初のグランドスラム4強のズベレフ「今までは入れ込みすぎていた」 [オーストラリアン・オープン]

「オーストラリアン・オープン」(オーストラリア・メルボルン/1月20日~2月2日/ハードコート)」の大会10日目、男子シングルス準々決勝。
 
 アレクサンダー・ズべレフ(ドイツ)の2020年のスタートは3連敗と、最悪のものだった。多くの問題を抱えたズベレフは、オーストラリアン・オープンの準備に多くの時間を費やした。

 今季最初のグランドスラムが開幕する一週間前は、朝早く起きてコートに出て一日7時間も練習したという。

 その特訓の成果は大会で現れた。大会が始まると非常にリラックスした表情や態度を見せ、準々決勝に進出した。彼はそこでどんな戦いを見せたのか?

 ドイツの22歳ズべレフは、自身初のグランドスラムの準決勝に進出した。だが、メルボルン・パークでの準々決勝は、最悪のスタートを乗り越えての勝利だった。1-6 6-3 6-4 6-2で、3度のグランドスラム優勝経験を誇る第15シードのスタン・ワウリンカ(スイス)を下した。

「まったく我慢ができなかった。もしかしたら、グランドスラムを意識しすぎていたのかもしれない。言っている意味はわかるかな?」と3度のマスターズ優勝とツアーファイナル優勝1回を誇るズベレフは語った。

「ほかの大会ではすごくいいテニスができていた。グランドスラムは自分にとってあまりに大きすぎる存在だったのかもしれない。今年オーストラリアに来たとき、最悪のプレーしかできなくて、自分にまったく期待していなかったんだ」と付け加えた。

 この日のワウリンカ戦の第1セットは、わずか24分で失った。だが、そこから2m近くの長身を目一杯伸ばしてボールに食らいつき、ワウリンカがミスをするまで粘ってボールを返し続けた。

 ズべレフのサービスはときに安定感を欠く。今季の初戦となったチーム戦のATPカップではすべての試合を落とし、1ゲームに一度の割合でダブルフォールトをおかし続けた。

 ところが、突然試合途中からサービスがバシバシ決まり始め、ワウリンカの分厚い体から放たれる強烈なストロークが弱まっていった。

 1月はズべレフにとって、どれほど酷かったのか?

「フォアハンド、バックハンド、ボレー、ドロップショット、リターン、どれも調子が悪かった。いつも朝目覚めると“すべてが最悪だ”と思った。サービスだけじゃなかったんだ」と冗談交じりに打ち明けた。

 第7シードのズベレフは、今大会の1回戦を前に自虐的になっていた。自分が優勝候補などとは誰も思っていないと周囲に漏らしていた。

 1回戦を勝利で終えると、もし優勝したら賞金全額の400万豪ドル(約4億3600万円)を国中が苦しんでいる森林火災被害の支援に寄付すると発表した。

「この国、この美しい国には家を失ってお金を必要としている人々がいる。また家を建て直し、オーストラリアの素晴らしい自然と動物たちを取り戻すためにもね。僕よりも彼らのほうが有効にお金を使ってくれると思う」

 あと2試合でズベレフの願いは叶えられる。

 ワウリンカの片手打ちバックハンドは、現在の男子テニス界でもっとも恐れられているショットのうちのひとつだ。しかし、この日はそうではなかった。ワウリンカはこの試合でバックハンドから5本のウィナーを放ち、エラーを31回記録した。18本がアンフォーストエラー(凡ミス)、13本がフォーストエラー(強いられたミス)だった。

「第2セットの途中、少しフィジカルが落ちていった。エネルギーも欠いていた」とワウリンカは振り返った。

 グランドスラム19度目の挑戦で初めてベスト4に残ったズベレフ。グランドスラム準々決勝の通算成績は0勝2敗だった。

「グランドスラムで勝ちたいという気持ちが強すぎたかもしれない。少し神経質になりすぎていたかもしれない。誰とも話をしなかったり、友達と出かけたり、いっしょに夕食を食べに行くこともしなかった。あまりに集中して、入れ込みすぎていたんだ」とズベレフは自身の過去の行動を振り返った。

「でも、今大会はいろいろ変えてみたんだ。オフコートでもいろいろなことをしているよ」と彼は明るく言った。

(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

※写真はアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)(撮影◎毛受亮介 / RYOSUKE MENJU)

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