットブレークの120秒を含む)が認められる。
同前華伶来③/原田遥②(岡山学芸館)
決勝は3面同時に始まり、まずS2小林杏奈②(第一薬科大付)が中島玲亜③(岡山学芸館)を6-3 6-3で破った。続いてS1吉本菜月③(岡山学芸館)が宮原千佳②(第一薬科大付)を6-0 6-3で倒すと、勝負の行方がダブルスにゆだねられた。
ダブルスは流れが行ったり来たりしていた。第2セットに入ると、先にサービスを打ち始めた大坪/住吉(第一薬科大付)が、比較的余裕でキープしていく。流れは大坪/住吉に傾いていたように見えた。
大坪花③/住吉凜①(第一薬科大学付属)
そこに、暑さを避けて日陰に入り、氷を当て、心身を休ませる措置が取られた。身体を守るための大切なルールだが、10分後にふたたび、それまでのように高い集中ができるのか、最高のプレーができるのかが試されることになった。
1年生の住吉(第一薬科大付)のサービスでゲームは再開。3年生の大坪と力を合わせふたりは戦おうとするが、ストロークミスが2回、ダブルフォールトが1回で0-40、そして相手にボレーエースを決められてラブゲームでブレークされた。10分前とは明らかに“違った”。同前/原田の岡山学芸館ペアはその隙を見逃さず攻撃に出て、4ゲームを連取。待ち望んだその瞬間はやってきた。
メンバーは肩を抱き合い、涙を流して優勝を喜んだ。第一薬科大付のも、違う涙を流した。
◇ ◇
先に決勝進出を決めたのは岡山学芸館だった。地元開催のインターハイで初優勝を飾りたい松商学園(長野)との準決勝。S1吉本が松商の柱、中山友里③を6-3 6-0で圧倒した。松商の出端を挫くと今度は、S2中島が砂田三樹②を6-2 2-6、最終セット[10-6]と、10ポイントタイブレークを制し、シングルス2本で勝ち上がった。
吉本菜月③(岡山学芸館)
インターハイ33回出場の松商学園は、「地元開催のインターハイで優勝することをずっと目指してきた。それはときに力になるが、ときにプレッシャーにもなった。準決勝ではよくない面が出たかもしれない」と松商学園の山本哲生監督。「センバツの準決勝(四日市商業と対戦)で負けてから、鍛え直してここまできた。日本一には届かず悔しいが、何千校の中から勝ち上がった4校の中に入ったと考えると誇りに思える」と話した。
中山友里③(松商学園)-
◇ ◇
もう一方の準決勝は、第一薬科大付が四日市商業(三重)を2勝1敗で下して勝ち上がった。3面同時進行で行われたダブルス、S1、S2のうち、第一薬科大付はダブルスとS2で第1セットを先取。それが四日市商にプレッシャーをかけた。3試合はいずれもファイナルセットまで持ち込まれ、10ポイントタイブレークがスタート。ごくわずかなポイントの行き来が勝敗を決める緊迫した戦いの中で、第一薬科大付のS2小林が[10-4]で勝利を決め、S1宮原が[10-8]で続いて、一気に決勝進出を決めた。そのときダブルスは、四日市商の丸山愛以③/久保結希凪③が[7-6]でリードしていたが打ち切られた。
五十嵐唯愛③(四日市商業)
四日市商の金山敦思監督は、「団体戦の3ポイントには流れがある。ダブルスの第1セットを5-2とリードしていて決められず。5-4でセットを取るチャンスもあったがそれも取れずにタイブレークへ。そのタイブレークも落とし流れが悪くなった。S2小畑莉音③もファーストセットを落として、S1五十嵐はファーストセットを取っていたのにプレッシャーを感じてしまった」と振り返った。10ポイントタイブレークは、「攻めるよりミスを待ってしまったところがある。攻撃の姿勢を変えてはいけなかった」。
四日市商業(試合前)
◇ ◇
岡山学芸館(岡山)と第一薬科大付(福岡)は、どちらが勝ってもインターハイ初優勝だった。これまでの優勝校の顔ぶれを見ていくと、関東、近畿勢が圧倒的に多く、続いて東海、九州勢が続く。2016年の野田学園(山口)、2005年、09年の仁愛女子(福井)、1969年と1952年の安田女子(広島)、そして1968年の山陽女子(岡山)の優勝もある。岡山代表の優勝は、その山陽女子から数えて53年ぶりだった。
優勝を喜ぶ岡山学芸館
そのほか優勝校コメント
「(第2セット)2-3のとき、次のゲームのあとにヒートルールがあると言われた。大きなゲームになる、流れが変わると思った」と岡山学芸館の岸直浩監督。「センバツ決勝(対四日市商業)で守りに入ってしまった反省があり、例えミスをしても自分たちからポイントを取りにいこうと。(ヒートルール後)リターンから始まったことも大きかった」と振り返った。コロナ禍の大会で無観客、声援なし、拍手のみの制約がある中で、いつもは熱くなり過ぎて反省する自分をおさえられ、冷静でいられたこともよかった点のひとつに挙げた。
中島玲亜③(岡山学芸館)-
優勝が決まった瞬間、大声を挙げて泣いたのが岡山学芸館のキャプテン中島。「団体戦で日本一になることが目標だった。このチームならいけるとずっと思ってきた」。
「全国の舞台で戦う経験って大事だと思った」と言ったのは岡山学芸館のS1吉本。「県大会、中国大会をプレーするだけでは得られないことが全国大会にはある。試合するたび強くなっていくメンバーたちを見てきた」。
準優勝校コメント
第一薬科大付のS1宮原は決勝まで5回のシングルスをプレーし、数々の接戦を繰り広げた。2-6 6-4 [10-8]のような競り勝った試合もあれば、5本のマッチポイントをしのいだあと8-9(4)で敗れた試合もあった。常に全力で戦える理由を尋ねると、「まだ1本あるから大丈夫と思っている。負けず嫌いなので諦めないです」。
宮原千佳②(第一薬科大学付属)
大会4日目となる8月5日からは個人戦がスタート。男子シングルス1~4回戦が浅間温泉庭球公園で、女子ダブルス1~3回戦と準々決勝がやまびこドームと信州スカイパーク庭球場で行われる。シングルスとダブルスの1、2回戦は1セットマッチ、3、4回戦(ダブルスは準々決勝)は8ゲームズプロセット。試合開始時間は9時の予定。
編集部◎青木和子 写真◎菅原 淳
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