男子トップ8によるエリート大会「Nitto ATPファイナルズ」（ATPファイナルズ／イタリア・トリノ／11月14～21日／室内ハードコート）の男子シングルス決勝で、第3シードのアレクサンダー・ズベレフ（ドイツ）が第2シードのダニール・メドベージェフ（ロシア）を6-4 6-4で退け3年ぶりに王座を奪還した。

　もしズベレフが今週に見せたパフォーマンスが何かの兆しだとしたら、2022年の彼からは多くのことが期待できるだろう。世界ランク3位のズベレフは世界トップ2のプレーヤーを連続で打破し、ATPファイナルズで2度目のタイトルを獲得した。

　準決勝で世界1位ノバク・ジョコビッチ（セルビア）をフルセットで倒したあと、ズベレフは日曜日の決勝でさらに堂々としたプレーを披露して同2位のメドベージェフを圧倒した。

　昨年の同大会を制してUSオープン優勝者のメドベージェフは、これに先立ちズベレフに5試合連続で勝っていた。

「ここで優勝する以上にいいシーズンの締めくくりはないね。僕は今、早くも来年を非常に楽しみにしているよ」とズベレフは振り返った。

　このタイトルは東京五オリンピックで金メダルを獲得して2021年をメドベージェフよりひとつ多いツアー最多のマッチ59勝で終えたズベレフにとって、かなり素晴らしかった1年のクライマックスとなった。

　ズベレフが持つトロフィーのコレクションに欠けている最大のものは、グランドスラム大会のタイトルだ。彼は2020年USオープン決勝の第5セットでサービスゲームをキープすれば優勝というところまで漕ぎつけたにもかかわらず、壮大な死闘の末にドミニク・ティーム（オーストリア）に敗れていた。

「彼は誰をも倒すことができる偉大な選手だ。彼は間違いなく、グランドスラム大会で優勝する力を持ってるよ。それは明白なことだ」とメドベージェフはコメントした。

「でもそれが可能なのは彼だけじゃない。そこが難しいところなんだ。グランドスラム大会のチャンピオンになるには7試合に勝たなければならない。彼にはその力があるか？　ああ、ある。彼がやってのけるか？　それは決してわからない」

　この決勝は火曜日のラウンドロビン第2戦と同じカードで、そのときは第3セットのタイブレークを制したメドベージェフが勝っていた。

　しかしこの日の決勝はスタートからズベレフに有利な方向に進んだ。身長198cmのズベレフは強烈なバックハンドをコーナーに叩き込み、それからネットコードに当たって決まったウィナーにより第3ゲームでメドベージェフのサービスゲームを破った。

　会場のパラ・アルピツアーの速いコンディションにも助けられ、第1セットでサービスからの25ポイント中20本をものにしたズベレフは手が付けられない状態だった。第2セット第1ゲームでふたたびブレークしたズベレフはますます自信を深め、時折サービスからネットに詰めて大胆なスイングボレーを決め始めた。

　そのままリードを守りきったズベレフは、最初のチャンピオンシップポイントでワイドに逃げる強力なセカンドサーブでエースを決めて試合を終わらせた。

　これは2018年にズベレフが最初のタイトルを獲得した地であるイギリス・ロンドンで12年に渡って開催されたあと、イタリア・トリノに場所を移して行われた最初の大会だった。

「言うまでもなくロンドンは素晴らしい大会だったけど、イタリアはそれを超えていると僕は思うよ」とズベレフは語った。

「ここイタリアで大会をこれだけ特別なものにしているのはファンたちだ。ファンたちは間違いなくかなりやばいよ。もっとも騒々しくて、もっともエネルギッシュな観客たちだね」

　先に行われた男子ダブルス決勝は、第3シードのピエール ユーグ・エルベール／ニコラ・マウ（ともにフランス）が第2シードのラジーブ・ラム（アメリカ）／ジョー・ソールズベリー（イギリス）を6-4 7-6(0)で下して2年ぶり2度目の栄冠に輝いた。

　ATPファイナルズはATPツアー最終戦で、今季の成績上位8名（ダブルスは8組）のみで争われる。4人ずつのグループに分かれたラウンドロビンを行い、上位2名（ダブルスは2組）ずつが決勝トーナメントに進出する形式で行われた。（APライター◎アンドリュー・ダンプ／構成◎テニスマガジン）