ペン・シューアイが性的暴行の告発を否定も真相は置き去り

写真は2020年オーストラリアン・オープンでのペン・シューアイ(中国)(Getty Images)


 女子テニス選手のペン・シューアイ(中国)は自分で書いたとされている11月のソーシャルメディアへの投稿で元政府高官から性的暴力を受けたと告発したにも関わらず、その事実を否定した。

 日曜日に上海で撮影されたというシンガポールの中国語新聞『聯合早報』が投稿したビデオの中で、ペンは主に北京の自宅にいたが自分が望めば自由に外出できたと話した。

「まず第一に、私は非常に重要なことを強調したいと思います。私は自分が誰かに性的暴行を受けたと言ったり書いたりしたことはありません。この点を非常に明確に強調する必要があります」とペンは同紙の記者に話した。

 その記者は11月2日の長文で非常に詳細に渡ったその投稿が何故どのようにして出たのか、或いはペンのアカウントがハッキングされたのかなどについては尋ねなかった。

 同紙は2月4日から始まる北京オリンピックのプロモーションのためのイベントでペンにインタビューしたのだと述べ、そのやりとりは彼女がNBAのスター選手だったヤオ・ミン(中国)や他の有名スポーツ選手たちと一緒にフリースタイルのスキー競技を観戦した施設のデッキで撮影された。

 中国の主要ソーシャルメディアであるウェイボー(中国版ツイッター)でペンのアカウントから元副首相のジャン・ガオリー(張高麗)氏に対する告発がされたあと、彼女は公の場から姿を消した。投稿自体は直ぐに削除されたが、スクリーンショットがインターネット上に拡散した。テニス仲間や女子テニス協会(WTA)が彼女の安全について懸念を表明し、WTAは中国での大会開催を無期限停止する決断を下した。

 この告発に続いてペンの安否を心配する声が大きくなる中、オリンピックに3度出場したダブルスの元トップ選手である彼女が北京のテニスコートに姿を現し子供たちのために大きな記念テニスボールにサインをしている写真が中国の媒体で公開された。中国国営テレビの海外支局もまた、ジャン氏に対する告発を撤回するペンによるものとされる英語の声明文を発表した。

 WTAの会長兼CEO(最高責任者)であるスティーブ・サイモン氏は隠蔽工作の可能性もあることから電子メールによる声明の信憑性に疑問を呈し、ほかからもペンの安全に関する懸念が増しただけだという声が上がった。聯合早報のインタビューの中でペンは自分がその声明文を中国語で書いてそれがのちに英語に翻訳されたが、両方の本質的な意味合いに違いはなかったと説明した。

 75歳のジャン氏は2018年まで強大な権力を握る中国政治局常任委員会のメンバーだった人物で、政界を退いたあとは公の場に姿を現したりペンの告発に対して発言したりはしていない。

 香港を含む中国での大会の開催を停止するという動きは、WTA理事会と選手および大会やスポンサーなどの全面的な支援を受けて決められたとサイモン氏は語った。これはあるスポーツ団体が中国に対して取った中でもっとも強い反対の姿勢であり、WTAに何百万ドルもの収益減の打撃を与える可能性がある決断でもあった。

 サイモン氏はこの騒動が起こって以来、ウインブルドンとフレンチ・オープンの元女子ダブルス優勝者であるペンの告発について透明な調査を行うこととWTAがペンと直接連絡を取ることができるよう繰り返し呼びかけてきた。

 その一方で国際オリンピック委員会(IOC)はWTAとは違う方針を選び、トーマス・バッハ会長を交えてビデオ電話でペンと会話したあとに彼女が元気あることを確認できたとアピールした。

 ペンを巡る論争は、中国政府による人権侵害のために北京での冬季オリンピック開催に対する抗議を加熱させる出来事だった。(C)AP(テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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