メドベージェフがプレッシャーとジョコビッチを克服し、USオープンでグランドスラム初優勝

写真はグランドスラム初タイトルを獲得したダニール・メドベージェフ(ロシア)(Getty Images)


 今年最後のグランドスラム大会「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月30日~9月13日/ハードコート)の大会最終日は、男子シングルス決勝などが行われた。

 ダニール・メドベージェフ(ロシア)は自分が史上最高と見なしている男を2時間に渡って凌駕し、それからノバク・ジョコビッチ(セルビア)にとどめを刺すべきときがきた。メドベージェフのサービスと身体が揺らぎ始めたのは、そのときだった。ジョコビッチの『年間グランドスラム(同じ年に四大大会全制覇)』の夢を終わらせようとしながら彼は最初のマッチポイントでダブルフォールトを犯し、次のマッチポイントでも同じミスを繰り返した。

「2つ目はネットの真ん中ぐらいだったね」とメドベージェフは話した。

 最終的に第2シードのメドベージェフはプレッシャーと対戦相手の双方を克服し、日曜日のUSオープン決勝で第1シードのジョコビッチを6-4 6-4 6-4で下してグランドスラム初タイトルを獲得した。

 これ以前に2度グランドスラム大会の決勝に進出していたメドベージェフはいずれも敗れており、今年のオーストラリアン・オープン決勝で彼をストレートで破ったのがジョコビッチだった。

「オーストラリアン・オープン決勝のあと、我々はダニールが特にノバクのような選手に対して自分のテニスをずっと強くする助けとなり得る『炎』を持っていないという感じを受けました。だからこの決勝を別のレベルで戦うためには、この部分が変わらなければならなかったのです」と、メドベージェフのコーチであるジル・セルバラ氏は語った。

「昨日と今日の我々の感触は、今の彼には高いレベルで戦う準備ができているというものでした」

 特にハードコートにおいて、メドベージェフはもうかなりの間高いレベルにいた。2018年以降の彼はハードコートでの勝利数で男子プレーヤーのトップであり、USオープンではここ3年連続で準決勝に進出していた。

 ベストのプレーをしているときのメドベージェフは、ハードコートでは誰にも引けを取らない。そして日曜日には、世界ナンバーワンのジョコビッチを遥かに凌いでいた。

「彼はとても上手くボールをとらえていてショットを打っていた。彼は非常に決意に満ちた様子でコートに出てきた。すべてのショットにおいて、彼が最高レベルの力を出していることが感じられたよ」とジョコビッチは振り返った。

 特にセルバラ氏がこの夏に十分ではないと感じていたサービスにおいて、メドベージェフは16本のエースを決めた。彼はそのサービスを軸に一貫してジョコビッチにプレッシャーをかけ続け、52回あったファーストサーブからのポイントを42本取った。

「今日の彼はサービスが非常によかった。最後のほうはあまりよくありませんでしたが、あれはプレッシャーや緊張のせいでしょう。だから少し違う話しです」とセルバラ氏はコメントした。

 第3セット5-2で迎えた最初のチャンピオンシップポイントで、メドベージェフはファンの立てる騒音が鎮まるのを待つためサービスを打つまで長い時間を取った。しかし彼は観客が自分たちを野次ろうとしていたのではなく、ジョコビッチが試合を長引かせるのを観たかったのだろうと考えていた。そしてジョコビッチはそれをやってのけ、そこを凌いだあとに自分のサービスゲームをキープして5-4と追い上げた。

「5-3のあと、僕の脚はダメになった。5-4では左脚にきて、ほとんど歩けなかったんだ」とメドベージェフは明かした。

「リプレーを注意深く観てみると、僕がタオルを取りに行くときに脚を少し引きずっているのがわかると思う。バレないように意識していたんだ。ノバクに気付かれたらまずいことになるからね」

 次のチャンピオンシップポイントをまたもダブルフォールトで無駄したメドベージェフは最終的に時速約207kmのサービスを叩き込み、ジョコビッチがそれを返すことができずに試合に終止符が打たれた。

 それからメドベージェフはゆっくり奇妙な形で横向きに倒れ、のちにそれはサッカーのビデオゲームでゴールを決めたときのパフォーマンスからインスピレーションを得たものなのだと説明した。しかし真のお祝いは、これからやってくる。

「ロシア人はどうやって祝うかを知っているんだ。ニュースにならないよう願っているよ。もしニュースになるにしても、いい形だったらいいんだけどね。でも僕は間違いなく、来たる数日間はお祝いするよ」とメドベージェフはジョークを交えた口調で言った。(APライター◎ブライアン・マホニー/構成◎テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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