世界1位バーティは挽回勝ちでオーストラリアン・オープンをスタート
これがアシュリー・バーティ(オーストラリア)の「オーストラリアン・オープン」(オーストラリア・メルボルン/1月20日~2月2日/ハードコート)の始め方だった。世界ランク1位のバーティは40年以上出ていないオーストラリア人チャンピオンになることを目指そうとしている大会で、レシヤ・ツレンコ(ウクライナ)に対し1セットダウンから5-7 6-1 6-1で挽回勝ちした。
月曜日は豪雨がメルボルンを襲った。(わずかに水漏れしていた)屋根を閉じたロッド・レーバー・アリーナで一方的に母国の寵児を応援していた観客たちは5度のサービスブレークがあった第1セットをバーティが落としたあと、少し声を弱めた。しかし心配はいらなかった。フレンチ・オープン・チャンピオンのバーティは試合へのアプローチにおいて、「いくつかのことを修正し」、ツレンコはその後の52分間にわずか2ゲームしか取ることができなかった。
「本当に素晴らしいわ」とバーティはメルボルン・パークのひのき舞台での今年最初の試合について語った。「それはおそらく、私がオフシーズンを通してずっと待ちわびていた瞬間だった」。
彼女が母国で初タイトルを獲ったとき――土曜日の夜にアデレードで――からこの試合までに、休みは一日しかなかった。
現在世界120位で30歳のツレンコは、ふたりの過去唯一の対戦で勝っていた。この日も彼女は試合の最初の12ゲームの間に、やはり厳しい相手であることを証明して見せていた。
「私は早い段階でやや急ぎすぎていた。多くのミスをおかしすぎていたわ」とバーティは振り返った。彼女は典型的オージーであり、オーストラリアの有名なスプレッド(ジャムやペーストなどのようなパンに塗る食べ物)である『ベジマイト』のラベルに彼女の名前が使われている。
「私は試合に決着をつけようと、早い段階で少し急ぎすぎていた。でも第2セットではネジを締め直し、そのまま突っ走ることができた」
2019年、バーティのブレイクのシーズンは、オーストラリアン・オープン準々決勝進出から始まった。彼女がグランドスラム大会で優勝を遂げ――クレーコートのロラン・ギャロスを制した――世界1位に浮上した今、母国ではより大きな期待が逆巻いている。彼女はトップ8による年末のエリート大会「WTAファイナルズ」でも優勝し、さらにオーストラリアをフェドカップ決勝へと導いた。
この23歳のオールラウンドプレーヤーの進撃は目覚ましかった。彼女は一時期テニスから離れ、クリケット選手としてのキャリアを積み、2017年にふたたびツアーに戻ってきている。ゴルフはハンディキャップ「10」でプレーし、オーストラリア・フットボール・リーグのお気に入りのクラブであるリッチモンドを密に追っている。
母国でプレーするプレッシャーは、彼女にとって嫌なものではないようだ。
「グランドスラム大会では本当に人が多いから、いつもすごく混沌としているように感じられるわ。シングルスの選手、ダブルスの選手、ミックダブルスの選手、家族、コーチたち、その周辺で働くみんな。ただただカオスなのよ」と彼女は言った。「コートに足を踏み入れたとき、もしそれらの混沌から離れることができれば…それが少しばかりよりよいプレーができるとき、より心地よく感じられるときなの」。
バーティはグランドスラム大会に出場するたび、よりよく期待に対処できるようになってきているという。
「経験の問題ね。どうやって対処すればよいか学ばなければならないのだけど、だんだんよくなってきているわ」と彼女は説明した。「私はそれを自分のチームといっしょにやっている。私たちはチームとして行っているの。私たちはみんなそれが大好きで、喜んで応じているわ。それ以外のアプローチ法はないもの」。
1978年にクリス・オニールが優勝して以来、自国のグランドスラム大会で優勝したオーストラリアの女子プレーヤーはいない。この飢餓の時代を終わらせるためのオーストラリア最大の希望は、かつてはサマンサ・ストーサー(オーストラリア)だった。35歳のストーサーは今、この責任をバーティに手渡し、幸運を祈らなければならない。
ストーサーはフレンチ・オープンで決勝に進出した一年後にセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)を倒して2011年USオープンで優勝を遂げたが、メルボルンでは一度も4回戦を突破していない。
バーティの初戦勝利の少し前に、ストーサーは18歳で予選上がりのキャサリン・マクナリー(アメリカ)に1-6 4-6で敗れた。これはストーサーにとって、オーストラリアン・オープンにおける5回連続の1回戦負けとなる。
地元の期待についてストーサーは、「すべてのオーストラリア人が感じていると思うわ」とコメントした。「ある者はプレッシャーがあるがゆえに育つけれど、別の者はより厳しく感じるのよ」。
マクナリーはダブルスパートナーであるコリ・ガウフ(アメリカ)の大きな勝利を見たことにより、士気を高めたのだろう。15歳のガウフはこの日、グランドスラムを7度制した39歳のビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)を下したのだ。ストーサーは観客の存在を自分のアドバンテージとして使えなかったかもしれないが、マクナリーはそうするための方法を見つけ出した。
「ファンたちが私の対戦相手のほうを応援するだろうことはわかっていたけれど、私はそれをアドバンテージとして使ったの」とマクナリーは明かした。「彼らの応援のビートに向かって、私は頭の中で自分の名前を言ったわ。実際、それが大いに助けになった」。
(APライター◎ジョン・パイ/構成◎テニスマガジン)
※写真はアシュリー・バーティ(オーストラリア)(撮影◎毛受亮介 / RYOSUKE MENJU)
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