“圧”をかける①「ジョコビッチ対チチパス」戦の勝負際、大逆転の始まり【堀内昌一のテニスの戦略と戦術がよくわかるレッスン|第139回】



凡ミス“させられた”チチパス

 チチパスが2セットアップしたあとの第3セットで、あとがないジョコビッチが猛追し始めます。お互いにサービスキープをして、第4ゲームはチチパスのサービスゲーム。40-15と、早々に2つのゲームポイントを握ったチチパスでしたが、そこから追いつかれ、ジョコビッチがブレークをしようと食い下がります。6度のデュースを経て、最後はジョコビッチが5度目のブレークポイントをものにしブレークに成功。そこをきっかけに、ジョコビッチの大逆転が始まりました。





 ジョコビッチは世界一のリターナーと呼ばれる選手です。非常に高い集中力で、“確実に”リターンを打ってラリーに持ち込み、チチパスにしつこく食い下がりました。その“確実に”、が非常に重要で、何でも返してくるジョコビッチに対し、チチパスは自分でポイントを取るより方法がないと感じたはずです。あまりにもミスのないジョコビッチに、チチパスは“圧”を感じることになります。2セットアップの立場でありながら、だんだん苦しそうな表情や態度を見せるようになったことも印象的です。


世界一のリターナー、ジョコビッチ


2セットアップながら、ジョコビッチに徐々に追い込まれていき苦しそうなチチパス

 “圧”という言葉を使うのは、私なりに理由があります。一般的には、“プレッシャーをかける”という言葉を使うことが多いと思うのですが、ここでそれを使うと、“プレー”よりも“気持ちの部分”が強調されるような気がして、あえて使うのをやめました。この場面は、ジョコビッチが行った戦術的プレー(次に解説)がチチパスを追い込んだに違いないのです。

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