今田穂(慶大3年)が阿部宏美(筑波大3年)との5時間死闘を制し、第1シードの平田歩(慶大4年)に挑む [インカレ]

今田穂(慶應義塾大学3年)写真◎川口洋邦


 全日本学生テニス連盟が主催する学生テニス日本一を決める“インカレ”ーー「2021年度全日本学生テニス選手権大会(男子89回/女子65回)」(三重県四日市市・四日市テニスセンター/予選8月12日〜、本戦16~24日/ハードコート)は、本戦8日目の23日、男女シングルス準決勝(各2試合)、男女ダブルス準決勝(各2試合)が行われた。


平田歩(慶應義塾大4年)

 慶應義塾大の先輩・後輩で、ダブルスでペアも組むふたりの対決は、第1シードの平田歩(4年)が第5〜8シードの永田杏里(3年)に2-6 6-4 6-2と逆転勝ち。平田は準々決勝までの4試合で、各試合の失ゲームが5ゲーム以下という圧倒的な勝ち上がりだったが、永田との準決勝はそうはいかなかった。

 第1セットは永田が粘り強くプレーして、そこに平田が攻め急いだ。今大会で初めてセットを落とした平田だが、それで動揺はせず、むしろ「冷静に、落ち着いて攻めるようにした」。第2セットで仕切り直し、もう一度攻撃し直した。平田のボールが左右にしっかり打ち込まれ、永田がボールに追いつけない場面が増えていった。


永田杏里(慶應義塾大3年)

「第1セットは自分のペースでできたが、第2セットは(平田が)ギアを上げてきて、強さを感じた」と永田。

「それまでの自分なら、第1セットを第2セットまで引きずっていたと思うが今回は違う。プレーしながら自分は成長した、と思った」と平田。

 昨年単複2冠で第2シードの阿部宏美(筑波大3年)との決勝をイメージしていた。「阿部選手に勝ったことがないので、リベンジしたかった」。

 平田のインカレはベスト4、インカレ・インドアは準優勝がこれまでの最高成績。4年生で最後の夏は、もちろん優勝を目指している。それも永田とのペアで単複2冠だ。ただ、明日の決勝は平田がイメージしていた阿部が相手ではなく、慶應義塾大の一つ後輩、今田穂(3年)になった。

 今田との対戦は初。「決勝と思わず、初戦のつもりで、1ポイント1ポイント、石を置いていくつもりで戦う」と、平田らしい表現で決意を述べた。


今田穂(慶應義塾大3年)

 今田と阿部が試合を終えると、それぞれのチームメイトが走り寄り、荷物をまとめて引き上げていった。誰の手も借りずに自分たちの足で歩いていたが、誰もが体力消耗を心配していた。試合が始まったのは10時で、終わったのは15時。阿部はその後、90分休んだあとにダブルス準決勝に臨んで、フルセットを戦った。



 第1セットは7-6(4)で今田が先取した。ディフェンディング・チャンピオンとして今大会は何度もプレッシャーがかかる試合を戦い、必死で乗り越えてきた阿部だが、この試合もまた苦しいスタートになった。

 第2セットは、阿部がリードを保って進んでいたが5-5となって、次の自身のサービスゲームで2度、今田にブレークポイントを握られたがそこも耐えた。そして今田のサービスゲームをブレークし、7-5でセットを奪い返した。

 この日は通り雨もあって非常に蒸し暑い環境。ベンチに戻るたび、ドリンクのボトルがどんどん空いていった。足取りも必然的に重くなっていった。ともに、最初の一球、サービスを打つときにかかる負担が大きい。その中で迎えた第3セット。勝利への執念を見せて、阿部が5-2とリードした。今田の体力消耗のほうが大きく見えていた。そして、ついに今田のサービスゲームで15-40と、阿部が2つのマッチポイントを掴む。

 しかし、あと1ポイントが遠かった。

 5-4でもマッチポイントがひとつあった阿部だが、これを取れずに5-5、リードする阿部を今田がついにとらえた。タイブレークに入って今田がリードを奪う。4-2、6-3、6-5とリードし、最後は阿部のストロークがラインを割った。

 第3セット以降はほとんど気力の戦い。ただ、ポイントを落とすたび、肩を落としていた阿部に対し、今田のほうは何が起きてもそれほど変わらずにいたのが印象的だ。

 阿部は初戦から、前年チャンピオンの重圧をずっと背負って戦ってきた。そのことを最初から認めつつ最善を尽くして勝ち上がってきた。この試合も同じように臨んだが、今田の壁は相当厚かった。


阿部宏美(筑波大3年)

「5-2でリードして、そこから相手が開き直って打ってきた」と阿部。「マッチポイントが何本もあって取りきることができなかった。勝ちが近くなって引いてしまった」。

「今できるベストは出せたと思う。やり切った」と大会を締めくくった。

 ダブルス決勝は、第1シードの永田杏里/平田歩(慶應義塾大学3年/4年)と第2シードの石川琴実/吉岡希紗(早稲田大学3年/3年)の顔合わせとなった。永田/平田は第3〜5シードの阿部宏美/西尾萌々子(筑波大学3年/1年)を 6-3 2-6 [10-8] で、石川/吉岡は予選を勝ち上がった東谷和/宮崎明莉(園田学園女子大学4年/3年)を6-2 6-3で倒して勝ち上がった。平田は女子シングルスと合わせて2冠の可能性がある。

 大会9日目(最終日)の24日(火)は、男女シングルス決勝、男女ダブルス決勝が10時から行われる予定。

 試合形式は、男女シングルス準々決勝以降がベスト・オブ・3タイブレークセットセットマッチ、男女ダブルスはベスト・オブ・3タイブレークセット(第3セットは10ポイントマッチタイブレーク)、ノーアドバンテージ方式(40-40になったらレシーバーがサイドチョイスして1ポイント勝負)で行われる。

 なお、予選が始まった8月12日から降り続く雨は、23日も降っており、これまでに全体の試合の9割程が屋根付きコートで行われた。そこで、今大会は最終日が晴天になったとしてもアウトドアコートは使用せず、これまでと同じ試合環境で試合を進めることが得策であると判断し、引き続き屋根付きコートで試合を行うことを決定した。

編集部◎青木和子 写真◎川口洋邦

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