「全仏優勝後はどうしていいかわからなかった」メンタルヘルス、コーチとの関係を語るシフィオンテク [WTAインディアンウェルズ]
WTAツアー公式戦の「BNPパリバ・オープン」(WTA1000/アメリカ・カリフォルニア州インディアンウェルズ/10月6~17日/賞金総額876万1725ドル/ハードコート)の女子シングルス3回戦で、第2シードのイガ・シフィオンテク(ポーランド)が第25シードのベロニカ・クデルメトワ(ロシア)を6-1 6-0で下してベスト16に進出した。
「まず、私から皆にお知らせがあるの。今日がワールド・メンタルヘルスデーだということもあり、3回戦以降の賞金をメンタルヘルスに関する組織に寄付したいと思う。こういう経験は初めてで、今は少し緊張している。メンタルヘルスのサポートは自分にとっても身近なもの。誰かの助けになるために動いたのは初めてのこと。寄付をする組織はまだ決めてない。この試合に勝って決断したから。今後SNSを通してファンへのメッセージを発信していくから、注目して欲しい。これから正しいと思う寄付先を決めたい。やはりちょっと緊張するわ。こういう発表を行うことよりも皆の質問に答えるほうが楽。お願いします」
では試合を振り返ってください。
「まず、自信を持ってプレーできたことがうれしい。集中力を失う瞬間があった2回戦とは違ってこの3回戦では試合を通して集中できた。それができたのはとても重要なこと。シーズンの終盤でメンタル面もフィジカル面も試合にしっかり集中できることは、とても難しいことだから。今日、それが上手くできてうれしい。それが目標でもあった。それがこの試合のカギだった」
メンタルコーチがいることのメリット。
「難しい質問。専門家に聞いたほうがいい答えがもらえるかもしれない。私にとっては、スポーツでそのようにメンタル面でサポートしてくれる人がいるのは重要なこと。そこで得たものをコート上で利用することができるから。メンタル的にも成長できる。人それぞれ考え方は違うけど、選ぶことができるのはいいこと。メンタルコーチが必要ないという人ももちろんいる。最高の選手になるには、メンタルコーチを絶対付けるべきだとは言わない。すべての人が異なる人格で、必要なものもそれぞれ違う。気持ちをいつもオープンかつ柔軟にできるのは素晴らしいことで、メンタルコーチがいるおかげで私はそれが可能になっている。フィジカルや戦術だけでなくメンタル面でも成長できるし、そこは重要な部分でもある。私はスポーツ心理学の専門家ではないから、詳しくは話せないけど」
今日のような素晴らしい試合ができた要因。
「フィジカル面では凄くいい状態にあると感じている。フィジカルコーチはピークへの持っていき方が上手。今日がその日だった。フィジカルコーチは昨日か今日、自分のピークがくると教えてくれた。絶好調のときがくることを彼はわかっていた。私は3回戦でも決勝でも試合前は少し緊張する。ストレスを感じているから、自分のことを客観的に見るのが難しくなる。その大会で数試合戦ったあとはストレスが軽減されるから、自分の状態をより把握しやすい。今日は自分がどんな状態なのかよくわかった。自分にピークについては、自分よりも周りの人のほうがよくわかっていると思う」
フレンチ・オープンで優勝してから、自分にどこまで期待しているのか?
「最初は何を期待していいのかわからなかった。グランドスラム大会のチャンピオンとして戦うのは初めてだったから。日ごとに自分の野心は大きくなっていく。コートに立つと完璧なプレーをしたいと思うけど、それは必ずしもいい考え方ではない。試合はやってみないとわからないものだし。昨年のフレンチ・オープンの前は優勝した経験がなかったから、そのあと起こることに対してどう対処していいかわからなかった。それがメンタルコーチを付けた理由のひとつ。昨年は優勝経験がなかったけど、今年はすでに2大会で優勝している。結果だけに注目するのはよくないけど、テニス選手なのだから結果ももちろん大事。優勝経験が大きな自信になっている。自分のランキングを考えると、来週は何ポイントか失う。でも、今はこの状況を楽しんでいる。2年前は考えられなかった状況に置かれている」
アンディ・マレー(イギリス)と打つことはできなかったけど、少し話はできたようだった。
「彼とは以前にツアーで何度か話したことがある。いい人だということは知っていた。彼は自分のことに集中しているようだったから、少し彼のコーチと話したの。アンディがポイント間に独り言を言って、それで自分の調子を上げているから、その方法を聞いたの。私はコートに立つといつも怒っているような感じになってしまうから。彼がどうやって気持ちをいい状態に持っていっているのかに興味があったの。そしてグラスコートでの技術についても話した。難しい内容だったけど。彼はいい人だし、ユーモアのセンスもある。話す機会があってよかった。このときは疲れているように見えたから、少し遠慮した」
コーチやチームとの関係について。
「私のチームが長く変わらないことがいいと思っている。コーチをパッと変えるようなことはしない。自分の人生でこれまで二度コーチを代えたことがある。私が一番重要視しているのは将来性。アップダウンはどんなときもあるけど、問題があったときに解決できるかどうかが重要なこと。調子を落としたからといって、簡単にコーチを代えるのは好きじゃない。その考え方がうまくいっていると思う。長い時間を過ごしてお互いのことをよりよく理解し合えるようになったから。ツアー中のチームの雰囲気も素晴らしい。自分がお金を払って、その相手からアドバイスを受けるのはなかなか難しい関係だと思う。コーチと選手の関係はそういうもの。煩わしいと感じることもある。あまりお金のことは考えていない。お金で雇っているというよりは、仲間だという意識が強い。私のことを助けてくれる仲間」
メンタルヘルスの組織への寄付について話したが、コート上ではどんなことを考えているのか?
「普段は寄付のようなことを考えていない。今回はあまりいいことではなかったと反省している。でもメンタルヘルスデーだということで意識していた。実際は、ビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)に物凄く影響を受けたの。彼女に会ってインスパイアされた。私はまだ20歳で基金を立ち上げるようなことはしない。自分はまだテニスに集中しなければならないから。でも少しずつ自分のやりたいことを進めていきたい。このようなことを来年にはスタートしたいと思っていた。でも、今日がメンタルヘルスデーということで、ここでスタートするのも悪くないんじゃないかと思ったの。いきなり思いついたんじゃなくて、計画は前から進めていたこと」
シフィオンテクは4回戦で第24シードのエレナ・オスタペンコ(ラトビア)と対戦する。(テニスマガジン)
写真◎Getty Images
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